【井中優治の農家コラム 第3回】オランダの花き農園で感じた農作業分業化の効果

株式会社収穫祭の井中優治です。

3回目のコラムのテーマは前回少しお話しした「農業1.5次産業化」について、「分業化がもたらす農業新時代像」と題して、自身のオランダ農業研修時代に見た「分業化」を背景に、日本の将来の農業像を考察してみたいと思います。



21歳の時、福岡県立農業大学校を卒業後、JAEC(公益社団法人国際農業者交流協会)の海外農業研修制度を活用し、1年間オランダへ行きました。当時農業大学校では「花栽培」を専攻しており、「世界一の栽培技術」と言われるオランダの栽培方法を学びたいと考え研修に望みました。

派遣先は自分では選ぶことができず、オランダの受入団体が斡旋した農園で働くことになります。渡蘭前は、大規模で10ヘクタールのフェンロ―ハウスや、複数の国にまたがって農業を行う多国籍企業に憧れたものですが、現実は北オランダにある「ヘールフホバールド」という片田舎にある家族経営の農園でした。

従業員数2名。面積2ヘクタールの「菊」だけを延々と栽培し続けるだけの農園で、忙しい時にアルバイトに近所の子どもたちが2~3人来るような、そんな農園でした。

オランダでお世話になった農園の経営者と筆者(左)

最初は、多国籍な従業員が何十人もいるような農園に派遣されることを想像していたので正直がっかりしましたが、2ヘクタールのフェンロ―ハウスをたったの2人で管理する合理的な農業を、生産から流通までいつでも社長に質問できる環境で働けました。


苗の生産、定植、防除などが分業化されたオランダの菊栽培


オランダの農業を端的に表すと、「分業化」が促進されることでワークシェアリングが起き、産業全体の雇用、経済が発展しているという点です。

菊の栽培工程を見ても、苗は「穂木を生産する業者」と「ソイルブロックに挿し木し提供する業者」に分かれています。農繁期の忙しいときは、「苗を定植する業者」が来て、苗を植え付けていきます。


栽培中の管理は社長がメインで行い、病害虫の管理は契約している農薬メーカーが定期的に巡回し、発生状況に合わせて散布を指導します。

出荷の箱も、収穫前に注文すればカートと一緒に届きます。段ボールをつぶすことなく、ボロボロになるまで何度も使います。農場に新品をストックすることはありません。

写真のように、規格化された専用の容器を義務化することで、流通を効率化させています。


そしてこの容器は、そのままお店で販売する際にも使用されています。


分業化で労働力を分散。ワークシェアリングすることで1から10まで作業することなく、仕事と生活を分けた働き方が実現できているのだと感じます。

またワークシェアリングすることで、上記にあるような新たな産業が生まれ、農業全体の雇用が増えるという副次効果も得られています。専門性が特化することで計画生産へとつながる点も利点です。

分業化が日本の青果流通、ひいては産業構造を変える


これらの経験から、現在の日本の農業、青果流通に活用できないかと考えたのが「農業1.5次産業化」です。他産業の分野まで踏み込むのではなく農業内の作業を多様化させ、専門化させることが未来へとつながるのではないかと考えました。

特に、近年は最低賃金の改善が小売業の利益を圧迫しています。

従来のスーパーでは、店舗内でラベルを付けたり、野菜を切ったり、袋詰めしたりとバックヤードで作業されていましたが、今後はより人が少なく、より販売効率を上げるために「バックヤード」のない店や、商品化された「値札の張られた商品」の仕入れが加速すると予想されます。

つまり現在のような、収穫後、 10kgずつ段ボールに詰めたものを小売店に送るのではなく、小分けに袋詰めされた商品の流通が主流になります。そのため、既存の流通は変化を余儀なくされます。JAは商品を集めるだけの機能から、商品化まで行えるパックセンターへと強化されるでしょう。また、JAだけでなく市場や集配業者も参入が始まっています。

弊社のように農業からの参入、生産者グループによるブランド化もより加速します。そうすることで、流通は川上の段階で効率化されるからです。

生産現場から農業革命を!


すべてを農家が行う農業から、各業者が協力し合い一緒にお客様へと商品を売り込んでいく取り組み(バリューチェーン)が加速することで、鮮度のよい野菜が短時間で安定した価格で届く時代も近いのではないでしょうか。

例えば、一つの栽培管理アプリを各メーカーが相互に情報交換を行い、膨大な販売データから必要量の生産を依頼。農家は需要に合わせた圃場在庫管理を行い、生産過程では、肥料、農薬、種苗と各専門メーカーがサポートを行い、安全の担保された食品がお客様に届くようになるのではないかと思います。

さらに、例えば主婦の時短活用や副業の促進などで、生活にゆとりが生まれてくるような産業へと変わっていけるのではないでしょうか。

農業が元気になれば各分野の産業が発展していきます。

生産現場から始める農業革命に、ちょっとだけ「0.5次」分農業の範疇を広げた「1.5次産業化」はいかがでしょうか?


【農家コラム】株式会社収穫祭・井中優治の「農業1.5次産業化のススメ」
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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  2. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX(現在登記準備中)を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  3. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  4. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  5. 藤本一志
    ふじもとかずし。大学・大学院の6年間を通して地域づくりと農業の活動に関わる。1年間のサラリーマン生活の後、学生時代から活動していた地域に移住し、2拠点居住を開始する。移住支援を通じた地域づくり活動に取り組む傍ら、兼業農家として稲作に取り組む。