【2026年8〜9月米価情報】「相対取引価格」は上昇も、店頭価格は下落か……9月の新米登場でどう変わる?

この記事の注目ポイント
  • 7月の「相対取引価格」は3万2486円/60kgと、前月比4%の“上昇”
  • 一方、スーパーの米価は5kg3220円まで“下落”、前年同期比でも13.8%安
  • 9月以降は「新米」の供給増で、米価がさらに安くなる可能性

農林水産省が2026年(令和8年)8月19日に公表した2025年(令和7年)産米の7月の相対取引価格は、全銘柄平均で玄米60kg当たり3万2486円。6月から1181円、4%上昇しました。

一方、スーパーの店頭を見ると、米の価格は2026年に入ってから下落しています。農水省の最新POSデータでは、8月3~9日の平均販売価格は5kg当たり3220円。前年同期より13.8%安く、2026年2月上旬と比べても約1000円下がっています。

「米価が上がったのか、下がったのか」──数字だけを見ると分かりにくい状況ですが、実はこの2つは取引される場所も、対象となる米も、集計する時期も異なる価格です。農家が今後の販売を考えるうえでも、それぞれを分けて見る必要があります。



7月の相対取引価格は3万2486円、前月から4%上昇


2025年産米の7月の相対取引価格は、全銘柄平均で3万2486円/玄米60kgでした。

6月の3万1305円から4%上昇し、前年同月の2万6918円と比べると21%高い水準です。2025年産米の出回りから7月までの年産平均価格も3万5451円で、2024年産米の年産平均2万5179円を41%上回っています。

ただし、ここで押さえておきたいのが7月の取引量です。

7月の相対取引数量は7.9万トンで、2025年産米のこれまでの取引数量全体の約4%。農水省自身も、2025年産米の取引が終盤に入っているため、「7月の取引価格が令和7年産米の取引全体に与える影響は小さい」としています。

つまり、「7月に4%上がった」という数字だけを見て、米市場全体が再び値上がりに転じたと捉えるのは避けたほうがよさそうです。


スーパーでは5kg3220円まで下落


一方、消費者が実際に目にする店頭価格は、違う動きをしています。

農水省が全国約1000店舗のスーパーのPOSデータからまとめた8月3~9日の平均販売価格は、5kg当たり3220円(税込)でした。前週からは22円上がったものの、前年同期と比べると517円、13.8%安くなっています。

農水省によると、スーパーの平均販売価格は2026年1月以降、下落基調に転じています。2月2~8日には4204円だった全平均販売価格が、8月3~9日には3220円となっており、半年ほどで984円、約23%下がった計算です。

直近の商品別では、

区分8月3~9日の平均販売価格
銘柄米 3,255円/5kg
ブレンド米等 3,079円/5kg
全体平均 3,220円/5kg
となっており、販売数量に占める割合は銘柄米が80%、ブレンド米等が20%。銘柄米も前年同期比23.2%安と、「安いブレンド米が増えたから平均価格だけが下がっている」という状況でもありません。

もっとも、店頭価格は2025年の4000円台から大きく下がったものの、価格高騰前の水準まで戻ったわけではありません。長期的な動きと、直近数カ月の下落は分けて考える必要があります。


なぜ「相対取引価格は上昇、店頭価格は下落」になるのか


この2つの数字が逆方向に動く大きな理由は、同じ「米価」でも測っているものが違うためです。

相対取引価格は業者間の価格


相対取引価格は、全農などの出荷業者と卸売業者等との間で行われる取引の価格です。

農水省が公表する価格には、運賃、包装代、消費税相当額が含まれ、1等米の価格を取引数量で加重平均しています。農家が受け取る概算金や買い取り価格とも、スーパーで売られる精米5kgの価格とも直接は一致しません。

