AGRIST、埼玉県の農場にきゅうり収穫ロボットを導入

AGRIST株式会社は、株式会社タカミヤの愛菜羽生農場にきゅうり収穫ロボットを2台導入し、2024年4月15日に納品セレモニーを行った。今回の導入により、収穫作業の効率化や収穫遅れを無くし、きゅうりの品質向上を図る。


きゅうり収穫ロボット導入で収穫効率アップへ


AGRISTは、AIとテクノロジーを活用して農業の自動化を推進するアグリテックスタートアップ企業。野菜収穫ロボットを中心に、次世代農業を実現し、人手不足を解決しながら世界の食料問題解決に取り組んでいる。

タカミヤは、建設業界の仮設機材の総合プラットフォーマー。仮設事業で培った技術をもとに、2014年からは農業用ハウス事業にも進出。2021年には栽培も開始し、本格的な農業参入を果たした。2023年には、新しい技術の開発やロボットを利用した農業パッケージの販売、食育活動にも取り組んでいる。

AGRISTのきゅうり自動収穫ロボットは、収穫時の人手不足を解消するために、2021年からつくばオフィスを拠点に開発が進められてきた。

きゅうりは全盛期には1日に2回収穫を行う必要があるほど作物の成長が早く、収獲作業に大きな負担がかかる。そこでAGRISTは、協力農家の意見をもとに、独自開発の収穫ハンドを搭載したきゅうり収穫ロボットを2023年に完成させた。

きゅうり収穫ロボットは、地上走行式(レール)で移動し、1本100グラム以上するきゅうりを収穫ハンドでつかみ、傷がつかないよう優しくコンテナに置くことができる。また、ロボットのため10時間連続稼働させることが可能で、日中の暑さでハウスに人が入らない時間帯に収穫作業を行うことができる。1分あたりの収穫数は0.3個だ。

ロボットによる収穫の様子

ハウス内に敷設されたレール

【きゅうり収穫ロボット仕様】
導入費:ロボット単体購入も可能。パッケージ販売、レンタルについてはお問い合わせフォームより連絡。
重量:60Kg
サイズ:W1,110×D680×H1,520mm
電源 バッテリー(交換式):24V 23.7Ah
充電時間:約5時間
収穫性能:0.3個/分
移動スピード:100m/30~45分
連続稼働時間:約10時間(ただし畝間移動は手動)
1日の収穫量:200本/10時間
通知機能:不具合発生、稼働完了時スマホへ通知

なお、きゅうり自動収穫ロボットを導入するには、30a以上の大規模施設園芸ビニールハウスでつるおろし栽培を行っていること、また地面が平らでつる下ろしの主枝がベッド横に綺麗にまとめられていることが要件となっている。

株式会社タカミヤ 岡本氏

AGRIST株式会社 清水氏

きゅうり収穫ロボット使い方レクチャーの様子

4月15日に行われた納品セレモニーでは、10名以上の関係者が集い、きゅうり収穫ロボット最新動画の放映、テープカット、記念撮影が行われ、3Dプリンタで作成したきゅうり収穫ロボット模型が記念品として贈呈された。この様子は、AGRIST公式YouTubeに公開されている。  

セレモニーダイジェスト

左から増渕氏、清水氏、宮崎氏
 
VP of Engineering エンジニア統括最高責任者 清水 秀樹氏のコメント
きゅうり自動収穫ロボットの開発は、AGRISTの技術力とタカミヤ様や協力農家との共同作業が生んだ成果です。皆様のフィードバックと協力により、私たちはより実用的で効率的なロボットを創り上げることができました。開発過程では何度も繰り返し検証を行い、最終的にはシンプルな構造でありながら実用的なロボットを製品化することができました。しかし、私たちはこれをゴールとは考えていません。これは新たなスタートです。AGRISTは未来の農業をデザインすることを目指しています。そして、私たちは今後も技術開発を進め、より多くの農業者が抱える課題解決に貢献できるよう努力して参ります。
きゅうり収穫ロボット 設計開発リーダー 増渕 武氏のコメント
ロボットの開発において、一番困難であったことは収穫ハンドの開発でした。このロボットが対象としているつる下ろし方式の栽培では、きゅうりが主枝のすぐ近くに実がなります。収穫の際に誤って主枝を傷つけてしまうと、切った先が成長しなくなり大きな損失となってしまうため絶対に避けなければなりません。茨城県や宮崎県の農家の皆様、そして今回導入して頂いたタカミヤ様の圃場で繰り返しテストをさせて頂き、この課題を解決できる収穫ハンドを開発できたことが、今回の実導入という大きな一歩に繋がったと感じております。今後も開発と改良を続けて、人の介入を最小限にし、自律的に稼働し続ける収穫ロボットの実現を目指して参ります。
きゅうり収穫ロボット ソフトウエアエンジニア 宮崎拓真氏のコメント
このロボットの開発において、実際の農場環境における試験は不可欠でした。オフィス内での模擬環境では、実際の収穫作業におけるさまざまな課題や制約を正確に再現することは難しく、実地導入では我々が事前に作成した収穫モーションが実環境ではつるに引っ掛かりやすいという問題点を発見しました。この課題を克服するために、日々農場でモーションを改善し、その結果、収穫効率の大幅な向上を実現することができました。 これからも、実地での試験を通じて得られるフィードバックを大切にし、より優れた農業ロボットの開発に取り組んで参ります。農業DXの推進に貢献するために、技術革新と改善を続けていく所存です。 

AGRISTは遠隔操作機能を搭載したロボットでリモート収穫体験を全国各地で行ってきた。自宅にいながら収穫作業ができるなど、外出することが難しい人でも農作業が可能になるという。

今後は、2025年に茨城県常総市に新設する自社農場での展開を予定しており、ロボット開発だけでなく、AIやロボットを活用したアプローチを自社農場で実施することで農業DXを推進していくという。
 

AGRIST株式会社
https://agrist.com


株式会社タカミヤ アグリ事業部
https://takamiya-aisai.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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