リンゴの知的財産権を守る「クラブ制」は日本でも根付くか 〜世界のリンゴ事情


日本のリンゴはなぜ大きい?

こちらがフルーツロジスティカの会場で展示された、岩手県産のリンゴ。私たちは見慣れているが、1玉300グラム以上あって、他のブースのリンゴと見比べるとひときわ大きく見える。

「フルーツロジスティカ」に出展していた、岩手県の生産者のリンゴ。ひときわ大きく見えた

フランスやドイツで見かけたリンゴは、一様に小さく1玉200g前後。ベルリン在住の友人の話では、一人で丸かじりするのが普通のようで、日本のように同じ玉を家族や仲間で切り分けて、シェアすることないそうだ。

日本では、年末にお世話になった方へ箱入りのリンゴを贈る人も多いが、ドイツでは青果物をプレゼントする習慣はない。東西のリンゴの大きさの違いは、嗜好や食習慣の違いによるところが大きいが、実はそれだけではない。

「ヨーロッパのリンゴより、日本のリンゴがひときわ大きいのはなぜですか?」

弘前市で、リンゴの栽培、流通、輸出を手がけている片山りんご株式会社の片山寿伸さんに聞いてみた。

「日本は日照量が欧米の50%、降水量が200%と、花芽形成に非常に不利な土地なので、強く摘果をしなければ隔年結果を招きます。毎年リンゴを成らせるために、日本では強く摘果するので、結果的に欧米より大きくなってしまうのです」

写真は5月22日、せんだい農業園芸センターで撮影した摘果前と摘果後のリンゴ。花が散り、実が膨らみかけているこの時期、中心果を残して周囲の実をすべて落としている。

摘果前のリンゴの木

摘果後のリンゴの木
5月下旬。中心果だけを残し周囲の実を落とす「摘果」を行う

欧米よりも日照量が少なく雨の多い日本では、欧米もよりたくさん摘果することで、翌年の花芽分化を促し、大玉に仕上げると同時に翌年の収量減も抑えている。日本のリンゴが大きいのは気候の影響でもあるのだ。
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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