「世界食料デー」を前に、SDGsを「農業」目線で考えてみよう

国連世界食糧計画(WFP)によれば、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界で食料不足に苦しむ人は2020年末までに2億7000万人に上ると言われている。この数字はコロナ以前より約80%も急増している。

食の問題解決についてみんなで考える10月16日の「世界食料デー」をきっかけとして、10月は「世界食料デー月間」とされ、各方面でキャンペーンも行われている。

そんな中、近年話題に上るようになったのが、企業の経営方針に盛り込まれるなど、認知度が上がってきているSDGs(持続可能な開発目標)だ。しかし個人レベルではどんなアクションを起こせばいいのかわからないという方も多いのではないだろうか。

そこで今回は、SDGsで掲げられている目標や、企業で実際に行われている事例を農業分野で考えながら、私たちができるSDGsの取り組み、中でも農業分野におけるSDGsについて考えていきたい。


SDGs 17の目標と、農業における事例紹介

まず、2030年までに持続可能な世界を目指すための17の開発目標について、農業分野で行われている具体例と共に説明していこう。

1.貧困をなくそう


世界中の貧困をなくすこと、貧困ラインを下回っている人の割合を減らすことを目指している。

スマート農業などの栽培技術を貧困な人々に提供し、彼ら自身が自分たちの食べるものを作り、収益を上げて生活レベルを上げることをサポートするために、さまざまな企業や団体が活動を行っている。

2.飢餓をゼロに


飢餓や栄養不良に終止符を打ち、持続可能な食糧生産を目指す。

例えば伊藤園では、茶農家と契約栽培を行いIT化の推進や、耕作放棄地を利用しての栽培など持続可能な農業に向けての取り組みが行われている。



3.すべての人に健康と福祉を


主要な感染症に終止符を打つだけでなく、非感染症疾患や環境要因による疾患を減らし、すべての人の健康と福祉を確保することを目指す。

中国地方でスーパーマーケットを展開している株式会社マルイでは、栄養バランスの取れた献立の紹介など、食に関する情報発信を行っている。

4.質の高い教育をみんなに


すべての子どもが平等に質の高い教育を受けられること、高等教育にアクセスできることを目指す。

「Pasco」ブランドでおなじみの敷島製パンでは、中高生と共に国産小麦の「ゆめちから」を栽培し、生育の観察やデータ分析を行い、最適な栽培方法を見つけるという活動を行っている。

5.ジェンダー平等を実現しよう


女性が活躍できるよう教育や訓練の充実、女性への差別や暴力をなくすことを目指す。

茨城県を中心とした関東でスーパーマーケットを展開する株式会社カスミでは、女性ならではの意見を積極的に取り入れたり、育休取得の促進などで女性の活躍を推進している。

6.安全な水とトイレを世界中に


飲料水や衛生施設の衛生状態を確保するだけでなく、水源の質の持続可能性を目指す。

7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに


すべての人々が安価で信頼できる持続可能なエネルギーへのアクセスの確保と、再生可能エネルギーの使用推進。

農業分野では、近年注目を集めるソーラーシェアリングの導入が全国で増え始めている。


8.働きがいも経済成長も


持続可能な経済成長およびすべての人々が生産的で働きがいのある雇用を目指し、強制労働や児童労働を根絶することがねらい。

これに繋がる取り組みとしては、障害者などが農業分野で活躍できる農福連携という考え方が広がりつつある。

9.産業と技術革新の基盤をつくろう


強靭なインフラの構築、持続可能な産業化の促進およびイノベーションの推進。

トラック輸送を大半としている農産物では出荷量が直前までわからない、待ち時間が長いなどで取り扱いが敬遠されることもある。これらの問題を解決するため、農林水産省、国土交通省、経済産業省が協力して「食品流通合理化検討会」が設置された。

10.人や国の不平等をなくそう


各国内および各国間だけでなく、性別や人種、宗教などあらゆる機会での不平等を是正する。

2019年には障害者が生産工程に関わった規格として「ノウフクJAS」が制定され、障害者の雇用創出につながっている。

11.住み続けられるまちづくりを


コミュニティの絆と個人の安全を強化しつつ、イノベーションや雇用を刺激する形で居住地の再生と計画を図ることを目指す。

国が認定地域と連携し外国人旅行者向けに農泊を体験し、農村の魅力を発信する「SAVOR JAPAN」という取り組みが行われている。

12.つくる責任つかう責任


環境に害を及ぼす物質の管理に関する政策などを通じ、持続可能な消費と生産を推進することを目指す。

コープこうべでは、店舗から出た食品廃棄物を回収し堆肥化して、その堆肥を利用した資源循環型農業を営むなどの活動を行っている。

13.気候変動に具体的な対策を


気候変動およびその影響を軽減するための対策を講じる。

持続的な資源、環境管理技術の開発などを行うJIRCAS(国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター)では、農業分野からの温室効果ガスの排出抑制と、農業との生計確保を両立するための取り組みを行っている。



