団地に住みつつ就農「アグリサポーター」制度を神奈川県住宅供給公社が開始

神奈川県で賃貸住宅の管理事業などを行う神奈川県住宅供給公社は、中郡二宮町の二宮団地にて団地と地域の活性化を図るため、2016年4月より団地再編事業に取り組んでいる。

▲二宮団地ビジョンマップ

これまで、住宅のリノベーション、共同施設の整備、地域イベントの開催などを行ってきた同社だが、今回、持続可能な地域の魅力づくり、団地へのさらなる移住増を目指し、もともとこの地域で盛んであった農業に焦点をあてた新たな取り組みをスタートさせた。

具体的には、同社が運営している共同農園の管理や農業体験イベントの開催などに協力する「アグリサポーター」を募集し、二宮団地に住みながら就農してもらう制度を創設。2019年2月22日から募集を開始したところ5名の応募があり、審査の結果、5名全員をアグリサポーターとして選定した。

■アグリサポーターの紹介
●岡嵜 均さん(50)
東京都世田谷区在住で、現在の仕事を辞め、4月からは二宮町の農園で農業研修を予定している。将来的にはスパイスやハーブ類を中心とした農業を目指し、料理が得意なこともあり、オープンキッチンを備えた地域に開かれた観光農園の運営を構想している。

●川尻 哲郎さん(56)
2016年に横浜市から二宮町へ移住し、休耕している畑を借りて養鶏場を開き、放飼い鶏の有精卵として売り出している。地域の仲間と一緒に作業することが好きで、鶏卵だけでなく、有機野菜も仲間と一緒に生産している。今後は、新たに観光養鶏場を開設し地域に広げていくことや買物困難者の支援などを目指している。

●末永 郁さん(37)
二宮町在住で、農業研修を経て6月からは中井町で就農予定。虫が付きづらい有機農法を研究しており、ご自身の喘息の経験から安全で美味しい食の生産を行うことにこだわりを持っている。現在、川尻さんの養鶏場も手伝っており、農機具だけでなく労力もシェアして楽しく農業を行うことも目指している。

●長谷 享さん(45)
神奈川県茅ヶ崎市在住で、東日本大震災を契機にサラリーマンを辞め、食材への興味から本格的に農業を行うことになる。既に中井町で就農し、農業体験イベントや菜園づくりなどの講師として、素人でもできる農の普及活動を行っている。今後は更に農地を拡大するとともに、団地、地域へ農の楽しさを伝えていくことも目指している。

●山崎 早智子さん(36)
二宮町在住で、介護職として働きながら共同農園で地域の方と農作業を行っている。
農のある暮らし、共同で農作業をすることに魅力を感じ、アグリサポーターとして地域の方々にもその魅力を伝えていくことを目指している。将来的には地域での自給自足の暮らしを行いながら、介護に農を取り入れることも考えている。


【アグリサポーター制度概要】
<1> 公社が提供する支援内容
(1)住宅の支援
農業収入が安定するまでの期間、二宮団地の住宅を半額家賃で賃貸。
(就農予定者は賃貸借契約の始期日より5年間、既就農者は契約始期日より3年間)
(2)農業の支援
二宮団地4号棟の一部を農業に使用できる住宅付属倉庫として整備し、農機具置場及び農機具を無料で貸し出す。
(3)地域住民との交流支援
団地住民、地域住民との交流のきっかけ作りを行う。
(4)その他の就農支援
収穫物を公社が買い取り、所有している有料老人ホームの食事の食材として使うことを検討。

<2> アグリサポーターに協力いただくこと
(1)地域活性化への協力(公社共同農園(菜園・田んぼ等)及び自農地での農業体験イベントや各地域イベントへの協力等)
(2)共同農園の管理協力(日常の草刈作業などの管理など)
(3)自治会活動への協力

<参考URL>
二宮団地Webサイト
神奈川県住宅供給公社Webサイト
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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