農業大学校でIoTセンサーを導入して気づいたこと【さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第8回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。

さわちんと申します。現在37歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。

前回、農業大学校のカリキュラムである、「農家研修」についてお伝えしました。スダチ農家さんとミカン農家さんの夏の仕事「摘果」が、いかに大変かということが少しでも伝わるといいなと思います。皆さんに少しでも美味しいものを届けたいという農家さんの思い、共感してもらえたらとってもうれしいです。

さて今回は、さわちんの通う「かんきつアカデミー」で取り組んでいる、いわゆる「スマート農業」について、ご紹介できればと思います。

まぁ正直、内容はしょぼしょぼなので、あまり期待しないでくださいね……。ドローンが飛んだり、自動で水やりができたりとか、そういうのはまだまだ先の話ですので。

というのも、果樹でのスマート農業の導入は、野菜のそれと比べてずいぶん遅れをとっているようなのです。


どうして果樹栽培でのスマート農業の導入は後れをとっているのか

その理由として、「果樹の生理生態」が挙げられると思います。

例えば、スマート農業が多く導入されているトマトやキュウリのような施設園芸の野菜は、種を撒いてから収穫、また種を撒いて……というサイクルを、数カ月で行うことができます。そのため、取得したデータから新しい事を実践して、その効果を実感するまでのサイクルが短くなります。

いわゆるPDCAサイクルを短い期間でぐるぐる回すことができるため、導入における費用対効果が出しやすくなるのです。また、ハウス内での栽培は、気温や水分量をコントロールできることから、IoTセンサーとの相性が良いことも、理由の一つとして挙げられます。

ところが果樹の場合、一般的に30~40年、長ければ50年程度同じ木を使って果実を収穫することになります。つまり、それまでの長い年月の積み重ねがその年の結果として現れてくるため、取り入れた施策の効果測定が非常に難しいのです。

収集したデータと果実のでき具合がなかなか結び付かないため、費用対効果の面で導入に後ろ向きになることが多いようです。

また、果樹栽培のほとんどが露地栽培になるため、どうしても天候の影響を受けてしまうことも、導入のハードルを上げています。


農業大学校でIoTセンサーを導入!

とはいえ、実際にやってみないと、前には進みません。

せっかく失敗してもよい「学校」に通っているのだから、設備にかかる料金も学校が払ってくれるし(笑)、とりあえずやってみよう! ということで、私が学校側に提案をし、IoTセンサーを導入することが決まりました。このような生徒の提案に柔軟に対応してくれるところが、かんきつアカデミーのいいところです。

早速、取り扱いメーカーの方にお越しいただき、ユズの木を植えてある圃場に装置本体を設置。設置作業はとっても簡単です。設置したい圃場に鉄柱を埋め込み、そこに針金で装置本体を固定するだけ。

あとは、土壌水分などを計測したい場所に拡張センサーを埋め、簡単な動作確認を実施すれば終了です。

スマホに専用アプリをインストールし、ログインすると、早速計測したデータが確認できるようになりました。装置本体の電源はもちろん太陽電池。設置した圃場はとても日当たりがいいため、電力の心配はいらなさそうです。

商品名はお伝えすることができませんが、かんきつアカデミーで今回導入した装置は、「土壌水分」「土壌温度」「土壌EC」「気温」「湿度」などを計測し、スマホにインストールしたアプリからいつでも確認することができます。


さらに、期間を指定して、計測データをグラフィカルに表示することもできるので、計測値の推移を簡単に確認することができます。閾値を設定して自動でメールを送信する機能も備わっています。


IoT導入あるある「で? これからどうすればいいの?」問題

これで圃場の環境の見える化はできるようになりましたが、大きな問題が出てきました。

「で?」問題です。

見える化はできましたが、収集したデータをどのようなことに活用できるのかがわかりません。これについては、現在も何かよい案がないか考え中です。


そんな中で少し光が見えていることもあります。2020年の8月は雨が降らなくて、ユズの木がかなり弱っていたのですが、どうも土壌水分が5%VWCを切ったあたりから、目に見えて弱ってきたような気がします。

そこで、土壌水分の値に閾値を設定し、木が弱る前に先手で水やりができるようにセンサーを活用してみる予定です。これで、ベテランの農家さんが葉っぱや木の状態を見て、適切な水やりのタイミングを計っていたこれまでとは違い、誰でも適切なタイミングでの水やりができるようになることを期待しています。


ヒトの体調管理にもIoTを役立てる

また、今後の取り組みとなりますが、圃場の見える化により、植物ではなく人間の作業環境指数を算出して、作業の役に立てようとも考えています。温度や湿度によって、休憩時間のタイミング、飲み物持参の有無など、一定の基準を作ることで、熱中症の予防に利用します。

農業以外でもそうですが、集中するといつの間にか長時間仕事を続けていた……ということは多いです。無理にでも休憩するタイミングを作ることで未然に防げる事故などもあるのではないでしょうか。また、休憩時間の取得をマニュアル化することで、誰もが安全な農作業に取り組めるようになると考えています。

さてさて、どうなるかんきつアカデミーのスマート農業! これからどんな結果が出るか、とても楽しみですし、今後果樹部門でもスマート農業が広がっていけばいいなと思います。


次回は、徳島県に移住してからの振り返りをお届けしようと思います。農家を目指して家族で徳島県に移住して、はや半年が経過しました。この半年の間にいろんなことがありまして、すでに皆さんにお伝えしたこともありますが、まるっと振り返っていきますよ。

農業のこと、新型コロナのこと、田舎暮らしのことなどなど……お楽しみに!
【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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