稲刈り後の稲わらは「土の貯金」! 水田の秋起こしとすき込みのコツ

稲刈りが終わると、乾燥・調製や出荷が続き、圃場の作業までなかなか手が回らない時期です。とはいえ、収穫後に残った稲わらをどう扱うかは、次の作付けにも関わります。

水田では、稲わらを秋のうちに土へすき込む「秋起こし」があります。農林水産省も、水田から発生するメタンを減らす方法のひとつとして秋耕を紹介しています。ただし、収穫後すぐに耕せばよいわけではありません。排水のいい田と乾きにくい田では、作業できる時期も異なります。

また、稲わらは水田へ戻すだけでなく、畑へ持ち出してすき込んだり、敷きわらとして使ったりする活用法もあります。

今回の記事では、収穫後の水田と畑、それぞれでの稲わらの生かし方をご紹介していきます。



「秋起こし」は稲わらを「土の貯金」に変える作業


そもそも稲わらは、収穫後に片づけるだけの余分なものではなく、土へ戻して利用できる有機物資源です。

農林水産省では、秋起こし(秋耕)を「水稲収穫後、秋のうちに稲わらなどをすき込む作業」としています。水田では、稲わらを秋のうちに土へ混ぜておくことで、次の入水までに分解する時間を取りやすくなります。

ただ、水を張った後も未分解の有機物が多く残っていると、メタン発生の一因になります。農林水産省が紹介する現地の取り組みでは、秋にすき込んで水張り前の分解を促すことで、ガス湧きや初期生育への影響を抑える可能性も示されています。

一度秋起こしをしたからといって、すぐに地力が高まるわけではありません。農研機構の長期試験では、稲わらの秋すき込みを続けた水田で、土壌有機物が維持された例があります。毎年の管理の中で稲わらを戻し、土の状態を見ていく取り組みと考えた方がよいでしょう。

稲わらを戻すことは、施肥とも無関係ではありません。農研機構では、水田のカリ収支を考えるうえで、稲わら還元をカリ供給の一要素として扱っています。稲わらを継続して戻している水田では、土壌診断や過去の施肥履歴も踏まえて次作の肥料を考える必要があるでしょう。

水田ではなく畑へ持ち出した稲わらも、有機物として利用できます。ただし、水田とは水分条件や次に育てる作物が違うため、同じ使い方をそのまま当てはめるのではなく、作付けに合わせて扱い方を変えます。


台風・豪雨の後は「早さ」より圃場の状態を優先


稲わらは早めにすき込んだ方が、次の入水や作付けまでの分解期間を長く取れます。ただし、台風や豪雨の直後に無理をして耕すと、土を練ったり、深いわだちが残ったりすることがあります。

農林水産省も、豪雨や台風への備えとして、水路の清掃や溝切り、明渠の点検・補修などの排水対策を挙げています。作業日だけを先に決めず、まず圃場の状態を見ることが大切です。

水田の場合


大雨の後に田面へ水が残っていたら、水尻や排水路、明渠などを確認します。泥やごみが詰まっていれば取り除き、水を外へ逃がせる状態にします。

土がぬかるんでいる段階で機械を入れるのは避け、作業できる程度まで乾くのを待ちます。乾きやすい田では比較的早く秋起こしへ進めますが、排水の悪い田は同じ日程では動けません。

また、秋雨が続く地域や、積雪までの期間が短い地域では、年内に十分な作業時間を確保できないこともあります。秋起こしを終えることだけを優先せず、地域の栽培指針や普及指導機関の情報も参考に、次の耕起時期を考えましょう。

逆に、秋起こし後に大雨が来てしまった場合は、まず排水し、圃場が乾いてから稲わらの流出や偏り、田面の荒れを確認しましょう。国の資料にも、豪雨後に必ず再耕起すべきといった全国共通の基準はありません。被害の程度に応じた判断が必要です。

畑(露地野菜)の場合


畑では、大雨の後に排水溝の詰まりや畝の崩れ、表土の流出を確認します。水が残った状態で耕すと、土が練られたり、大きな土塊ができたりして、その後の播種や定植に影響することがあります。