14.海の豊かさを守ろう


持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。

15.陸の豊かさも守ろう


持続可能な形で森林を管理し、劣化した土地の修復や砂漠化対策を行い生物多様性の損失に終止符を打つことを目標とする。

UCC上島珈琲株式会社では、コーヒーの生産国であるエチオピアで森林保全活動も行っている。

16.平和と公正をすべての人に


人権の尊重、法の支配などあらゆる面で透明かつ効果的な制度に基づき、平和な社会を目指す。

株式会社EMURGOは、コーヒー生産者から消費者へ農産物が届く過程で不当な利益を搾取されないよう、ブロックチェーン技術による輸送から販売までの経路を確認できる仕組みなどを開発している。

17.パートナーシップで目標を達成しよう


持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバルシップを活性化。

雪印メグミルク株式会社では、北海道の地方自治体と協定を結び、環境配慮型酪農やクリーン農業に関する技術支援などを行い持続可能な酪農生産のサポートを行っている。

SDGs実現に向けた農業の役割とは



ここからはSDGsの実現に向けて、農業が担っている特に重要な役割について解説していこう。

持続可能な食糧供給


目標2で言及されている通り、飢餓をなくすためには、持続可能な農業が必要不可欠である。これは単に食糧をたくさん生産すればいいというだけでなく、環境への配慮や万が一の事態に備えることが必要だ。

特に地震や自然災害が多い日本では、強靭な農業にすることを目標に、地震や豪雨などの大規模災害が起きた場合の対策の構築に力を入れている。

環境問題への対応


自然や環境に大きく依存している農業にとって環境問題への取り組みは重要な役割を担っていると言える。日本には太陽光やバイオマスなどの豊かな天然資源があるため、それらを活用し取り組むことでSDGsの目標達成だけでなく農村の持つ価値や新たなビジネスチャンスにもつながるなど、これからの事業の発展にとっても必要な要素となってくる。

働き方改革の推進


少子高齢化の日本ではさまざまな産業で人手不足が叫ばれているが、農業においても人手不足の解消は重要な課題と言える。

人材を確保するためには勤務時間の柔軟性や女性や高齢者に配慮した労働環境改善の他に、IT化やロボット化を進めることで生産性や職場の魅力を向上させ、働きがいのある職場づくりを行う必要がある。

また、障害者を積極的に雇用する農福連携の推進や、農泊を行う事業を増やす取り組みなど農業の魅力を発信することで、人材の確保につながるという。

スマート農業でSDGsに取り組む企業


最後に、スマート農業を駆使したSDGsの取り組みを表明している、農業関連企業を紹介していこう。

株式会社クボタ


世界の食糧・水・環境における課題に対して、さまざまな取り組みを行うクボタはSDGsに最も関わりのある企業と言ってもいいだろう。2014年にはKSAS(Kubota Smart Agri System)というICTを活用した営農支援サービスの提供を開始している。今後は世界のスマート農業を推進し、国内では完全無人運転の農機の実用化も視野に入れているという。


こゆ財団 スマート農業推進協会


こゆ財団は「世界一チャレンジしやすい町」をビジョンに掲げ、地域にある資源を活かした事業を多数創出している。2019年にはこゆ財団と農業ベンチャーらが参画し、スマート農業推進協会を発足。主な活動は深刻な課題となっている担い手不足を、AIIoT、ロボットなどを活用しながら省力化や生産の安定化につながる取り組みを行っている。


株式会社Rewso 6次産業化事業


株式会社Rewso(リューソ)はITを活用し、環境問題の解決に力を入れているベンチャー企業だ。

農業に関する取り組みとしてはスマート農業の導入支援、農泊の専用サイトの構築や運営プランの提供を行っている。また、農産物などの規格外品に新たな価値を付ける6次産業化を推進したりと、SDGsの目標達成を目指している。


持続可能な社会のためにできることを


企業ではSDGsの理念に沿った事業などが行われていることは知っていても、自分には手に負えない問題だと感じている方も多いのではないだろうか。

しかし持続可能な社会を実現するには生産者も消費者も、それぞれが可能な範囲で協力し合うことが必要となってくる。特に農業とSDGsは関わりが深いため、多くの農業関係者が気づき行動を起こすことで世界を変えることだってできるはずだ。

今後はSDGsにどれだけ貢献しているかで購入判断をするという消費者が増えていくことも考えられる中、何らかの取り組みを行うことは必要不可欠になってくる。まずは17の目標を参考に自分が関心を持てるものを見つけることから始めてみよう。


農林水産省 SDGs×食品産業
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/index.html#a0
株式会社クボタ
https://www.kubota.co.jp/sdgs/
こゆ財団 スマート農業推進協会
https://koyu.miyazaki.jp/?page_id=8
株式会社Rewso
https://www.sdgs-rewso.com/
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WRITER LIST

  1. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
  2. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  3. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  4. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  5. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。