高精度のAI病虫害画像診断システムが「WAGRI」で提供開始

農研機構、法政大学、株式会社ノーザンシステムサービスの3者は、農業データ連携基盤「WAGRI」向けのAI病虫害画像診断システム「AI病虫害画像判別WAGRI-API」を開発した。

「AI病虫害画像判別WAGRI-API」は、農業情報サービス事業者を対象に病虫害画像診断サービスを構築するために必要な技術を提供する、「WAGRI」向けのオープンAPIである。現在は、法政大学開発のトマト・キュウリ・イチゴ・ナスの4品目を対象にした葉表病害判別器の提供が開始されている。

出典:農研機構|「(研究成果) AI病虫害画像診断システムをWAGRIで提供開始」
日本の農業は高齢化による熟練者の減少等、高度な専門性を必要とする病虫害の診断・防除に関する支援が欠かせないという。一方で、AIによる画像判別技術の精度は2010年以降から急速に加速しているということもあり、手軽で安価な病虫害診断サービスの開発が求められている。

農業現場でのAI病虫害画像診断システムの実用化へ


今回提供を開始した葉表病害判別器は、うどんこ病、灰色かび病、すすかび病、かいよう病、べと病、炭疽病等に罹患している確率を計算する画像診断システムである。研究では、各病害1種類あたり数百から約6000枚の学習画像を使用して、さまざまなシチュエーションに応じた画像を人為的に合成し画像枚数を増やすことで72.6%~89.2%の実用精度を達成。

さらに、現在WAGRIへ搭載準備中の、ノーザンシステムサービスが開発した葉表・葉裏を対象とするAI虫害画像判別器の実験では、実用精度で82.1%~85.4%を達成。2021年4月に公開を予定している。

公開から約1年の期間はWAGRI会員(有料)を対象に無償提供を行うほか、「農業データ連携基盤協議会」の会員は無料でデモアプリを体験することができる。また、活用を検討する民間事業者を対象に、農家等への診断サービスを実現するアプリケーションソフト(デモアプリ)の試用を無償で提供する。

出典:農研機構|「(研究成果) AI病虫害画像診断システムをWAGRIで提供開始」

この開発は、農林水産省が実施する人工知能未来農業創造プロジェクト「AIを活用した病害虫診断技術の開発」にて行われたもの。「AI病虫害画像判別WAGRI-API」を通じて一般ユーザから送信された画像は、農研機構の統合データベースに蓄積・管理された後、データの精査や専門家による再ラベリングを実施して、判別器の精度向上に利用される予定だ。

WAGRI利用申請
http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/rcait/wagri/index.html

農業データ連携基盤協議会登録・問い合わせ
https://prd.form.naro.go.jp/form/pub/naro01/research
農研機構
http://www.naro.affrc.go.jp/
法政大学
https://www.hosei.ac.jp/
株式会社ノーザンシステムサービス
https://www.nssv.co.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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