「イミダクロプリド」など農薬等5品目の残留基準を見直しへ 9月18日までパブリックコメントを募集中

消費者庁は2026年8月20日、イミダクロプリドなど農薬等5品目について、食品中の残留基準を改正する案を公表した。9月18日までパブリックコメント(意見募集)を実施する。

今回変更が検討されているのは、農薬を散布するときの希釈倍率や使用回数ではなく、農産物などの食品に残留できる農薬等の上限値(残留基準値)となっている。



イミダクロプリドなど5品目、多くの農産物で基準値を変更


対象は、農薬・動物用医薬品の「イミダクロプリド」と、農薬の「クロロタロニル」「トルフェンピラド」「ピリフルキナゾン」「ボスカリド」の計5品目。

改正案では食品ごとに基準値の引き下げ、引き上げ、新規設定などが行われる。主な変更例は以下のとおり。
※数値は「改正前→改正後」、数値の単位はppm。

農薬食品改正前改正後方向
イミダクロプリド 米(玄米 1 0.08
キャベツ 0.5 2
10 30
クロロタロニル 米(玄米) 0.1 0.05
小麦・大麦・ライ麦 0.1 0.01
たまねぎ 0.5 2
にんにく 10 0.04
トルフェンピラド キャベツ 0.3 0.2
たまねぎ 0.02 0.09
にら 9 6
ピリフルキナゾン 小豆類・えんどう・そら豆 0.05 0.01
なす 0.2 0.1
きゅうり 0.1 0.07
ボスカリド だいこん類の葉 40 50
レタス 40 60
しょうが 0.05 2
レモン 10 5
すもも 10 2

今回の改正案には基準値の引き下げだけでなく、適用拡大などに伴う引き上げも含まれている。残留基準値は「数値が低いほど農薬そのものの安全性が高い」という単純な指標ではなく、作物残留試験や摂取量、安全性評価などを踏まえて食品ごとに設定される。

告示は2026年12月中旬を予定。基準値を引き下げる品目などについては、現場への影響を考慮して告示から1年後に施行し、それ以外は原則として告示日から施行される予定となっている。


なぜ残留基準が変わる?


今回の見直しは、食品中の農薬等について、国際基準や国内外での使用状況、食品安全委員会による食品健康影響評価などを踏まえて、現在の基準を更新するもの。2026年5月19日の食品衛生基準審議会農薬・動物用医薬品部会でも改正案が了承されている。

例えばイミダクロプリドでは、農薬取締法に基づく再評価や適用拡大申請などを受けて基準が検討された。クロロタロニルでは、ポジティブリスト制度導入時に暫定的に設定された基準の見直しも含まれている。

なお、残留基準は、農薬を登録された方法で使用した際の残留濃度などをもとに、長期・短期の摂取量がADI(許容一日摂取量)やARfD(急性参照用量)を超えないことを確認して設定される。

そのため、基準値の引き下げが直ちに「これまでの基準では健康に危険だった」ということは意味しない。逆に、引き上げが単純な安全基準の緩和を意味するものでもないため、誤解のないようにしたい。


「安全基準」に関するパブコメは通常の手続き


今回のパブリックコメントによる意見募集は、食品の残留基準という行政上のルールを改正するため、行政手続法に基づき、正式決定前に案を公表して広く意見を募る手続きのひとつ。

提出された意見は行政機関が十分に考慮することとされており、試験データの不足や制度上の不整合、施行上の問題などが指摘された場合には、パブコメを受けて案が修正されることもある。ただし、科学的な安全性そのものを意見の多寡によって決めることはない。

農家にとっては、今回の公表によって直ちに農薬の使用方法が変更されるわけではない。実際の防除では、引き続き使用する農薬の登録内容を確認し、対象作物、使用量・希釈倍率、使用時期、使用回数などを守ることが重要だ。


参考資料
e-Govパブリック・コメント 「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する告示(案)」(農薬等(イミダクロプリド等5品目)の残留基準の改正)に関する御意見の募集について
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235110033&Mode=0
消費者庁「概要(イミダクロプリド等)」
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000319578
消費者庁「別紙(イミダクロプリド等)」
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000319579
食品衛生基準審議会 農薬・動物用医薬品部会資料
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000319580
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。