岡山大学、「紫米」が宇宙で安定に保存できることを発見
国立大学法人岡山大学 資源植物科学研究所の杉本学准教授、岡山大学の前川雅彦名誉教授、福岡工業大学の三田肇教授、東京薬科大学の横堀伸一准教授の研究グループは、紫米に含まれるアントシアニンが太陽光や宇宙放射線から種子中の遺伝子を保護し、宇宙環境で米を長期保存できる事を明らかにした。
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宇宙放射線やUV-Cを含む太陽光等の宇宙環境は、植物内で活性酸素種を発生させて酸化ストレスを引き起こし、DNAや細胞にダメージを与える。これまでに宇宙環境に曝露したイネ、インゲン豆、トウモロコシ、ナズナ等の種子は発芽率の低下や生育異常が報告されており、宇宙環境で種子を安定に保存する方法が求められている。
古代米である紫米には、種皮の部分に、抗酸化作用やストレス緩和作用などの効果をもつ青紫の天然色素のアントシアニンが含まれている。そこで今回の研究では、白米に交配技術でアントシアニン合成遺伝子座を導入して作製した紫米を用いて、宇宙環境に対するアントシアニンの防御効果について検討した。
紫米と白米を国際宇宙ステーションの船外で440日間保存した結果、太陽光に当てた紫米は生育率55%(※)、白米は15%となり、紫米の生育率は白米より3倍以上高い値を示したという。また、遮光した状態での紫米の生育率は100%、白米は70%となった。
さらに、種子に存在する発芽に重要な貯蔵型mRNAの損傷した数を調査したところ、太陽光に当てた紫米では548個、白米では1590個、また遮光した状態では紫米は303個、白米は1546個となった。
これらの結果から、紫米に含まれる抗酸化物質アントシアニンが、種子中の遺伝子を太陽光や宇宙放射線から保護し、生育率を高めることが確認された。
この研究成果は、宇宙環境での種子保存や栽培に不可欠な情報を提供し、今後人類が月や火星で長期にわたり活動する際に必要な食料の自給自足に貢献できることが期待される。
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※生育率:まいた種子のうち発芽し生育した種子の割合
掲載紙:Life Sciences in Space Research
著者:Manabu Sugimoto, Masahiko Maekawa, Hajime Mita, Shin-ichi Yokobori
DOI:https://doi.org/10.1016/j.lssr.2024.10.010
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2214552424000993?via=ihub
岡山大学資源植物科学研究所
https://www.rib.okayama-u.ac.jp/
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宇宙で自給自足する未来への貢献に期待
宇宙放射線やUV-Cを含む太陽光等の宇宙環境は、植物内で活性酸素種を発生させて酸化ストレスを引き起こし、DNAや細胞にダメージを与える。これまでに宇宙環境に曝露したイネ、インゲン豆、トウモロコシ、ナズナ等の種子は発芽率の低下や生育異常が報告されており、宇宙環境で種子を安定に保存する方法が求められている。
古代米である紫米には、種皮の部分に、抗酸化作用やストレス緩和作用などの効果をもつ青紫の天然色素のアントシアニンが含まれている。そこで今回の研究では、白米に交配技術でアントシアニン合成遺伝子座を導入して作製した紫米を用いて、宇宙環境に対するアントシアニンの防御効果について検討した。
紫米と白米を国際宇宙ステーションの船外で440日間保存した結果、太陽光に当てた紫米は生育率55%(※)、白米は15%となり、紫米の生育率は白米より3倍以上高い値を示したという。また、遮光した状態での紫米の生育率は100%、白米は70%となった。
さらに、種子に存在する発芽に重要な貯蔵型mRNAの損傷した数を調査したところ、太陽光に当てた紫米では548個、白米では1590個、また遮光した状態では紫米は303個、白米は1546個となった。
これらの結果から、紫米に含まれる抗酸化物質アントシアニンが、種子中の遺伝子を太陽光や宇宙放射線から保護し、生育率を高めることが確認された。
この研究成果は、宇宙環境での種子保存や栽培に不可欠な情報を提供し、今後人類が月や火星で長期にわたり活動する際に必要な食料の自給自足に貢献できることが期待される。
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紫米のアントシアニンは太陽光や宇宙放射線から貯蔵型mRNAを保護し、生育率を高める
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定例記者会見において研究紹介を行う杉本学准教授
杉本学准教授のコメント
2007年に行った研究では、大麦種子を国際宇宙ステーション船外に 1年間保存すると生育率は82%、2008年には世界初となる宇宙ビール「Space Barley」を醸造しました。しかし、白米の生育率は50%以下であり宇宙で長期保存するには厳しい結果でしたが、本研究成果により、宇宙で「とりあえずビール!」に加え「〆のお茶漬け、おにぎり」を楽しめることに一歩近づけたと思っています。
2007年に行った研究では、大麦種子を国際宇宙ステーション船外に 1年間保存すると生育率は82%、2008年には世界初となる宇宙ビール「Space Barley」を醸造しました。しかし、白米の生育率は50%以下であり宇宙で長期保存するには厳しい結果でしたが、本研究成果により、宇宙で「とりあえずビール!」に加え「〆のお茶漬け、おにぎり」を楽しめることに一歩近づけたと思っています。
※生育率:まいた種子のうち発芽し生育した種子の割合
論文情報
論文名:Anthocyanin can improve the survival of rice seeds from solar light outside the international space station掲載紙:Life Sciences in Space Research
著者:Manabu Sugimoto, Masahiko Maekawa, Hajime Mita, Shin-ichi Yokobori
DOI:https://doi.org/10.1016/j.lssr.2024.10.010
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2214552424000993?via=ihub
岡山大学資源植物科学研究所
https://www.rib.okayama-u.ac.jp/
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