新規就農を希望する人が新たに農業を学ぶための3つの方法

農林水産省新規就農者数の統計によると、2016年の新規就農者は2年連続で6万人を超えている。内訳を見ると、実家を継ぐなどの新規自営農業就農者が約4万6000人で10年前の約70%に減少した一方、農業法人などに就職している新規雇用就農者は約1万人と46%も増加しており、まったく新しく就農した新規参入者は3440人と人数こそ少ないものの、10年前の約2倍にもなっている。

実家が農家といった農業の知識や経験を持つ人ばかりでなく、日々の仕事として、もしくは新たなビジネスのチャンスをもとめて、いま農業を選択する人が確実に増えている。


ゼロから農業を学ぶための3つの方法

農業は基本的に個人や家族単位で営む自営業だ。しかし、農業を始めるには一般的な会社を起業するようにはいかない。農産物を収穫できるまで収入はないし、それなりの設備投資も必要だ。また、農産物を作るだけでなく、農場を運営する経営のセンスも問われる。

こうした就農初期の収入の考え方、農産物の育て方から農業特有の経営まで、体系的に学べる方法も増えてきている。今回は、社会人から新規就農したいと考えている方に向けて、農業を実践的に学べる場所とその内容について紹介しよう。

(1)各道府県の農業大学校

農業大学校は、就農を目指す人や経営力を強化するためにスキルアップしたい農業者を対象とする教育機関だ。農業の技術、経営に関する研修教育を提供しており、高校卒業者や社会人などが教育を受けられる。大学への編入学の道も開かれている。

学習希望者のニーズに応じたカリキュラムが用意されており、2年間で2400時間(80単位)以上かけて農産物の作り方を学ぶ養成課程、作り方だけでなく経営能力などを養成する研究課程、より実践的な農作業を意識した研修課程などに分類されている。

農林水産省のホームページによると、全国42道府県に設置されている。全国各地で学ぶことができるのも農業大学校の魅力だろう。

(2)Small Farmers College

就農希望者の中には、平日は会社に勤めているために週末しか時間が確保できないという人も多いだろう。そんな方におすすめしたいのが、Small Farmers College(スモール・ファーマーズ・カレッジ。以下、SFC)だ。

SFCは、週末だけで本格的な野菜栽培の技術・知識を基礎から体系立てて学ぶことができる民間の農学校だ。受講者は幅広く、年齢は20代から70代まで、知識レベルは初心者からプロ農家までと、様々な人が集まっている。また、これから本格的に農業を始めたいという人から、田舎暮らしを始めるにあたり農業を始めてみたいという人まで、入校する目的・目標も人それぞれだ。

SFCの受講生・卒業生は2016年末時点でのべ250名以上になるという。卒業後のサポート体制も充実しており、農業を始めるために必要な農地の取得や販売先の確保などにも取り組んでいる。

(3)農業法人への独立を前提とした就職

より実践的に農業を学びたい! そんな方は農業法人に就職するのも一つの手だろう。農業で生計を立てるというリアル現場を見ることで、自らが農業経営をするとき、どのようなことに注意すればいいかを間近で学ぶことができる。

農業法人を経営するには、農産物の生産をする知識や技術だけでなく、それを販路に流通させたり、必要な人材を採用し業務を円滑に遂行させたりするマネジメント能力も問われてくるから、これらのスキルを身につけることができれば、独立後に活きてくるはずだ。

とはいえ、独立を前提として就職することなどできるのか……と問われれば、実は農業法人の中には起業を後押ししている会社もある。長野県にある有限会社トップリバーはその一つだ。

トップリバーでは、農場で働きながら経営スキルや資金計画、農産物の生産技術を研修として学ぶことができる。また、独立後も農地や農機具、販路の開拓などで就農支援を行っている。このようにまずは農業法人に就職して力をつけていくことも、独立後の知識や技術面での不安を抑える有効な手段といえよう。

次世代の新しい農業を学ぶために

このように農業を学ぶ方法はいくつかあるが、どれを選択するかは自身のニーズや目的・目標に合わせて考える必要がある。ただ、共通して言える特徴は、インターネットや書籍から情報を得るだけでなく、実践を想定した研修などが設けられているという点だ。

農業や企業経営は、実践を通じて学ぶ部分が大きい。それを意識して就農の準備を進められるかどうかが、農業人としてのキャリアに大きく影響するはずだ。だからこそ、就農の前にここで紹介した方法で農業を学ぶことをおすすめしたい。

また、これからの農業ではITなどテクノロジーを使いこなせるようになることも求められるだろう。いわゆるスマート農業スマートアグリ)を実現するためには、IoT機器によって情報収集を行い、適切な生産管理ができる知識、ドローン自動運転トラクターを使いこなす技術も必要になるため、大学校等で学ぶのであれば、そこでどのようなことを学べるか、というリサーチを怠らないようにしよう。

一方、就農者を迎える日本の農業も、高齢化や若年層の人口減による人手不足の影響で、新しい担い手の育成は待ったなしの状態だ。これからは、農業に関する知識やノウハウを伝えるだけでなく、農業の魅力も積極的に発信することが農業大学校や農業法人などに求められる。農業を学ぶ醍醐味をどのように若者に知ってもらうか、知恵を絞る必要があるのではないだろうか。

<参考URL>
農業を学ぶための学校のご案内(農林水産省)
Small Farmers College
有限会社トップリバー
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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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