NEC X、農業自動化ソリューションを開発するVerdi社への技術支援として農業ICTプラットフォーム「CropScope」を連携

日本電気株式会社(NEC)の子会社であるNEC Xは、農業自動化ソリューションを開発・提供するカナダのスタートアップVerdi Expeditions Inc.に出資し、 NECグループによる技術支援、事業シナジー創出を目指す。

その一環として、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」との連携を行い、今年の夏よりカゴメ株式会社と共同で、加工用トマト栽培の実証実験をポルトガルで実施する予定だ。


既存インフラを活用した灌漑の最適化


NEC Xはシリコンバレーを拠点に新規事業創出を推進している企業。一方、カナダのブリティッシュコロンビア州に本社を置くVerdi Expeditions Inc.は、2020年に設立されたスタートアップ企業で、モジュール型灌漑システムと灌漑最適化ソフトウェアを提供している。

今回のVerdi社への出資は、NEC Xが運営するベンチャースタジオプログラム「Elev X! Boost」の一環として行われるものだ。

NECグループは、これまでCropScopeの開発や、カゴメとの合弁会社「DXAS Agricultural Technology LDA(ディクサス アグリカルチュラル テクノロジー)」のポルトガルでの設立を通じて、環境に優しく収益性の高い営農の促進に取り組んできた。

CropScopeは、センサーや衛星写真を活用した作物の生育状況や土壌の状態を可視化するサービスと、AIを活用した営農アドバイスを行うサービスで構成された農業支援ソリューションだ。

AIを含むプラットフォームが、水や肥料の最適な量と投入時期を指示するため、農家は栽培技術の巧拙に関わらず、収穫量の安定化と栽培コストの低減が期待できるとともに、地球環境に優しい農業を実践できるという。

左:Verdi Block Controller、右:Verdi Micro-Block Controller
左:Verdi Block Controller、右:Verdi Micro-Block Controller

近年、地球温暖化による異常気象が世界中で頻発し、多くの農家が干ばつ被害に苦しんでいる。人口増加と気候変動に伴う水不足も深刻な問題となっている。

しかし、現在の農業インフラであるバルブ・ポンプ・インジェクターなどは、1950年代以降ほとんど進化しておらず、作物や畑の場所ごとに最適化されていない。そのため、水や肥料の最大60%が浪費され、収穫されるべき作物の最大20%が畑に残ってしまっているという。

これらの課題に対し、Verdi社が提供するスマートデバイス「Verdi Block Controller」と「Verdi Micro-Block Controller」は、既存の農業インフラに取り付けることで、水や肥料の散布などの処理を行えるというもの。ワイヤレスで耐久性も高く、密集した畑や高温下など、過酷な環境下でも稼働する。

Verdi Dashboard
Verdi Dashboard

水や肥料の投与などはVerdiダッシュボード上で管理が可能で、NDVI画像や気象観測所データへのアクセス、労務管理、レポート作成に至るまで、農業管理に必要な業務を一元化する。実際に、作物のヘルスケアをパーソナライズすることで、2023年には顧客の水使用量を3000万リットル以上節約することに成功したという。

今後、ポルトガルにおける加工用トマト栽培において、Verdi社の技術とNECのCropScopeを組み合わせた栽培管理を行う。この技術連携により、Verdi社は加工用トマトをはじめ、対応作物の拡張が可能となるとしている。

NEC X, President 兼 CEO, 松本 眞太郎氏 コメント
気候変動や資源不足という課題に世界が直面する中で、効率的かつ持続可能な新しい農業インフラが必要不可欠です。Verdi社とNECグループの連携により、農業分野における新たな価値を創出できることを嬉しく思います。NECグループはCropScopeやDXAS Agricultural Technologyという形でこれらの課題に積極的に取り組んできました。NEC Xとしても技術、投資の両面で貢献を続けていきます。
Verdi, 共同創業者 兼 CEO, Arthur Chen(アーサー チェン) 氏 コメント
NEC Xとのパートナーシップは、単なる投資ではなく、私たちのプラットフォームを強化し拡大することに焦点を当てています。CropScopeとの技術連携によって、農業の効率性と持続可能性を飛躍的に向上させることができることを期待しています。わたしたちは共に未来の農業を形作り、より持続可能で収益性の高い農業を実現していきます。


NEC X
https://nec-x.com/about-nec-x/team/
Verdi Expeditions Inc.
https://www.verdi.ag/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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