圃場内で乾き方に差があるなら、全面を一度に耕さず、作業できる場所から進めるという手もあります。

特に傾斜のある畑では、強い雨による表土流出にも注意が必要です。排水経路を確保するほか、地表を覆った状態を残すなど、圃場条件に合った対策を考えましょう。

稲わらをすき込んだ後に豪雨を受けた場合も、土が乾いてから表土や残さの状態を確認します。全国一律の再耕運基準は示されていないため、大きな崩れや偏りがあれば、次作までの期間も見ながら整地などの必要性を判断しましょう。



稲わらの分解を進めるには


稲わらを土へ戻すときは、まとまったまま入れるより、土と触れやすい状態にすることが基本です。そのうえで、水田と畑それぞれの条件に合わせて進めます。

水田の進め方


コンバインから出た稲わらは、田面へできるだけ均一に広げます。長い稲わらが残っている場合は、細断してからすき込んだ方が土と混ざりやすくなります。

秋起こしでは、稲わらを深く埋めればよいわけではありません。農林水産省の技術資料には、浅く耕して稲わらを表層へ混ぜた事例があります。ただし、耕す深さは土壌や使用する機械によっても変わるため、全国一律の数字で決めるものではありません。地域の栽培指針や圃場条件を確認して決めましょう。

すき込み後も、水が長くたまらない状態を保ちます。分解を進めるために腐熟促進資材を使う場合は、製品ごとの使用方法や注意事項を確認しましょう。肥料成分を含む資材もあるため、次作の施肥設計と切り離して考えないことがポイントです。

秋起こしをした日や、その前後の雨の日、排水に時間がかかった場所などを簡単に残しておくと、次作の判断材料になります。代かき時の稲わらの残り方や初期生育と照らし合わせれば、その圃場での今後の作業時期や方法を見直しやすくなるでしょう。

畑の進め方


畑では、稲わらを土へすき込むほか、敷きわらとして地表を覆う使い方もあります。どちらを選ぶかは、次に何を育てるのか、播種や定植までどの程度時間があるのかによって変わります。

農研機構の資料によれば、転換畑でも稲わらが土壌中で分解されることは確認しているものの、次作直前に多量の稲わらを入れる場合は、作物や投入量、土壌条件を踏まえた判断が必要です。すべてを土へ入れる前提にせず、敷きわらとして使うなど、次作の予定に合わせて使い分けましょう。

畑でも、稲わらを入れた量や時期、播種・定植時にどの程度残っていたかを記録しておくと、次回の使い方を考える材料になります。作物と圃場をセットで振り返れば、その畑でどの使い方が合っていたかも比較しやすくなります。



圃場ごとの判断を、次の土づくりにつなげる


秋起こしやすき込みは、稲わらを土へ入れること自体が目的ではありません。水田なら次の入水や田植え、畑なら播種・定植までを見すえ、次作に支障が出にくい状態へつなげることが大切です。

同じ地域でも、排水性や土質、作付け体系によって、稲わらの分解の進み方や作業できる時期は変わります。前年と同じ方法や時期を考慮しつつ、その年の天候や圃場の状態に合わせて柔軟に変更するといいでしょう。

水田と畑、それぞれで作業後の状態や次作の生育を振り返り、必要に応じて時期や使い方を調整していく。こうした積み重ねが、自分の圃場に合った「土の貯金」につながります。


参考資料
第2節 地球規模で課題となっている気候変動や生物多様性への対応
第10節 気候変動への対応等の環境政策の推進
農林水産省「山ノ内米研究会」
農研機構「土壌型に応じた有機物・土づくり肥料の長期連用効果」
農研機構「水田土壌のカリ収支を踏まえた水稲のカリ適正施用指針」
農林水産省「水稲・麦・豆の排水対策等を確実に実施し、豪雨や台風襲来に備えましょう」
農林水産省「主要作目の災害対策技術上の基本的留意事項―水稲」
農林水産省「露地野菜・花きの排水・倒伏対策を実施し、豪雨や台風襲来に備えましょう」
農林水産省「簡単にできる!傾斜畑の土壌流亡対策」
農研機構「稲わらの水田と転換畑での分解速度比較」
農林水産省「みどりの食料システム戦略 技術カタログ」


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。