東京農業大学、震災から10年目の農業者の意識調査レポートを発表

東京農大東日本支援プロジェクトは、発災後10年を経過した時点での農業者の意識について、地元JAのご協力を頂き大規模な調査を実施。その結果を「発災後10年の被災地における農業者の意識調査 結果レポート」として公表した。冊子のかたちで配布予定だ。


避難経験者ほど変化を求める傾向に


東京農業大学では、2011年から学部横断的な取り組みとして、東日本大震災の被災地支援を継続しており、2019年からは、福島イノベーションコースト構想「復興知」事業の助成を受け、2021年度は「東京農大:復興から地域再生への農林業支援プロジェクト」としても活動している。

今回のレポートによれば、「5年以内」と「10年後」での営農規模の拡大・縮小に関するアンケートでは、「拡大」「維持」は「5年以内」よりも「10年後」の方がポイントが減少し、「縮小」「離農」はどちらも増加していた。また、地域の将来像として「新規就農者」「スマート農業」「農地の流動化」などが期待されており、避難を経験した回答者ほど変化を意識している結果となったという。

レポートは冊子として配布される。


「発災後10年の被災地における農業者の意識調査 結果レポート」詳細

主体:東京農大東日本支援プロジェクト
目的:東日本大震災および原子力発電所事故の発災後10年を経た時点での被災市町村における農業者の意識を調査・分析することを通じ、復興の過程を検証するとともに、復興の加速と充実を図り、浜通りの地域活性化に資する。
対象:被災市町村の農業経営者・農業従事者(営農をしている認定農業者を想定)
標本抽出:JAふくしま未来およびJA福島さくらに対象者の選定と調査票の配布を依頼し、郵送にて回収
時期:2021年11月
サンプルサイズ:327件(回収率 47%)
主な知見:
(1)震災後、経営を拡大したという経営は、避難指示や自主避難を経験した回答者に多く、とくに農地や出
荷量を拡大させて来た。
(2)経営上の課題で最も多いのは「販売価格の低下」。次いで、資材の高騰、鳥獣害、高齢化等がある。
(3)今後の見通しについては、「拡大」は 5 年以内に 20%であるが 10 年後には 11%に減少、一方で、「縮小」
は 12%から 20%、「離農」も 4%から 13%に増加する。
(4)「拡大」見通しの内容は作付面積や出荷量にとどまり、品目や部門、加工での「拡大」意向は少ない。
(5)「拡大」意向が多い類型は土地利用型の野菜や麦・大豆の経営であり、10 年後も「維持」および「拡大」
意向が継続している。
(6)地域の将来像は、「新規就農者も地域の担い手となる」「IT やスマート農業の利用が進む」「農地がより流
動化する」が多く選択され、避難を経験した回答者は、より変化を意識している。
公表:冊子として配布


調査結果
https://www.nodai.ac.jp/application/files/8916/4627/0251/2022030302.pdf
東京農業大学
https://www.nodai.ac.jp/


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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