2025年も暑い季節が近づいてきました。この時期になると気になるのが、農作業中の熱中症による体調不良や事故。時間に迫られている中で気遣いながらの作業は難しいところもありますが、適切な対応をとって、安全に作業することが必要です。

そんな中、一般財団法人 日本気象協会が進めている「熱中症ゼロへ」プロジェクトにて、全国農協青年組織協議会（JA全青協）の協力のもと、若手青年農業従事者90人を対象に、「農作業と熱中症に関する実態調査」を行いました。

本記事では、「熱中症ゼロへ」プロジェクト公式サイト「熱ゼロ研究レポート」をもとに、熱中症に対する対策などを考えてみたいと思います。 

「農作業と熱中症に関する実態調査」サマリー

夏の暑さによる働き方の変化、90%以上が影響を実感

直近2年程度の夏の暑さについて、作業環境や働き方、作業時期への影響があったと回答した割合は、「とても影響を受けた(68.9％)」、「やや影響を受けた(22.2%)」と、合わせて約90%に上りました。

具体的な影響について聞いたところ、暑さを避けるため「1日の休憩頻度を増やした」が最も多く72.0％、続いて「1日の作業時間帯を前後にずらした」が58.5％、「1日の作業時間数を変更した」が39.0％と、働き方への工夫がみられました。

熱中症の注意は「草刈り作業」や「薬剤散布」などの1人作業

農作業中、農作業後において熱中症に注意が必要だと感じる人の中で、注意が必要な具体的なシーンや理由について詳しく尋ねたところ、草刈り作業や薬剤散布などの重労働のとき、エアコンの効いていないトラクターで作業するとき、個人農家やハウス内での水やり作業などの1人になりやすいとき、などが挙げられました。

熱中症予防においては、周囲の人が変化に気付くことのできる環境づくりも課題のひとつです。

農畜産物には生育・収穫量で影響あり

夏の暑さについて、農畜産物自体への影響はどの程度受けたと感じるか聞いたところ、「とても影響を受けた(65.6%)」、「やや影響を受けた(28.9%)」と、合わせて約95%が影響を受けたと回答しました。具体的には、暑さにより「農畜産物の収穫量が減った」が76.5%、「農畜産物の生育が不十分だった」が64.7%と、農畜産物の「生育・収穫量」に関して影響を感じていることが分かりました。

その他の回答では、害虫の被害が大きかった、果実の日焼け、樹上でのドライフルーツ化、高温障害などの意見も挙がりました。

農作業と熱中症に関する実態調査 調査概要

【調査方法】 インターネット調査
【調査対象】 全国農協青年組織協議会（JA全青協）の各県域委員長・会長等の若手青年農業従事者
【サンプル数】90人（20代～50代）
【調査時期】 2025年3～4月
※調査結果は、端数処理のため合計しても必ずしも100%とはならない場合があります。

農作業時の熱中症予防のポイント

暑い環境に合わせた衣類・環境を整える
気象庁によると※、日本の平均気温はさまざまな変動を繰り返しながら上昇を続けており、特に1990年代以降、記録的な高温となる年が多くなっています。そのため、農作業をする方や、個人で園芸を楽しまれる方などを含め、暑い環境で長時間作業する場合は熱中症に注意が必要です。

特に、屋外で直射日光を浴びる環境や、高温多湿な環境下になりやすい「ハウス」・「畜舎」・「選果場」・「農業用車」などで作業をする場合も、予防・対策を徹底しましょう。天気予報や暑さ指数（WBGT）を確認し、水分補給、適度な塩分補給を心がけ、こまめに休憩をとることが大切です。防護服などを着用する際は、ファン付きウェアなどの暑さ対策アイテムも積極的に活用しましょう。

2人以上で作業する
熱中症予防・対策には周りの人が、体調をこまめに気にかけることも大切です。作業する際はなるべく2人以上で行うようにし、時間を決めて連絡を取り合うなどお互いを見守る環境を作りましょう。もし熱中症が疑われる作業者を発見した場合は、すぐに応急処置を行い、病院などの医療機関へ連れていきましょう。

「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは「熱中症は未然に防げる気象災害」を2025年度のテーマに、早めの熱中症対策を呼びかけいくとのことです。

【熱中症ゼロへ 熱中症について学ぼう：こんな人は特に注意！「屋外で働く人」】
https://www.netsuzero.jp/learning/le06
【熱中症ゼロへ 熱中症について学ぼう：応急処置のポイント】
https://www.netsuzero.jp/learning/le03
【熱中症ゼロへ 熱ゼロ研究レポート】
https://www.netsuzero.jp/netsu-lab/lab14

気象庁ホームページ（https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2024/index1.html）

熱中症を防ぐために活用したいスマート農業

夏場の農作業には熱中症になりやすくなってしまう作業が多くあります。一番多いのは、防護服などを着て行う手作業での防除でしょう。これまでは圃場の環境などから農機などが入りにくく、手作業を余儀なくされることもありました。

しかし、これは農業用ドローンによる空中からの散布で解決できます。遠隔操作なので防護服などを着る必要もなく、被曝の心配もありません。作物ごとにドローンで使える農薬などもだんだん増えてきており、散布に特化した農業用ドローンも普及しています。

購入するとなると大きな予算が必要ですが、まずは業務委託してみるというのも手です。年に数回だけの作業であれば、10aあたりいくら、といった単位で防除が可能になります。

参考記事：ドローン農薬散布・防除：利用者の声
https://www.optim.co.jp/agriculture/services/drone-connect/interview/interview2

今年の気象傾向：6月は平年並み〜高めで要注意

日本気象協会所属 気象予報士／防災士／熱中症予防指導員の久保智子さんによれば、「6月の気温は、北日本や東日本、沖縄・奄美で平年より高く、西日本で平年並みか高い」とのことでした。

対策として、「6月中旬には、西日本や東日本の広い範囲で梅雨入りする見込みで、湿度が高く、蒸し暑く感じられる日が多くなりそうです。湿度が高いと、汗が蒸発しにくく、体の中に熱がこもりやすくなるため、熱中症の危険度が高まります。曇りや雨でも油断せず、綿や麻など通気性の良い素材の服装を選び、こまめに水分をとるなど、熱中症対策を心がけましょう」とアドバイスしています。

「熱中症ゼロへ」プロジェクトとは

熱中症にかかる方を減らし、亡くなってしまう方をゼロにすることを目指して、一般財団法人 日本気象協会が推進するプロジェクトです。2013年夏のプロジェクト発足以来、熱中症の発生に大きな影響を与える気象情報の発信を核に、熱中症に関する正しい知識と対策をより多くの方に知ってもらう活動を展開してきました。活動13年目となる2025年は「熱中症は未然に防げる気象災害」をテーマに、熱中症の予防啓発活動を実践します。激甚化する暑さや熱中症への防災意識を高め、さまざまな働き方や生活に合わせて、暑さに備えるための情報発信を強化します。

熱ゼロ研究レポート
https://www.netsuzero.jp/netsu-lab/lab14
一般財団法人 日本気象協会
https://www.jwa.or.jp/