贈答用桃のネット直販で安定した営農を実現(みらい農園・岩城未来氏)

岡山県美作市で桃の栽培を行っている「みらい農園」は、東京生まれ東京育ちの岩城未来さんが新規就農して立ち上げた桃農園だ。移住したのは6年前、40歳の時。桃をメインとしてにんにくも作りながら、自社で運営している直販サイト「みらい農園オンラインストア」で販売している。

みらい農園の桃の栽培方法や管理方法は、IoTAIなどの技術を一切削ぎ落とした、昔ながらの人力による作業の積み重ねだ。そんな古来からある農業の先には、現代風のインターネットを活用した販売流通経路のシステムがある。新規就農から6年間でどのようにみらい農園を軌道に乗せたのか、岩城さんに就農のきっかけと農業への思いを伺った。


国と自治体の移住&就農補助制度を活用

岩城さんが就農したきっかけは、地方に移住しようとしていた友人からの誘いだった。

「高校時代の友人が移住先を探していて、自分も興味を持って一緒に美作市に行ってみたのがきっかけです。当時美作市では『ドリームプラン』という、Iターンで移住・定住を希望する方に、住宅や農地などを至れり尽くせりで準備してくれる補助制度がありました。実際に見学に行ってみたらそこにドリームプランの担当の方がいて、話を聞いてくれたのです。まさに体だけ行くだけで移住できるという感じでしたね」

もともと小学4年生の時に兄の知人のところで農業を体験していた岩城さん。その知人は無農薬の「シュタイナー農法(バイオダイナミック農法)」にこだわり、機械などを使わず人力で行っていた。岩城さん自身も鍬を一つ持って畑を耕す経験をしたのだが、そこで「自分で耕す」ということに充実感を感じたという。その後、直接農業の道に進むことはなかったが、いつかは農業に携わりたいという思いを持っていた。そして、結婚もし、子供もすでに二人いた2012年、前述の移住補助制度と出会うべくして出会った。

「この時に移住してきたのは私たちを含めて6家族でした。最初の3年間は研修として地元の農家の方などに色々教えていただいて、徐々に自立していくという流れで、農業の基本も教えていただけました」


就農最大の苦労はやはり「お金」

移住に関する住宅や農地などは自治体の補助が得られたものの、そこから先の農業による収入については当然自分の頑張りが必要だ。国の就農補助として、5年間は年間150万円が支給されることになっていたが、岩城さんの期限は来年、2019年にやってくる。つまり、そこまでにある程度自立できるようにならなければならない。

「桃の場合、就農直後は当然木も実もまだまだ生育途中で、いきなり生活が安定するほどの収穫が得られるわけではありません。最初に分けていただいたのは12本の成木。これをじっくり育てていきました」

販売経路などもなく、最初は自分の知人・友人から始まり、その口コミで少しずつ評判が広がっていった。こうした初期のお得意様は今でも交流があり、毎年6月に案内を出し、7月に注文を受けるという流れを続けている。

「農業の仕事は基本的にすべてひとりでやっています。自分で納得のいくかたちで進めたいと思っているからです。農薬などもできるだけ使わず、竹酢や竹炭などを自分で作って、防虫対策などを行っています」


現在の農園の規模は70アールで、成木園が10アール、若木園が30アール、育成園が30アールという構成だ。昨年は約2000個の桃を収穫・出荷できるまでになった。現在販売している桃はスタート時点から育てている3品種だが、今後は収穫時期が多少異なる品種の桃の生育も始める予定。規模が大きくなれば人手は足りなくなるが、収穫や箱詰めの繁忙期に手伝ってもらう程度でいい、と考えている。

「収穫の繁忙期は早朝から深夜まで丸1日の作業がほぼ1カ月続きます。ただ、それが終わるとある程度時間も落ち着くので、秋からはにんにくも育てて、お得意様のお店に一括納入してもいます。次の課題は追加の品種の桃を育てることですね。今育てている3品種も、人気の品種やなかなか捌けない品種もあるので、その品種の量を調整して別の品種に置き換えるといった工夫もこれから進めたいと思っています」

直販サイトでお得意様と直接つながる

みらい農園は軌道に乗り、順調に売り上げも伸ばしているが、その販売の大半は先にも述べた自社の直販サイトだ。2017年にオープンしたこのサイトでは、価値の高い桃をある程度の高額で、ギフト用に的を絞って販売。昨年は収穫した2000個以上の桃が完売したという。

「農園を始める時点で、これからはネット販売の時代だろうとは思っていました。最初はいい桃ができるかどうか試行錯誤でしたが、美味しい桃ができればお客様はちゃんと評価して他の方にも薦めていただけます」



