【井中優治の農家コラム 第2回】新規農業者にも効果的な1.5次元産業化で農業経営を安定させよう

前回から続いて2回目になります。株式会社収穫祭の井中優治です。


前回は、小売業傘下の農業法人「ハローファーム」から見えたマーケットインのモノづくりや流通工程の簡略化チャレンジを紹介いたしました。

今回は、農業の新たなビジネスモデル「農業1.5次産業化」について紹介したいと思います。



農業の1.5次産業化

生産分野の分業化を行い、作業をアウトソーシングすることで、生産規模の拡大や生産工程の短縮を行い、経営の安定化を図る仕組みのことを農業の1.5次産業化といいます。

農業経営を単純に考えた売上構築を説明すると「収穫量 × 単価 × 回転率(または品目数)- 廃棄=売上」となり、農業経営においての売上の拡大は、この4つのファクターで考えることができます。収穫量、単価、回転率はある一定のラインにまでくると頭打ちとなります。

常識を破壊した技術革新やヒットと呼べるようなプロモーションの成功が必要になり、現実的な可能性は低いといえます(平均収量にすら達していない栽培や市況単価に委ねている場合は別ですが)。そのため、比較的簡単に売り上げを上げる方法として、「品目を増やすこと→マーケットの分散」、「廃棄を減らすこと→ロス率ダウンもしくは秀品率アップ」の2点が取り組みやすいと思います。

人件費コストを最小化したまま売り上げを拡大するためには?

株式会社収穫祭では、生産分野の品目の拡充、栽培面積の拡大を部分的に外注することで貴重な人的リソースを生産へ投資してもらう事で人件費コストを最小化したまま売り上げの拡大を図ることができないかと考えました。

具体的には、「収穫したままの姿で集荷し、取りにうかがう」ことです。


これによって農家は、作業の大半を占める荷造り作業から解放され、生産規模の拡大を余裕で行うことができます。品目によっては効果が大きいものもあります。

実際にハローファームの頃より継続してお取引いただいている福岡県小竹町の「Hanamogu Farm」様の事例をインタビューしました。弊社の取り組む「農業1.5次産業化」の効果をご紹介します。


コストを掛けずに生産規模拡大! 成功事例を紹介


Hanamogu Farm


栽培面積: / スタッフ数:3名(家族労力含む)主に、地元スーパーの産直コーナーや直売所をメインの販路としながら、収穫祭と「色々なす」や「カリフローレ」といった変わり種野菜を栽培。直売所収入で十分な経営基盤を設け、ポートフォリオとして収穫祭を利用することで人手や流通コストを上げずに販路拡大、栽培面積の拡大を成功。

【栽培実績】 
  • ナス:新規就農時 200本(うち、変わりナス 50本) → 現在 2000本(うち変わりナス 1000本)
  • カリフローレ:3年前10a →30a
  • ズッキーニ:0→20a
  • スナップエンドウ・グリーンピース等:10a→20a

井中:花田さんとは3年ほど前から白ナス、ゼブラナス、米ナス、緑ナスといった変わったナスを委託生産してもらうところから始まりました。当時ハローデイ物流センターができたばかりで、近隣の農家さんから野菜を仕入れることができないかと取引先を探していたのがきっかけでしたね。

花田:そうですね。当時は勤めていたところをやめて実家に戻り農業を始めたばかりだったので、日々畑で野菜を作るのに必死でした。普通のナスを作っていたら、変わったナスを作らないかと誘われて、ちょっと面白そうだったので始めてみました。できた分だけでいいからと出荷量など細かくなかったのもよかったです。

井中:店には突然届くなど迷惑をかけた部分も多かったですが、市場では絶対に買えない品種やわざわざイタリアから取り寄せた品種もあったので、作ってくれるだけで助かりました。むしろ栽培方法や仕立て方、病気に強いか弱いかもわからないなかで大変な苦労もありましたね。

花田:川が氾濫してうちの畑一帯が湖になったときはどうしようかと思いました。でも、水が引いた後、緑ナスだけが復活して「この品種は冠水につよい」と、わかったのがよかったです。

