移住支援員が紹介する、移住して農業をするための3つの方法【藤本一志の就農コラム 第21回】

こんにちは。岡山県真庭市の兼業農家、藤本一志です。

さて、今回は農業とは少し離れた話題である、私の本業について書いてみようと思います。

私は“兼業農家”として米を中心に栽培していますが、本業は岡山県真庭市の移住支援員です。

実は今、新型コロナウイルスの影響で都市部から地方に移住を希望している方が増えています。私の勤務する「真庭市交流定住センター」でも、移住相談の件数が増加し、移住相談の中身も変化しました。

そして、多くの方がおっしゃられるのが「農業がしたい」「“農にふれる暮らし”がしたい」ということです。

そこで今回は、

  • コロナで移住相談がどう変わったか
  • 移住して農業をするにはどんな方法があるのか

という2点について記そうと思います。

農業からは少し逸れた話題ではありますが、新規就農者の獲得や、農業の関係人口増加のヒントになるかもしれません。お付き合いいただけると幸いです。


そもそも「移住支援員」とはどんな職業?


真庭市交流定住センター
「移住支援員」は、都市部から地方へ移住する方をサポートする職業です。

岡山県真庭市の移住支援員は、「真庭市交流定住センター」を拠点に活動しています。

一般社団法人コミュニティデザインが真庭市から委託を受けて、センターを管理・運営。移住相談や真庭市の情報発信、空き家バンクなどの業務に取り組んでいます。

よく市の職員と勘違いされますが、民間の会社です。

その中で、私の主な業務はこちら。

  • 移住相談:移住希望者の相談に応じる
  • 現地案内:移住希望者にお越しいただいて、真庭市をご案内する
  • 情報発信:ホームページやSNSで、真庭市の情報を発信する

移住相談では、「ぜひ真庭市に移住してください! 」というよりも、「理想の暮らしを実現できる場所を一緒に探しましょう」というスタンスを大切にしています。

移住は今後の人生を左右する大きな決断なので、ミスマッチが起きないように心がけています。真庭市が合いそうであれば真庭市を詳しく案内しますし、他の場所が合いそうなら、他の自治体をご紹介します。

そして、真庭市内の不動産業者や求人を出している企業、市役所の各種窓口、地域のキーパーソン的な人と移住希望者をつなぎ、移住が円滑に進むサポートをしています。

しかし、毎日移住相談があるわけではないので、メインの業務は「情報発信」です。記事や動画を作成し、ホームページやYouTubeにアップしています。真庭市外の方向けの情報はもちろん、市内交流を目的とした市内向けの情報も発信しています。

例えば、「YAMABICO Clip」という、真庭で地域を活性化させようと活動している人々を紹介するコラムを執筆しています。この記事の最後にリンクを掲載しているので、読んでいただけるとうれしいです。


コロナで変わった移住相談

真庭市交流定住センタースタッフ
そんな移住相談も、コロナの影響で大きく変わりました。

まず、相談件数が増えました。

真庭市交流定住センターの2020年度の相談件数は、2019年度の1.5倍。電話やメールでのお問い合わせが多くなっています。

そして、相談の中身も変化しています。

以前は、理想の田舎暮らしが明確に描けている方・移住候補地が絞れている方が多い傾向でした。例えば、「休日に畑をいじりながら暮らしたい」「岡山県内で探している」といった感じです。

それが、最近では「とりあえず田舎に暮らしたい」という方が増えました。はじめは対応に戸惑いましたが、何度か対応しているうちに、しっかりと寄り添えるようになったと感じています。

次に変わったことは、オンライン移住相談が始まったことです。

真庭市交流定住センターでは、岡山県の自治体として最初にこの仕組みを導入しました。ネット環境さえあればどこからでも移住相談ができるため、多くの相談をいただいています。オンライン移住相談を始めたおかげで、移住相談のお問い合わせがグッと増えました。


移住して農業をするための3つの方法

オンライン移住相談のイメージ
オンライン移住相談のイメージ。接続テストをしたときの様子です。

移住相談の中で気がついたのですが、移住希望者によって農業のイメージはさまざまです。「移住して農業がしたい」という方は、コロナ以前から多くいらっしゃいます。ただ、そのイメージが「農業=専業農家」という方もいれば「農業=家庭菜園」という方もいます。形はどうであれ、それぞれ自分にとっての理想の農業があるのはいいことだと思います。

