農業分野へのIoT活用を促進、農業用ドローン教習所「福島ドローンスクール」開校

2019年8月、各種ドローン事業を展開する株式会社スペースワンと株式会社富久山自動車学校は、農薬散布用のマルチローターの普及と安全な運用、人材育成を目的とした「ジャパンアグリサービス福島教習所・整備事業所」を開校する。教習事業で培ってきた人材育成のノウハウを、スマート農業分野におけるloT活用に役立て、後継者不足などの農業課題への解決を目指していく。




自動車学校が農業用ドローン活用を促進

近年、ドローン(小型無人機)の機能が向上・多様化したことで活用の幅が広がり、操作方法などの技能や安全な運用知識を学ぶ場が求められている。また富久山自動車学校によると、高齢者講習に参加した農業従事者から、後継者不足やコスト比率の増加などの農業が抱える課題について、複数件の相談があったという。

これらを受け、同校は従来より培ってきた交通安全指導や技能実習の実績とノウハウを農業分野におけるドローン活用に転じ、人材育成や産業の創出に取り組む意向を固めた。地域農業の活性化や次世代型農業の新たな土台としてドローンの活用に重点を置き、既存のドローンカリキュラムに加えて、農薬散布用のマルチローターを扱う教習にも踏み切ったとのことだ。

農林水産省においても2019年3月に、農業分野でのドローンの普及を推進するための取り組みとして「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」を設立。同省では、loT導入を積極的に推奨することで、以下のような農業課題に対応する構えを見せている。

  1. 少子高齢化による後継者不足
  2. 農業就労者の高齢化(平均年齢66.6歳)
  3. 生産性の低下 (≒燃油やインフラなどのコストの高騰)

同省公表の計画によると、現在において使用可能な登録農薬を646種類から1.3倍の846種類とし、農薬の散布面積も2万ヘクタールから4年間で約50倍の100万ヘクタールに増やす方針だ。これらを背景に、産業用マルチローターによる農薬や肥料の散布を推進し、農作業の省力化・効率化を後押しする機運が高まっている。農業課題にドローン分野のイノベーションを取り込むことは極めて重要であり、今後は産業用ドローンの普及拡大や技術の開発・継承が急務となっていきそうだ。



「ジャパンアグリサービス福島教習所・整備事業所」スクール概要

【開講】第1期は本校にて8月下旬を予定
・本校(郡山市)
東北最大級の屋外ドローン専用練習場で実技演習が可能
・Jヴィレッジ校(楢葉町)
日本サッカー聖地で合宿型講習、全天候型ドームでの散布練習が可能

【教育カリキュラム】
・5日間コース(ドローン・ラジコンヘリの事業従事者は3日間コース)
・9:00~17:00(60分休憩)
・50分1コマ

【座学】
・運用管理(基本知識・法令など)
・散布飛行知識(機体性能知識・点検項目など)
・作物と農薬に関して(適正利用・安全評価・病害など)

【実技】
・飛行技能(点検・整備・飛行技術など)
・飛行訓練(応用飛行技術など)
・実機飛行訓練(農薬タンク取扱い・散布など)

【農薬散布用ドローン】
DJI社製Agras MG-1(液体または粒剤の農薬、肥料、除草剤などの散布を適正な割合で高精度に行うオクトコプター)
<性能>
・散布時間1分/1kg/1反(1ヘクタールを約10分で散布)
・万が一の安全着陸機能
・国際基準の防塵・防滴性
<メリット>
・作業負担の軽減(ドローンの持ち運び・操作・使用後の手入れが容易)
・作業時間の短縮(人の手による噴霧の1/5の時間)
・高い機動性(さまざまな大きさの圃場・中山間部・狭小地に対応)
・正確な散布(レーダーが地形を認識し、農薬を均一かつ精密噴射)
・コストの削減(散布ムラによる薬剤コストを含む)

【ライセンス(産業用マルチローターオペレーター技能認定証)】
学科試験・技能試験に合格した修了者に「一般社団法人農林水産航空協会認定オペレーター」としてライセンスを発行(諸申請の代行・年1回の定期点検・ソフトウェアのバージョンアップ・定期的な技術指導・故障時の代行散布などのアフターケアあり)

【開校式典】
日時:2019年7月13日
受付:13時00分〜
式典:13時30分〜14時30分の約1時間(祝辞・スクール概要説明・テープカット・デモ飛行など)
会場:郡山ドローンパーク
住所:〒963-0713 福島県郡山市中田町高倉字高太郎内144
<車>郡山駅より15〜20分 郡山東IC下車20分
<バス>郡山駅出発柳橋行き・小野行き 高倉舘下車 徒歩10分
参加:希望者のみ

<参考URL>
株式会社スペースワン 福島ドローンスクール
株式会社富久山自動車学校 福島ドローンスクール郡山校
郡山ドローンパーク
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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