【農家コラム】有機トマトのおいしさと環境を両立する“土づくり”と“品種選び”
「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。三重県でトマト農家として新規就農した北島芙有子です。
前回の記事では、有機トマト農家での研修で感じた、慣行栽培との味やコストなどの違いについてお話しさせていただきました。
【農家コラム】有機トマト農家での研修! 慣行栽培と味やコストはどう違う?
研修で感じたのは、農業と一口でいっても農家さんそれぞれの考え方ややり方があり、千差万別であるということでした。
今回は、よりよいトマトづくりに向けて、私自身が実践している栽培の工夫やこだわりについてお話ししたいと思います!

有機栽培をするうえでの資材選びのこだわりとして、できるだけ地元の資源を利用することを目標にしています。有機栽培は、化学農薬を使用しないことだけではなく、有機肥料を使用することで循環型の農業を実現できることが大きな特徴です。地域の資源を利用し、持続可能な農業を目指すということは、私が有機栽培を選んだ理由の一つでした。
具体的には、土づくりのために畑に投入する堆肥に、地元のリサイクルセンターで草木を発酵して製造されているバーク堆肥を使用しています。バーク堆肥を使用することで、栽培初期に生育が旺盛になりすぎないように元肥の窒素を控えめにすることと、地域の資源を有効活用することを同時に実現できます。
また、これは研修先の農家さんが毎年作っているものですが、地元の米農家さんから米を収穫したあとに大量のもみ殻を頂けるので、それを発酵させてもみ殻堆肥を作っています。これも発酵して完熟したものなので、土に直接投入したり、通路に敷いたりとさまざまな使い道があります。
すべての肥料を地元でそろえるのは難しいですが、肥料を選ぶ際は国産の有機JAS対応のものを選ぶようにしています。トマトの場合、他にはカリ、カルシウム、マグネシウム、微量要素などを補給する肥料や、追肥のための液肥なども必要になります。これらを成長具合や土壌診断の結果も照らし合わせて、毎年調整しながら施肥しています。

みなさんご存じのように、トマトは大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトなどがあります。さらにその中でもさまざまな品種に分かれており、世界ではなんと1万種以上が存在すると言われています。スーパーでよく売られている生食用のトマトから、高糖度でフルーツトマトと呼ばれているもの、加熱用の調理トマトなど、トマトの種類は多種多様です。
その中で現在私が育てているのは大玉トマト「麗月」とミニトマト「アイコ」「甘っこ」ですが、今の品種に落ち着くまでには毎年さまざまな品種を試してきました。
同じ場所で育てても、品種によって生育、味、耐病性などに差があることに気づきました。土や気候によっても相性があり、他の農家さんなどからおすすめされた品種でも、うまくいかなかったりしました。
現在育てている品種の特徴は、「麗月」は真夏でも裂果が少なく、赤く熟してから収穫しても実がしっかりしていて、「アイコ」は暑くても安定して実がなり続け、「甘っこ」は一番甘くフルーツのような味がします。
栽培のしやすさとしては、ミニトマトのほうが実がなりやすかったり病気に強いですが、「アイコ」は特に枝が伸びるのが早く、誘引するのが大変です。逆に「麗月」は「アイコ」に比べると枝は太く短く育ってくれるので、管理がしやすいです。
品種それぞれのメリットとデメリットがあるので、複数品種を育てることで安定供給やお客さんのニーズに合わせた栽培を行っています。特にミニトマトは、品種による差がより大きいと感じます。
また、一般的に言われているように、ミニトマトより大玉トマトのほうが栽培の難易度は上がります。同じ畑でもミニトマトは病気にも強く、暑い夏でも実がなり続けていたりする一方、大玉トマトは雨で裂果してしまったり、病気で枯れてしまう本数が多かったりしました。