みらい農園の桃は徐々に、しかし確実に全国規模で話題を集めていく。そんな中で銀座のバーで取り扱ってもらえるようになるなど、ブランドとしての価値も高まっていったという。

成功の鍵となったのは、贈答用の桃という高価値の商品として、お得意様を大切にブランド展開したこと。ただし、一般的な市場ではなくインターネットで“選んでいただけるような商品にすること”は、美味しい桃を作ることとは同義ではない。オンラインショップの運営を外注し、より多くの人にその価値を知っていただくためのインターネット上のIT技術を活用したことも、わずか6年で農園を軌道に乗せた一助となっているだろう。

これからの農業は、大量に作ることと、商品の価値を高められること、その両方が大切になる。みらい農園のように規模が小さくとも、他と同じ味ではなく独自の特徴や価値を持った商品を生み出す努力を続けながら、未来のプランをしっかり立てて着実に品質の高い果物や野菜を生み出していくことが、新規就農で成功するためのノウハウのひとつとも言えるだろう。岩城さんのようにこだわりを持った農法に取り組みながらも、負担を減らすためのIoTやロボット技術を活用した農業がさらに普及すれば、新規就農者が最初から「賢く、かっこよく、稼げる農業」に携わることもできるはずだ。


最後に、「6年間でここまで軌道に乗せることができた最大の要因は?」と伺ったところ、「家族の支え」との答えをくれた岩城さん。みらい農園の今後の発展も楽しみにしたい。

今年の桃の予約は、みらい農園オンラインストアにて、本日5月24日からスタートする。

<参考URL>
みらい農園
http://mirai.farm/
みらい農園オンラインストア
https://momo.ginza.life/
美作市移住定住促進特設ページ - みまさか暮らし
http://www.city.mimasaka.lg.jp/pr.html
ドローンパイロットシェアリングサービス
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

WRITER LIST

  1. 三好かやの
    みよしかやの。しがないかーちゃんライター。「農耕と園芸」「全国農業新聞」等に記事を執筆。八王子市ユギムラ牧場でかぼちゃの「いいたて雪っ娘」栽培中。共著『私、農家になりました。』(誠文堂新光社)、『東北のすごい生産者に会いに行く』(柴田書店)等がある。http://r.goope.jp/mkayanooo
  2. 山口亮子
    やまぐちりょうこ。フリージャーナリスト。京都大学卒、北京大学修士課程修了。時事通信社を経てフリーに。主に農業と地域活性化、中国を取材。
  3. r-lib(アールリブ)
    これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている、をコンセプトにインタビュー記事やコラムなどを発信するメディア。r-lib編集長は奈良の大峯山で修行するために、毎年夏に1週間は精進潔斎で野菜しか食べない生活をしている。
  4. 水尾学
    みずおまなぶ。滋賀県高島市出身。大学卒業後、電子機器関連業務に従事。2016年に自家の柿農園を継ぐと同時に、IoT農業の実現を目指す会社、株式会社パーシテックを設立(京都市)。実家の柿農場を実験場に、ITを駆使した新しい農業にチャレンジしています。
  5. 窪田新之助
    くぼたしんのすけ。農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。 2015年11月に発表される「農業センサス」で明らかになる衝撃の事実! 日本の農地は急速な勢いで大規模化され、生産効率も急上昇……輸出産業となる!! 日本経済団体連合会(経団連)も2015年1月1日、発表した政策提言『「豊かで活力ある日本」の再生』で、農業と食のGDPを合わせて20兆円増やせるとした。これは12兆円の輸送用機械(自動車製造業)よりも大きく、インターネット産業や金融・保険業に肩を並べる規模──日本のGDPは500兆円なので、農業が全体の4%を占める計算になる。「コメ農家は儲けてない振りをしているだけですよ」「本気でやっている専業農家はきちんと儲かっている」など、日本中の農業の現場を取材した渾身のレポートは、我々に勇気を与える。日本の農業は基幹産業だ!日本発「ロボットAI農業」の凄い未来 2020年に激変する国土・GDP・生活自民党農林水産部会長の小泉進次郎氏は語る。「夜間に人工知能が搭載された収穫ロボットが働いて、朝になると収穫された農作物が積み上がっている未来がある」と──。21世紀の農業はAIやビッグデータやIoT、そしてロボットを活用したハイテク産業、すなわち日本の得意分野だ。その途轍もないパワーは、地方都市を変貌させて国土全体を豊かにし、自動車産業以上のGDPを稼ぎ出し、日本人の美味しい生活を進化させる。大好評『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』に続く第2弾!

RECOMMEND