X線CTで土中の根を確認可能に 農研機構とかずさDNA研究所が開発

農研機構とかずさDNA研究所は、土中にある作物の根の生長の様子を可視化する新技術の開発に成功した。

両者が開発した新技術は、医療診断や機械部品の非破壊計測等に使用されるX線CTを応用したもので、作物の水分等の吸収効率に影響する根の形状がCT画像で確認できるというもの。今回の開発により、品種改良の際に必要な優良個体の選抜が、従来よりも迅速にできるようになるという。

https://www.shutterstock.com/ja/image-photo/close-green-paddy-rice-plant-468667964

農業用ポットに植えた作物の根の形状を約12分間で可視化


農研機構とかずさDNA研究所が開発した新技術は、物体を透過して撮影することができるX線CT技術(断層撮影法)を応用したもので、農業用ポットに植えたイネ等の作物の根の形状を掘り出すことなく可視化できるのが特徴という。

出典:農研機構
撮影時間はおよそ12分間(CT撮影時間10分+画像処理時間2分)で、直径20cm×高さ25cmまでの農業用ポットに対応。根の形を決定する種子根と冠根のみを可視化するよう撮影条件を最適化しているため、国内で栽培されるほとんどのイネやコムギの品種が撮影可能となる。

画像処理は、根の3次元画像を再構成する860枚のX線CT画像によって行われ、根の成長などの経時変化も観測できるという。

種子根と冠根/出典:農研機構

X線CT装置の撮影の様子/出典:農研機構
X線CT画像で見た土中の根の様子/出典:農研機構
X線CT画像で見た土中の根の経時変化/出典:農研機構
農研機構とかずさDNA研究所は開発した新技術を用いて、品種改良や最適品種の選定など農業分野全般での活用ほか、干ばつや冠水などに強いイネ品種の開発にも生かしていきたい考えを示している。
今後は、自然の田んぼや畑で育った作物の根の形状も可視化できるよう、撮影条件や画像解析技術の向上を目指し研究・開発に取り組むそうだ。


農研機構
http://www.naro.affrc.go.jp/
かずさDNA研究所
https://www.kazusa.or.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
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    川島礼二郎
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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