読者の皆さんは、「おいしいトマト」と言うとどのような味を思い浮かべますか? 甘いトマト、すっぱいトマト、味が濃いトマト、昔なつかしいトマトなど、人それぞれの「おいしいトマト」があると思います。
前述したように、今はスーパーやオンラインでも、さまざまな種類のトマトが販売されています。さらに、サラダやサンドイッチ、スープの具材、ケチャップ、ジュース、パスタソース、ドライトマト、スイーツなど、思いつくだけでもたくさんの食べ方があり、使い道がとても幅広い野菜といえます。
私は、初めて農業に触れるきっかけとなったアルバイト先の農家さんで、とれたてのトマトを初めて食べた時に、こんなおいしいトマトがあるなんてと感動しました。風味が強くてみずみずしく、酸味と甘みのバランスがよい、野菜としての魅力がつまったトマト。その時味わったトマトの味から私もこんなトマトを育てたいと思い、今でもその味を目標にしつつ、さらにこの土地や気候を生かしたオリジナルの味を目指しています。
栽培期間中ずっと同じ味わいが出るわけではなく、季節や天候によって味は変わってきます。トマトは夏のイメージがある野菜ですが、意外と秋が一番糖度が増しておいしくなり、逆に夏はあっさり目で酸味が増す傾向があります。品種の違いだけではなく、季節によっても味の違いを楽しめるのもトマトの魅力の一つといえます。
そんな理想のトマトを育てるために、私が工夫していることをご紹介します。
土づくりの段階で、まずはトマトの成長に必要な栄養素が十分かどうか、土が物理的、生物的、化学的にトマトの生育に適しているかどうかなどをチェックします。

投入する肥料はトマトの風味がよくなるように、魚から作られる液肥などアミノ酸肥料を使用し、カルシウムやマグネシウムなど他の必要な栄養素も補います。また、適切に堆肥を投入したり、納豆菌、光合成細菌、乳酸菌などの菌を利用して土壌環境を改善することで、トマトが健康に生育することができます。

他にも、日々の手入れから、不要な実を取り除く摘果、トマトの葉にできるだけ太陽が当たりやすいように誘引することや、夏に暑さを和らげるために換気したり、光を最大限に取り入れるためにハウスのビニールを張り替えています。
こうした小さなことすべてが積み重なって、トマトの味として現れます。
おいしいトマトは、「こうすればおいしくなる」「この肥料を入れればおいしくなる」という栽培方法や資材の選び方だけではなく、毎日の観察と小さな積み重ねの結果として実現するのだと感じています。
次回は、有機農家として生きる上で、専業と兼業のメリット・デメリットなどについてご紹介したいと思います。
前回の記事では、有機トマト農家での研修で感じた、慣行栽培との味やコストなどの違いについてお話しさせていただきました。
【農家コラム】有機トマト農家での研修! 慣行栽培と味やコストはどう違う?
研修で感じたのは、農業と一口でいっても農家さんそれぞれの考え方ややり方があり、千差万別であるということでした。
今回は、よりよいトマトづくりに向けて、私自身が実践している栽培の工夫やこだわりについてお話ししたいと思います!

資材はできるだけ“地元”にこだわる
有機栽培をするうえでの資材選びのこだわりとして、できるだけ地元の資源を利用することを目標にしています。有機栽培は、化学農薬を使用しないことだけではなく、有機肥料を使用することで循環型の農業を実現できることが大きな特徴です。地域の資源を利用し、持続可能な農業を目指すということは、私が有機栽培を選んだ理由の一つでした。
具体的には、土づくりのために畑に投入する堆肥に、地元のリサイクルセンターで草木を発酵して製造されているバーク堆肥を使用しています。バーク堆肥を使用することで、栽培初期に生育が旺盛になりすぎないように元肥の窒素を控えめにすることと、地域の資源を有効活用することを同時に実現できます。
また、これは研修先の農家さんが毎年作っているものですが、地元の米農家さんから米を収穫したあとに大量のもみ殻を頂けるので、それを発酵させてもみ殻堆肥を作っています。これも発酵して完熟したものなので、土に直接投入したり、通路に敷いたりとさまざまな使い道があります。
すべての肥料を地元でそろえるのは難しいですが、肥料を選ぶ際は国産の有機JAS対応のものを選ぶようにしています。トマトの場合、他にはカリ、カルシウム、マグネシウム、微量要素などを補給する肥料や、追肥のための液肥なども必要になります。これらを成長具合や土壌診断の結果も照らし合わせて、毎年調整しながら施肥しています。

