ハンズフリーの音声入力システムで作業負担を軽減、沖縄県で実証実験スタート

株式会社日立システムズと株式会社ソフトビル、オンキヨー株式会社の3社は、JAおきなわ中部地区の協力を得て、音声入力システムの実証実験を実施する。スマート農業の推進を目的としたもので、2020年1月から3月まで予定している。



スマート農業推進の背景

近年、国内の農業は担い手の減少や高齢化による労働力不足が深刻な問題となっている。また、依然として人手に頼らざるを得ない作業が多く、ノウハウを持った熟練者でなければ対応できない作業が多い状況だ。

これらの課題に対して、ロボット技術ICTを農業に活用するさまざまなスマート農業への取り組みが進められており、今後さらにこの動きを加速させるためには、属人化したノウハウを組織や産地で活用するためのデジタル化が不可欠である。なかでも、作業記録のデジタル化や、産地に特化した生育ノウハウを蓄積するナレッジデータベースが重要になると予測されている。

しかし、屋外で作業することが多く、高齢化が進む農業分野では、作業記録のデータ入力が難しく、デジタル化やデータベース化が進んでいないのが実態だ。

実証実験の詳細

同実証実験は、日立システムズが企画から実施、課題抽出などの取りまとめを担当し、ソフトビルが農業向けに特化して開発した業務改善プラットフォーム「FarmBOX」と、オンキヨーが開発したハンズフリーのネックスピーカー型デバイスを含む「対話音声テキスト化システム」を活用する。

具体的には、農業指導員がネックスピーカー型デバイスを装着し、担当農家との会話内容を音声情報として取得し、自動的にテキスト化。その後、農作物の育成状況や育成ノウハウに関する部分をデータベースに登録することで、農業現場における音声によるデータ取得の可能性、音声入力の実用性、デバイスの装着負荷、システムの使用負荷等を確認する。

今後3社は、実証実験を通じ、特定の地域や現場に限らず利用可能な音声入力システムの構築をめざし、農業分野におけるデータ入力作業負担の軽減や、作業記録のデジタル化、ナレッジのデータベース化による収穫予想の精度向上を通じて、市場価格の安定化、さらには、産地全体の生産量安定化の実現をめざす。

農業専用の業務改善プラットフォーム「FarmBox」

「FarmBox」とは、農業協同組合農事組合法人・農業者グループ等が情報共有のために組織で利用するアプリケーションだ。これまで分散されていた情報を集約し「見える化」するだけでなく、産地全体で共有して組織マネジメントの効率化を実現する。


ネックスピーカー型デバイスを含む「対話音声テキスト化システム」

オンキヨーの対話音声テキスト化システムは、ネックスピーカー型デバイスを使って対話の音声を取得してテキスト化を行うシステムだ。ネックスピーカーはハンズフリーで耳を塞がないため、周囲の音を聞きながら音声の入力や取得を行うような現場での活用に適している。

また、対話音声テキスト化システムでは、ネックスピーカーを装着している人の音声だけでなく、話し相手の音声も取得。テキスト化と同時に、音声と位置情報をサーバーに記録出来るため、会話をデータ化して解析などに使用することが可能だ。

<参考URL>
株式会社日立システムズ
株式会社ソフトビル
オンキヨー株式会社
FarmBox
対話音声テキスト化システム
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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