減農薬と抵抗性害虫の防除を目指す「赤色LEDによるアザミウマ類防除マニュアル」公開

地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所、株式会社光波、静岡県農林技術研究所、農研機構野菜花き研究部門は共同で、赤色LED光を用いた防除技術を開発。『赤色LEDによるアザミウマ類防除マニュアル』 を公開した。



赤色LED光を用いた新しい害虫防除法

アザミウマ類とは?

アザミウマとは、アザミウマ目に属する昆虫の総称で、微小で細い体型が特徴の害虫である。現生種は5,000種ほど確認されているが、農業害虫とされる主な種はミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、チャノキイロアザミウマの5種とされている。

殺虫剤の効かない抵抗性を持った害虫

農業生産の現場では、殺虫剤を使用した防除が行われているが、繰り返しの使用による 「殺虫剤の効かない抵抗性を持った害虫の発生」 が問題視されているという。
重要害虫に指定されているアザミウマ類においても同様で、特にナスやメロン、キュウリなどビニールハウスを使用した施設栽培では、温室を好むというアザミウマの対策が急務といわれている。

また、減農薬につながる新しい防除技術の開発も求められており、今回の赤色LED光を用いた防除技術の開発やマニュアルの公開は、農薬に代わる新しいアザミウマの対策方法としても注目を集めている。

赤色LED光を作物の葉に照射して防除

研究では、日中に赤色LED光を作物の葉に照射すると、ミナミキイロアザミウマの成虫が作物に近づく行動が抑制されることが判明しており、株式会社光波では、これを応用し 「赤色LED防除装置」 を開発した。装置に使われている赤色の光はヒトには無害であることも実証済みで、今後は一般向けの販売も視野に入れているとのこと。

赤色LEDによるアザミウマ類防除マニュアル

マニュアルには、防除のイメージや、効果のメカニズム、利用上のポイントのほか装置の概要等が示されており、設置方法や、ナス、メロン、キュウリなど作物別の利用法も具体的に示されている。

問い合わせ先も明記されており、製品である赤色LED防除装置については株式会社光波が担当し、ナス・キュウリでの使用については大阪府立環境農林水産総合研究所が担当、メロンでの使用については静岡県農林技術研究所が担当、効果のメカニズムについては農研機構野菜花き研究部門が担当するとのことだ。

マニュアルは、大阪府立環境農林水産総合研究所のホームページからダウンロードできる。

 P3 『1.防除のイメージ』

<参考リンク>
大阪府立環境農林水産総合研究所
株式会社光波(こうは)
静岡県農林技術研究所
農研機構野菜花き研究部門
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
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  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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