ここから、移住して農業をするための3つの方法について解説します。

1. 市の就農窓口で相談


移住して新規就農したい方には、市の窓口を紹介しています。

就農については市の担当職員の方が詳しいので市の職員に、暮らしについては私たちが分担する体制をとっています。最初に私たちのところに相談がきて、私たちが市の職員につなぐことがほとんどです。

「移住して新規就農したい」と相談をいただいたときには、相談者さんのイメージする農業と就農までの筋書きなどをしっかりヒアリングするようにしています。そして「独立して軌道に乗るまでは5年は見たほうがいいと思います」とお伝えして、市の窓口を案内しています。

そのあとは一般的な就農と同じように、研修を受けてから農家として独立する流れです。移住して就農するには大きなエネルギーが必要なので、いつも以上に慎重に進めています。

2. 農業法人に就職


真庭市内には、いくつか農業法人があります。移住と同時の就農はハードルが高いので、こちらをおすすめすることが多いです。

正社員やパートなど、雇用形態はさまざま。朝活として早朝作業だけでもOKというフレキシブルな働き方ができる法人もあります。

私のように複業で生きてきたい方、将来的な就農を考えている方向けです。

3. 家庭菜園で農的な暮らし


地方に住んでいる方ならわかると思いますが、田舎の家庭菜園は広いです。“田んぼ1枚くらいの広さ“の家庭菜園をしている方もたくさんいます。しかし、都市部の方の中では、それを「農業」と考えている方もおられ、「移住して農業」という時の規模のイメージが若干ずれています。

家庭菜園は「自分で食べるものを自分で作る」という、農業の根本的な意味合いをもちます。田舎に移住して週末に家庭菜園を楽しむ暮らしは、大いにおすすめします。僕も小さな畑をしていますが、野菜に愛着がわいて楽しいです。

真庭市では、基本的に農地が余っていますので、大規模でなければ農地を借りることもできます。私たちは真庭市内のつながりがたくさんあるので、場所によっては農地を紹介してくれるキーパーソンとつなぐことができます。田舎なので、畑付きの物件も多いです。


コロナ禍で移住された方の現状

コロナ禍でも、東京や大阪から移住される方はいます。移住された方の多くは、真庭市に来てから“2週間”、最低限の買い物以外は自宅から外に出ません。町の人へのあいさつも自治会長など最低限にして、2週間経ってからあいさつに回っています。

今の状況では、「都市部から来た」というだけで、私たち田舎の人間は警戒してしまいます。多くの移住者は私たちのことを気遣って、2週間“待機”してくださります。そして、2週間後から積極的に動いて、地域に馴染んでいっています。

移住相談を受ける際も「2週間待機」のことはお伝えしています。みなさん理解してくださるので、とてもご案内しやすく感じています。

一方で、移住前に真庭市に下見に来ようと予定していても、緊急事態宣言が発令されて来られなくなった方も多くいらっしゃいます。多くの方は解除されてから来られるのですが、コロナの状況を見ながら日程を組むのが難しいと感じます。

今も「真庭に行ってみたい」というお問い合わせをたくさんいただいています。みなさん言い方ばかりなので、安心して往来できる状況になって、早くお会いしたいと思っています。


次回は移住のポイントを紹介

次回は移住に向いている人・移住する際に気を付けたいポイントについてご紹介します。

地方移住は、農業の関係人口を増やすキーとなる動きだと思います。

暮らしの中に、農的な要素を取り入れる方が少しでも増えていけばいいですね。


真庭市交流定住センターホームページ
https://i-maniwa.com/area/koryu/
真庭市の移住・定住のポータルサイト「COCO真庭」
https://cocomaniwa.com/
藤本の執筆するコラム一覧
https://cocomaniwa.com/author/fujimoto/
真庭市のイベント情報サイト「ManiColle」
https://manicolle.cocomaniwa.com/

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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  3. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
  4. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  5. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
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