農業にも活用できる「微生物燃料電池システム」、農研機構と旭化成エレクトロニクスが開発

農研機構は旭化成エレクトロニクス株式会社と共同で、水田や池に設置できる安価で実用的な微生物燃料電池と、その電力を効率的に回収するエナジーハーベスタを開発した。この2つを組み合わせた微生物燃料電池システムは、気温やCO2濃度などを測定するセンサーの駆動に利用できるという。

微生物燃料電池システム完成へ


農研機構は旭化成エレクトロニクス株式会社と共同で、微生物燃料電池を電源としてセンサーを駆動できるMFCシステムを開発した。
この開発には2つの課題解決が大きなポイントとなった。

(1)有機物を分解し発電する新しいバイオ電池(MFC)の改良

MFCとは、発電細菌が環境中に存在する有機物を分解して発電する新しいバイオ電池を指す。従来型のMFCは高価な部材が使われているので製作コストが高く、さらに電極などが劣化しやすい欠点があった。
そこで農研機構は、炎で酸化した電極をMFCの負極として使用することで、低コストかつ長期の使用に耐えるMFCを開発に成功。このMFCは水田や池など水がある環境に設置して利用できるという。

(2)少しの電力でセンサー稼働「超低消費電力型エナジーハーベスタ」を開発

またMFCでセンサーを駆動させるためには、電気エネルギーを効率的に回収して出力電圧を上昇させるエナジーハーベスタが必要とされている。従来型のエナジーハーベスタの回収効率は低く、実用化の障害になっていた。

そこで、旭化成エレクトロニクス株式会社は、新しい超低消費電力型エナジーハーベスタを開発して、従来型では電力を回収することができなかった低出力のMFC(2 μW)からでもエネルギーを回収できることを実証した。



異常気象などの発生予想にも貢献

今回、炎酸化ステンレス鋼電極を用いたMFCと、新規エナジーハーベスタを組み合わせたシステムにより、従来では不可能だったCO2センサーの駆動に初めて成功したのだった。

この成果により、MFCを唯一の電源とした自立駆動型センサーの開発に利用できるという。水田にセンサーを設置して気温や水温などを測定することで、施肥量、収穫量、作物病害の発生を予想するモデル構築に役立つと期待されており、地球上の様々な地点の河川や湖沼にセンサーを設置してCO2濃度を測定すれば、地球温暖化の動態解析や異常気象の発生予想など気象学への貢献も期待されている。

<参考URL>
(研究成果) センサーを駆動できる微生物燃料電池システムの開発
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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