スムーズな水やりが実現! 灌水設備を作ってみた【農家見習い・さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第16回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。さわちんと申します。

現在38歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。

前回は、「農家になるために必要なこと」と題して、半人前のさわちんが考える、新規就農を円滑に行うためのスキルをご紹介しました。

やっぱり大切なのは、いろんな人とコミュニケーションが上手にできること。決しておしゃべりが上手じゃなくてもよくて、話をしっかり聞いて、相手のことを理解しようとする姿勢が大事なのかなと思います。

さて今回は、前回の記事でも少し触れましたが、ビニールハウス改造計画の第1弾(第2弾は考え中……)、潅水設備の工事についてお伝えしたいと思います。

と、その前にわが家で飼っている鶏が、なんとクリスマス当日の12月25日についに卵を産みました!


初めての卵は、スーパーで売っているものより少し小ぶりでしたが、白身も黄身もしっかりしていて、とても美味しかったです。

昔は庭先養鶏といって、農家さんは必ずといっていいほど2、3羽くらい鶏を飼っていたそうです。餌はお米の余りや精米後の米ぬか、野菜の切れ端など、人間が食べない余りだったのだとか。


さわちん一家も、それにならって鶏をヒヨコの時から育てていました。上等な餌ではないけれど、家族みんなで大切に育てたかいもあり、今ではすっかり懐いてくれました。

卵も8割くらいの確率で産んでくれています。ついに鶏にまで食費を助けてもらっています(笑)


家族みんなで農業に取り組みたい! ハウス改造計画第1弾~灌水設備編~


余談はここまでにして、灌水設備工事のお話にもどります。まずは、「なぜ灌水設備工事をはじめるに至ったか」をお伝えしますね。

それは、かんきつアカデミーが冬休みに入った某日のこと、私は妻と一緒に、同じ町内のチンゲンサイ農家さんのところへ研修に行きました。

その農家さんは、加茂谷地域でも有名なチンゲンサイ農家の方で、その作業スピードとクオリティは他の追随を許さないほど。ぜひとも今後の参考にしたいと私からお願いして、お時間をいただいたのでした。

実際にご自宅で出荷調整作業を見せてもらったのですが、動きに無駄が全くありません。

収穫したチンゲンサイ2~3本をおよそ3秒くらいで袋に詰め、10袋ごとに段ボールに詰めていきます。チンゲンサイを袋に詰める道具や作業台は、全て自分がやりやすいように自作しているとのこと。そのため体への負担が少なく仕事ができるのだそうです。

なんだか効率を極めた最終形態のような気がして、ただただ息をのんで見つめることしかできませんでした。帰りに妻と「凄い人がご近所にいるもんだね~」と話をしていた次の日、自分のビニールハウスで作業をしていると、その方が様子を見に来てくれました。

ビニールハウスの中を見渡した後に一言、「水やり、大変でしょ。灌水設備を作りなさい。」と。

たしかに水やりは悩みの種で、ちゃんと水がかかっていない部分があったことから、野菜の生育がまばらになったり、トラブったりもしょっちゅうなので、私しか対応できないなどの悩みがありました。

でも灌水設備の作り方をうかがうと、ものすごい遠い道のりのように感じたので、「え~」だの「あ~」だの言ってると、「今学校は冬休みなんでしょ? その間に完成させなさい。」ときたもんだ!

でも、「バルブをひねるだけでしっかり水をやれるようになるから、小さい子どもに手伝ってもらうことだってできるよ。」というアドバイスに、頭の中の電球が光りました。

子どもたちと一緒に農業ができたらいいなぁと常々思っていたので、一念発起して取り組むことにしました。


今回の灌水設備は、葉物野菜を栽培する際によく導入される、灌水チューブをビニールハウスの内側面に取り付ける「サイド灌水」という方式を採用しました。


手順その1 塩ビパイプを埋設するために、ひたすら穴を掘る

まず最初の関門は、潅水用の塩ビパイプを配管するための、穴を掘ることでした。

地表に配管してしまうと、歩くときにけっつまずいたり、耕運機などの機械を使う際に邪魔になってしまいます。そこで、深さ30~50cmの穴を掘ってパイプを埋設するのですが、今回の工事に必要な距離を計算すると、約100m掘る必要があるようで!

毎日毎日鍬とスコップとツルハシを駆使して穴を掘っていくのですが、いわずもがな重労働……。

真冬とはいえハウスの中の気温は30度近くになることもあり、毎日汗だくになりながら穴を掘りました。穴を掘り終えたときの達成感は、今でも忘れることができません。



手順その2 塩ビパイプの配管

穴を掘り終えたら、設計図をもとに塩ビパイプを配管していきます。

あらかじめホームセンターに行って塩ビパイプと接続用の継手、接着剤を買ってきていました。ちょうどよい長さにするため、専用のこぎりで切断したり、継手とパイプを接着剤でくっつけたり、せっせと接続していきます。

途中でバルブを接続し、水を制御する場所を作成します。


正直、この作業は楽しかったです! 大がかりなプラモデルを作っているような感覚を覚えました。やっぱりものづくりって面白いですよね。


手順その3 灌水チューブの設置

塩ビパイプの配管が終わればゴールはもうすぐ。ハウスの内側面の支柱に、専用の留め具を取り付け、灌水チューブを敷設していきます。

それから潅水チューブと、先の手順で配管した塩ビパイプを接続すれば完成!!



水の元栓を開け、潅水をしたい場所のバルブをあければ、霧雨のような水が降り注ぎます。

もともとのねらいどおり、誰でも灌水ができるようになりました。家族に披露したところ、「すご~い!! 」との歓声をいただきました!

本来は、業者さんに発注するような作業ですが、節約のためにすべて自分で行いました。そのため、所々不格好なところがありますが、パイプからの水漏れ等は発生していないので、合格としましょう!

ただ、12月下旬~1月中旬の冬休みの間、元旦以外は全て作業することになり、家族からは少しブーブー言われましたとさ。

いかがでしたでしょうか。ちょっとイメージしづらい文章で恐縮ですが、ハウス改造計画の第1弾として、灌水設備が完成して本当に良かったです。

早速利用していますが、水やりがとってもスムーズに! これまでは、トラブってしまうと水やり完了までに1時間くらいかかっていましたが、今は10分程度で完了します。

ただし、資材にかかった費用は約15万円。この投資を無駄にしないように頑張って農業に取り組んでいきたいと思います。

さて次回は、いよいよ、チンゲンサイの収穫、出荷の模様をお伝え出来ればと考えています。

害虫にやられつつも立派に育ったかわいいチンゲンサイたち。いただいた苗を植えてから約1カ月半。果たしてどれだけ出荷できるのか。

つまり、どれだけのお金に変わるのか。一緒にドキドキしてもらえると嬉しいです。

【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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WRITER LIST

  1. よないつかさ
    1994年生まれ、神奈川県横浜市出身。恵泉女学園大学では主に有機栽培について学び、生活園芸士の資格を持つ。農協に窓口担当として5年勤め、夫の転勤を機に退職。アメリカで第一子を出産し、子育てをしながらフリーライターとして活動。一番好きな野菜はトマト(アイコ)。
  2. syonaitaro
    1994年生まれ、山形県出身、東京農業大学卒業。大学卒業後は関東で数年間修業。現在はUターン就農。通常の栽培よりも農薬を減らして栽培する特別栽培に取り組み、圃場の生産管理を行っている。農業の魅力を伝えるべく、兼業ライターとしても活動中。
  3. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  4. 沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  5. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。