畑に入れる堆肥
品種による味、育てやすさの違い
みなさんご存じのように、トマトは大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトなどがあります。さらにその中でもさまざまな品種に分かれており、世界ではなんと1万種以上が存在すると言われています。スーパーでよく売られている生食用のトマトから、高糖度でフルーツトマトと呼ばれているもの、加熱用の調理トマトなど、トマトの種類は多種多様です。
その中で現在私が育てているのは大玉トマト「麗月」とミニトマト「アイコ」「甘っこ」ですが、今の品種に落ち着くまでには毎年さまざまな品種を試してきました。
同じ場所で育てても、品種によって生育、味、耐病性などに差があることに気づきました。土や気候によっても相性があり、他の農家さんなどからおすすめされた品種でも、うまくいかなかったりしました。
現在育てている品種の特徴は、「麗月」は真夏でも裂果が少なく、赤く熟してから収穫しても実がしっかりしていて、「アイコ」は暑くても安定して実がなり続け、「甘っこ」は一番甘くフルーツのような味がします。
栽培のしやすさとしては、ミニトマトのほうが実がなりやすかったり病気に強いですが、「アイコ」は特に枝が伸びるのが早く、誘引するのが大変です。逆に「麗月」は「アイコ」に比べると枝は太く短く育ってくれるので、管理がしやすいです。
品種それぞれのメリットとデメリットがあるので、複数品種を育てることで安定供給やお客さんのニーズに合わせた栽培を行っています。特にミニトマトは、品種による差がより大きいと感じます。
また、一般的に言われているように、ミニトマトより大玉トマトのほうが栽培の難易度は上がります。同じ畑でもミニトマトは病気にも強く、暑い夏でも実がなり続けていたりする一方、大玉トマトは雨で裂果してしまったり、病気で枯れてしまう本数が多かったりしました。

トマト苗

色づき始めたミニトマト
私が理想とするトマトの味
読者の皆さんは、「おいしいトマト」と言うとどのような味を思い浮かべますか? 甘いトマト、すっぱいトマト、味が濃いトマト、昔なつかしいトマトなど、人それぞれの「おいしいトマト」があると思います。
前述したように、今はスーパーやオンラインでも、さまざまな種類のトマトが販売されています。さらに、サラダやサンドイッチ、スープの具材、ケチャップ、ジュース、パスタソース、ドライトマト、スイーツなど、思いつくだけでもたくさんの食べ方があり、使い道がとても幅広い野菜といえます。
私は、初めて農業に触れるきっかけとなったアルバイト先の農家さんで、とれたてのトマトを初めて食べた時に、こんなおいしいトマトがあるなんてと感動しました。風味が強くてみずみずしく、酸味と甘みのバランスがよい、野菜としての魅力がつまったトマト。その時味わったトマトの味から私もこんなトマトを育てたいと思い、今でもその味を目標にしつつ、さらにこの土地や気候を生かしたオリジナルの味を目指しています。
栽培期間中ずっと同じ味わいが出るわけではなく、季節や天候によって味は変わってきます。トマトは夏のイメージがある野菜ですが、意外と秋が一番糖度が増しておいしくなり、逆に夏はあっさり目で酸味が増す傾向があります。品種の違いだけではなく、季節によっても味の違いを楽しめるのもトマトの魅力の一つといえます。
おいしいトマトを作るための工夫
そんな理想のトマトを育てるために、私が工夫していることをご紹介します。
土づくりの段階で、まずはトマトの成長に必要な栄養素が十分かどうか、土が物理的、生物的、化学的にトマトの生育に適しているかどうかなどをチェックします。

土づくり中の畑
投入する肥料はトマトの風味がよくなるように、魚から作られる液肥などアミノ酸肥料を使用し、カルシウムやマグネシウムなど他の必要な栄養素も補います。また、適切に堆肥を投入したり、納豆菌、光合成細菌、乳酸菌などの菌を利用して土壌環境を改善することで、トマトが健康に生育することができます。

摘果したトマト
他にも、日々の手入れから、不要な実を取り除く摘果、トマトの葉にできるだけ太陽が当たりやすいように誘引することや、夏に暑さを和らげるために換気したり、光を最大限に取り入れるためにハウスのビニールを張り替えています。
こうした小さなことすべてが積み重なって、トマトの味として現れます。
おいしいトマトは、「こうすればおいしくなる」「この肥料を入れればおいしくなる」という栽培方法や資材の選び方だけではなく、毎日の観察と小さな積み重ねの結果として実現するのだと感じています。
次回は、有機農家として生きる上で、専業と兼業のメリット・デメリットなどについてご紹介したいと思います。
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