農水省、農薬の適正使用に向けて「農薬使用に伴う事故および被害の発生状況」を発表

農林水産省は、2022年4月から2023年3月までの農薬の使用に伴う事故および被害の発生状況について、取りまとめ結果を発表した。


農薬使用に伴う事故や被害の再発防止へ


農林水産省は、農薬の安全かつ適正な使用を推進するため、厚生労働省と連携し、農薬の使用に伴う事故および被害の発生状況を調査して再発防止の指導を行っている。

今回の調査では、2022年4月から2023年3月までに発生した農薬による人に対する中毒事故、農作物・家畜等の被害を対象として全都道府県に情報提供を依頼し、取りまとめた。

調査の結果、農薬の使用に伴う人に対する事故は18件で、農作物や家畜、魚類の被害は17件だった。

2022年(令和4年)度の農薬の使用に伴う事故および被害の主な発生状況


人 18件
・農薬の散布時に農薬用マスクや保護メガネ等の防護装備が不十分だった
・農薬を適切に保管管理しておらず、間違えて誤飲した
・土壌くん蒸剤(クロルピクリン剤)を使用した時に、被覆をしなかった

農作物 11件
・農薬の飛散防止対策が不十分だった
・土壌くん蒸剤(クロルピクリン剤)を使用した時に、被覆をしなかった又は何らかの理由で漏洩した

魚類 5件
・農薬を水路や河川に流出させた

このほか、家畜で1件、農薬の使用との因果関係が不明な事案が報告された。

農林水産省は、今回報告された事故および被害を防止するためには、以下の取り組みを適正に行うことが重要だとしている。

・農薬の調製又は散布を行うときは、農薬用マスク、保護メガネ等の防護装備を適切に着用する
・農薬を施錠された場所に保管する
・農薬やその希釈液、残渣等をペットボトル、ガラス瓶等の飲料品の空容器等に移し替えない
・廃棄物処理業者に依頼するなど、使用残農薬や不要になった農薬を適正に処理する
・土壌くん蒸剤を使用した際は、適正な材質や厚さの資材を用いて被覆を完全に行う
・農薬が飛散しないよう風向等に注意し、強風時の散布は控える
・飛散が少ないと考えられる剤型を選択したり、飛散低減ノズルを使用したりするなど、飛散防止対策を十分に行う


農林水産省は、農薬の安全かつ適正な使用を一層推進するため、都道府県に今回の調査結果を送付するとともに、事故および被害を防止するための指導を徹底するよう依頼。今後も、「農薬危害防止運動」等の機会を活用し、事故および被害の防止に向けて、引き続き農薬の適正使用の推進に取り組んでいくとしている。


農林水産省「令和4年度農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況」及び過去の調査結果
https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tekisei/accident.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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