農業×ITが当たり前の世界へ──「スマート米 玄米」に込められたオプティムの思い

株式会社オプティムが、スマート農業の技術を活用して栽培した「スマート米 玄米」の販売開始に合わせ、2月25日に試食会を開催した。

ドローンやAIを活用した「ピンポイント農薬散布テクノロジー」農法を用い、農薬使用量を大幅に抑えて育てられたお米「スマート米」。これまで販売されてきたのはすべて精米したものだったが、今回「玄米」と「無洗米玄米」の2種類がラインアップに加わった。


AI、IoT、ロボットで一番変わるのは農業

ピンポイント農薬散布テクノロジーとは、AIによって病害虫が検知された箇所のみにドローンを用いて、ピンポイントで農薬散布を行う農法。

オプティムによると、2018年度産では、九州で例年猛威を振るうウンカの発生がないことをAIが予測したため、予防のための農薬を撒く必要がなく、削減対象農薬の100%減(※1)を達成したという。また、この米は第三者検査機関による残留農薬の検査においても「不検出」(※2)という評価を得ている。

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2018年産スマート米の残留農薬、 第三者検査機関の調査で「不検出」

AIやIoTを用いたサービスを提供するオプティムが、今最も力を入れているのがこの農業の分野だ。試食会で登壇したオプティムの菅谷俊二社長はその理由を次のように語った。

「私たちはAI、IoT、ロボットを使って最も変わる産業は農業であると確信しています。ほかの産業においてはコスト削減が使い方の中心になってきますが、農業の分野ではそれだけでなく、AI、IoT、ロボットにより無農薬などの付加価値を作り上げていくことができるということに大変注目しています」

▲株式会社オプティムの菅谷俊二社長

今後は、「スマート農業アライアンス」という仕組みのもと、前述のピンポイント農薬散布テクノロジーをはじめとしたスマート農業ソリューションを全国の大豆や米などの農家に無償で提供し、生産を広げていく予定。それらの技術を用いて生産された作物はすべてオプティムが市場価格で買い取って販売し、さらに売り上げの一部が農家にキックバックされる仕組みだ。


残留農薬の心配なく食べられる玄米を

ビタミン、ミネラル・食物繊維などを豊富に含み、「完全食」とも言われる玄米。しかし、白米と違って玄米では取り除かれない糠の部分に多くの農薬が残ることから、残留農薬の影響を受けやすいことが懸念点となっている。農薬の人体への影響に関しては、昨年行われたモンサント発がん訴訟の中で除草剤と発がん性の関連性が認められ多額の賠償金が科せられるなど、農産物を口にする消費者側も、栽培する農家側も、その安全性に対して注目が高まっている。

菅谷社長は「削減対象農薬を100%削減したスマート米 玄米なら、安心して食べることができます。健康意識の高いスマート米のお客様からも『精米するのはもったいない。残留農薬が不検出なら、玄米で食べたい』という声が多く上がっていました」と話す。


スマート米 玄米のお味は?

試食会には、佐賀県産の「さがびより」、福岡県産の「ヒノヒカリ」、大分県産の「にこまる」、青森県産の「まっしぐら」という4つの銘柄のスマート米が登場。それぞれの白米、玄米、無洗米玄米、合わせて12種類が、水も各銘柄の産地のものを使用して炊き上げられ提供された。

実際に食べ比べてみると、さがびよりは粒が大きくて甘みが強く、おかずがいらないという感じ、まっしぐらは弾力がありあっさりとしていてカレーにも合いそうなど、銘柄によってはっきりと個性を感じられた。そして何よりも、「お米だけでこんなにおいしいんだ!」「お米ってこんなに『味』がするものだったのか!」と改めて気づかされるような体験だった。

▲試食会の様子

ラインアップの中でも特徴的な無洗米玄米は、玄米とほぼ同様の栄養成分を持ちながら、通常の白米と同様の水分量、浸水時間で炊くことができ、そのうえ玄米独特の食感が苦手な方もより親しみやすいお米となっている。試食会では、この無洗米玄米を使ったチャーハンも提供されていたが、実際に試食してみたところ、適度にパラパラとした玄米の食感がとてもよく合い、違和感なく日常の食卓に取り入れられそうだと感じた。

▲手前がスマート米 玄米。硬くて食べにくいという玄米のイメージを覆す、柔らかな炊き上がり

▲会場には、生産地の各県から選りすぐりのご飯のお供も並んだ

▲スマート米と同じくドローンやAIを活用して栽培された「スマート大豆」から作られた大豆茶

消費者目線でスマート農業を考える

オプティムは「ネットを空気に変える」というスローガンを掲げているが、これについて菅谷社長は次のように話す。

「オプティムが目指すのは、AIやIoTを、使っていることすら忘れてしまう『空気』のような当たり前の存在にして、人々の生活を豊かにしていくということ。まさに今回でき上がったお米はその象徴的なものだと思います。消費者にとっては、お米の栽培にどんな最先端の技術が使われているかは関係ありません。その食品が安心・安全でおいしいということがすべてなんです」

安心・安全でおいしいお米を食べたいという消費者の声と、それを叶えたいという農家の方々の思い。その両方に最新の技術を使って応えていく。オプティムのそんな裏方としての心意気も今回の試食会を通して感じることができた。

このスマート米、スマート米 玄米(さがびより、ヒノヒカリ、にこまる、まっしぐら)は、オプティムが運営するオンラインストア「スマートアグリフーズ直送便」、Amazon、玉屋(佐賀県)、三越(福岡県)、福島屋(東京都)、各県物産店にて販売中。スマート米 玄米については、「スマートアグリフーズ直送便」とAmazonでの販売から開始される。

ぜひそのおいしさと安心をみなさんも食卓で味わってみてほしい。

【注】
※1 農薬のうち、ピンポイント農薬散布によって削減できる殺虫剤および殺菌剤を「削減対象農薬」として定義。削減対象農薬の使用量において、当該地域において例年行われている栽培方法での平均的な農薬使用量もしくは当該地域のJA(農業協同組合)に納品する際に守るべき目安となる農薬使用量の基準値と、ピンポイント農薬散布テクノロジーを用いて散布した農薬の使用量を比較。削減量については、年度や地域で異なる場合もある。

※2 「不検出」とは、残留農薬検査において農薬成分の測定値が、定量限界値または検出限界値未満であることを示す。

<参考URL>
スマートアグリフーズ直送便(スマ直)
OPTiM(オプティム)|AI・IoT・ビッグデータプラットフォームのマーケットリーダー
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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