井中:まとまった量を受け取りだしたのが「スナップエンドウ」や「グリーンピース」だったと思います。これは「栽培は容易だけども、袋詰めに時間が掛かる」品目です。

花田:最初収穫したまま受け取りましょうかと提案をもらった時は「助かる」のひとことでした。農業始めたばかりでスナップエンドウなど豆類があれほどに収穫が大変だとは思わなくて、アルバイトの協力も得て家族総出で収穫しないといけなかったので本当大変でした。荷造りをやってもらえて本当に助かりました。出し切りましたね~。

井中:弊社もちょうど春先がパートさんの手が空いていたので、むしろ助かりました。たまたまお互いに労力をシェアしたのがきっかけでその後もナスやズッキーニ、スナップエンドウと弊社が受け持つ品目が季節ごとに増えていきましたね。

花田:はい、アルバイトを常時雇うのも、休憩場所や雇用維持のための仕事を用意など大変ですし、露地栽培だとどうしても野菜がない時ができてしまうので簡単に雇えないんです。収穫祭に納品を始めてから余裕ができてきて、直売向けにオクラやスイートコーンなど作るようになりました。直売所用ナスの出荷に専念できて、市場用出荷作業をやらないだけで、ナスの手入れの時間も増えてほかの品目も作れてうちはいいことの方が多かったですね。ナスは最初からしたら本数10倍に増えてますから(笑)作ったことのなかった「西洋ナス」や「ヒスイナス」なども3年目でだいぶ作り方に慣れてきました!

井中:お客様も最初は珍しいだけだったナスですが、食べ方の提案や売り場で目にすることが多くなって売れ始めていくようになりました。テレビなどで紹介されると「あっそういえばあそこのお店に売ってる!」と思い出して手にしてくれるなど、常時少量を置いておくとじわじわ人気が出てきます。市場の評価も少しずつ変わってきていて、問い合わせや注文が増えてきました。

花田:ある百貨店にうちのナスが置いてあって、人づてに「花田さんのナス置いてあったよ」と言われたときはうれしかったですね。変わった野菜はなかなか直売所でも売れないので、全量引き取ってもらえて、おかげで作り続けていたことが「うちしかない商品」となっているのかもしれないです。

井中:間違いないです、ブランド化の一番いい成功例ですよ。いつの間にかブランドになってるというのがベストです。無理してパッケージや名前を最初につくっても上手くいった例はほとんどありません。ましては高単価なんてお客さんがついてこないんですよね。ところで次は何をしましょうか?

花田:あんまり変わったのは勘弁してください(笑)。

井中:自重します(笑)。

※Hanamogu Farm様は、通常の野菜も栽培していますが、弊社は無理に出荷してもらおうとはしていません。直売所があふれて売れなくなったときや採りすぎて困ったときなどにいただくようにしています。


出荷作業をアウトソーシングすることは、単価や手数料の面で儲けが少なくなるように感じますが、使い方次第だともいえます。

自社で規模拡大に合わせて人手や設備を広げていければ一番いいのでしょうが、設備や人手は先行投資。規模を先に広げても出荷し切れずに悔しい思いをすることになります。弊社だけでなく、例えば農家同士で3~5件のグループで取り組むだけでも効率化が見込めると思います。JAの部会をうまく活用するのも手です。

既存の農家だけでなく、新規就農者が継続的に農業を続けるうえでも「農業1.5次産業化」は効果的な取り組みではないでしょうか。

最後になる3回目では、「分業化がもたらす農業新時代像」と題して、自身のオランダ体験談と合わせて、紹介したいと思います。


【農家コラム】株式会社収穫祭・井中優治の「農業1.5次産業化のススメ」
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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  2. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  3. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  4. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  5. 藤本一志
    ふじもとかずし。大学・大学院の6年間を通して地域づくりと農業の活動に関わる。1年間のサラリーマン生活の後、学生時代から活動していた地域に移住し、2拠点居住を開始する。移住支援を通じた地域づくり活動に取り組む傍ら、兼業農家として稲作に取り組む。