「農業ジョブ」求職者アンケート調査を発表 人気の業種は「露地野菜」「果樹」

農林水産業専門の人材サービス「農業ジョブ」を運営する株式会社シンクロ・フードは、農業ジョブに登録している求職者を対象に、就農に興味を持ったきっかけや希望業種についてアンケート調査結果を発表した。


調査対象は「農業ジョブ」の登録者(求職者)で、回答数は64名。調査期間は2024年5月2日~2024年5月11日で、インターネットによる調査だった。回答者は6割が農業以外の仕事、2割が農業関係、休職中という属性であり、就農に意欲のある方々のサンプルと言える。これらの前提に立って、アンケートの内容を見てみよう。



転職の理由は「食に関わる仕事」が最多 「移住希望」も2割


「農業に転職しようと思ったきっかけ」は、28%が「自分が口にしている食に関わる仕事がしたいと思ったから」と回答。続いて「一般企業への転職ではないキャリアを選択したかったから」(22%)、「田舎の移住手段として農業を検討したから」(20%)となっている。

「学生時代に農業を学んだ」方は14%とそれほど多くない。また、「実家が農家」は11%と少数派だった。

農業に転職しようと考えたきっかけは? ※複数回答(N=64)


人気の業種は新規就農には現実的な「野菜」「果樹」


「就業したいと考えている、一番興味のある業種」については、最も多かった業種は「露地野菜・畑作」(30%)、次に「施設野菜」(16%)、「果樹」(16%)という結果に。「露地野菜・畑作」を選んだ理由としては、「経験がありイメージしやすい」「家庭菜園に興味がある」「野菜作りに興味がある」など、「施設野菜」を選んだ理由としては、「天候の影響を受けにくい」「効率的に生産できそう」など、「果樹」を選んだ理由としては、「手伝った経験があるから」「果樹園が多い地域に住んでいるから」などが挙がっている。

あなたが就業したい一番興味のある業種は?(N=64)

また、土地があることが前提となる「稲作」、漁業組合の理解も必要で独立起業が難しい「漁業」、施設や土地が必要な「酪農」などを希望する方は少数派だったが、実数としてはそれぞれ3人程度の希望があったことになる。業界的に担い手が少ないと言われている業種ではあるものの、希望する方がいないわけではなく、割合としても決して低くないという見方もできる。

希望以外の業種での就農は「野菜関連」「エリア」「教育」次第


「一番に選んだ業種以外に他業種も検討できるか」という問いには、「前向きに検討できる」(67%)、「妥協して検討できる」(28%)という回答に。95%の登録者が他業種でも検討しており、それだけ農業への思いが強いことがうかがえる。

一番に選んだ業種以外に他業種も検討できますか?(N=64)

さらに、「前向きに検討できる」「妥協して検討できる」と回答した方に対して、どのような要素があると検討できるか、最優先順位の高いものを聞いたところ、最も多かったのは「野菜関連の業種であること」(24%)、次に「希望のエリア」(16%)、「教育体制の充実」(13%)と続いた。給与の高さよりも、働く環境を重視している方が多い傾向にあった。

業種への希望がはっきりしている方の場合、野菜とひとくちに言っても栽培する品目は多様なため、対応は可能なのは理解しやすい。また、「給与」や「会社」の割合が低いことは、やりがいを求めている人が多いように思える。

この点は、もともと天候などに左右されやすく不安定だということを理解した上での回答にも見え、働き方や給与よりもまずは就農したいという意欲の表れとも見える。

他業種を検討する際に最も重視する要素は?(N=62)

今回のアンケートはあくまで「農業ジョブ」の登録者を対象としたもので、世間一般の就農希望者に向けたものではないものの、野菜や果樹が人気&現実的であるということを示す結果にはなっている。

担い手の高齢化となり手不足と言われる農業界にとって、就農を希望する人がいることにはまだまだ希望が持てる。こういった意欲を持つ方々が、必要とする場所にマッチングされ、ひとりでも増えていくことを願いたい。

農業ジョブ
https://agrijob.jp/
株式会社シンクロ・フード
http://www.synchro-food.co.jp/

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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