一方、POSデータは消費者がスーパーのレジで実際に購入した価格です。

そのため、

生産者 → 集荷業者 → 卸売業者 → 小売店 → 消費者

という流通の異なる段階の価格を比べていることになります。

集計している時期のズレ


今回発表された相対取引価格は7月中の取引です。一方、店頭価格の最新データは8月3~9日の販売実績です。

卸売段階で契約された米が精米され、その後、小売店へ納品されて店頭で販売されるまでには時間があります。逆に、小売店では以前に仕入れた在庫の値下げや販売施策などによって、卸売段階とは異なるタイミングで価格が動くこともあります。

そのため、相対取引価格と店頭価格が毎月同じ方向へ動くとは限りません。

店頭には銘柄米以外の商品も並ぶ


相対取引価格は2025年産の産地・品種・銘柄ごとの取引を集計したものです。

しかし、店頭では銘柄米に加え、複数の原料米を使ったブレンド米やPB商品なども販売されています。農水省のPOS統計でも、この違いを分けて集計しています。

「2025年産米の卸売段階の価格」と「スーパーで販売された米全体の平均価格」では、そもそも商品の構成が異なるわけです。

店頭価格下落の背景には、米の供給環境の変化も


もう一つ、価格を見るうえで押さえておきたいのが需給です。

農水省によると、2025年産の主食用米等の生産量は747万トン。2024年産の679万トンから増えました。また、2026年6月末の民間在庫量は243万トンで、前年6月末の155万トンから大幅に増えています。2025年7月から2026年6月までには、政府備蓄米23万トンも供給されました。

これらの数字を組み合わせてみると、前年に比べて市場にある米の量に余裕が生まれていることは、店頭価格が下がりやすくなっている背景の一つと見ることができます。これは需給データから読み取れる市場環境についての推測です。


いよいよ9月から、2026年産新米が店頭に……米価はどうなる?


9月以降は、2026年産の新米が本格的に出回ります。2026年6月末の民間在庫は前年より増えており、店頭価格もすでに下落傾向です。現在の需給環境が続けば、秋にかけて米価には下押し圧力がかかりやすいとみられます。

それを見越して、JAなどが農家から新米を買い取る際の概算金の価格も、地域や品種によって異なるものの、2025年産を大きく下回る価格が出始めています

消費者にとっては、在庫が豊富な今の状態は「令和の米騒動」での異常な値上がりから、手ごろな価格に落ち着いたと考えるでしょう。

しかし、生産者側からすれば、肥料などのコストや労働力の分をやっと回収できる価格になってきた、という声も多くありました。そのため、想定よりも大幅に概算金が下がり、苦しい状況に追い込まれているという声も聞こえてきます。

同時に、前年から高値で仕入れていた流通業者にとっても、利益を乗せて買ってもらうことが難しいことから、立ち行かなくなる会社も出てきているようです。

今回公表された3万2486円/60kgは、あくまで取引終盤に入った2025年産米の価格です。次の焦点として、9月以降に本格化する2026年産米の相対取引価格が、現在の店頭価格の下落をどこまで反映するか。そして、各地の概算金がどれくらいの水準になるかに注目していく必要があります。


参考資料
農林水産省「令和7年産米の相対取引価格・数量について(令和8年7月)」
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/kikaku/260819.html
農林水産省「米に関するマンスリーレポート(令和8年8月号)の公表について」
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/kikaku/260819_1.html
農林水産省「スーパーでの販売数量・価格の推移(POSデータに基づき作成、全国・週次)」
https://www.maff.go.jp/j/nousan/kokumotu/ksppos.pdf
農林水産省「米の需給見通しについて」(令和8年7月)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/20260728/siryo3/sanko1.pdf
農林水産省「令和8年産水稲の西南暖地における早期栽培等の10a当たり収量の前年比見込み及び平均比見込み(7月15日現在)」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/pdf/suitou_260715.pdf
農林水産省「相対取引契約数量の推移」
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/kikaku/attach/pdf/260819-4.pdf

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。