稲作の作業環境を変える「水田区画整理」 制度・補助金・地域事例を整理

稲作の現場では、圃場の形や配置が作業効率に影響する場面が少なくありません。田んぼの出入り口の段差で機械が入りにくかったり、細かくわかれた圃場を移動するたびに時間がかかったりすることもあります。水管理でも、圃場ごとに水位を確認して回る手間が重なり、日々の作業計画に影響するケースも見られます。

こうした圃場条件を見直す抜本的な方法の一つが、水田の区画整理(圃場整備)です。農地の形状や水路、農道などの基盤を、農家が効率的に作業しやすいように整える取り組みで、農林水産省の農地基盤事業として全国各地で進められてきました。

近年は担い手への農地集約が進み、一経営体あたりの管理面積が拡大する地域も増えています。こうした状況の中で、作業しやすい圃場環境を整えることは、将来の営農を考えるうえで重要なテーマの一つです。

本記事では、「水田区画整理」の仕組みや進め方、国の補助制度、地域ごとの取り組み例を紹介します。



「水田区画整理」とは


 水田区画整理とは、細かくわかれた圃場をまとめて形を整え、農道や用排水路などの農業基盤を整備する取り組みです。圃場の形状や水路配置が整理されることで、機械作業の流れがつくりやすくなり、作業計画も立てやすくなります。

日本の水田は、過去の農地制度や地形条件の影響を受け、10a前後の小区画が点在する地域が多く見られます。そのため、トラクターや田植機などの大型農業機械を使用する際に旋回回数が増えたり、圃場間の移動時間が長くなってしまう傾向があります。

こうした課題に対応するため、複数の田んぼを統合して区画を広げるとともに、農道や水路の配置を見直し、圃場の高低差を整える工事が行われます。さらに、水はけ改善を目的として暗渠排水を設置するケースもあります。

「水田区画整理」の主な作業内容
主な取り組み作業内容
区画拡大 小さな圃場をまとめ、作業しやすい形に再配置
農道の整備 農業機械が移動しやすい道路を確保
用排水路の改良 水路の配置や構造を見直す
暗渠排水 圃場の排水性を改善
圃場整地 高低差を整え、作業性を向上

現在の農地基盤事業では、30a〜1ha程度の区画が一つの目安とされています。ただし、実際には地域の地形や農地条件によって異なり、平坦な地域では大区画化が進みやすく、中山間地域では地形を生かした圃場づくりが重視される傾向があります。

すべての地域で大区画化を目指せるわけではありませんが、「農地バンク」を中心として、できる限り農地を集約していこうという動きが少しずつ進んでいます。

参考:農林水産省「農地整備」


田んぼの区画をまとめる取り組みはどう進むのか


圃場条件の見直しは、基本的に地域単位で進める農業基盤事業です。多くの場合、土地改良区や自治体が中心となり、地域の農家や地権者と協議を重ねながら計画が作られます。

はじめに、地域の農地配置や圃場条件を確認し、どの範囲をどのように整備するか方向性を整理します。その後、行政や関係機関と連携しながら事業申請や設計を進め、計画が承認されると工事が始まります。圃場の再配置、農道整備、水路改修などが段階的に進められます。

圃場の配置が変わる場合には、地権者の理解と合意形成が欠かせません。説明会などを通じて情報共有を行いながら、地域全体で計画を進めていくのが一般的です。整備後の土地配置を決める「換地(かんち)」と呼ばれる調整も行われ、関係者が納得できる形で進めることが前提となります。

こうした事業には実施主体の違いがあります。数十ha規模のまとまった面積を対象とした整備は、都道府県が主体となる「県営(道営)土地改良事業」として進められることが多く、地域単位で取り組まれます。

一方、小規模な農地改良や地域の実情に合わせた取り組みは、市町村や土地改良区などが主体となる団体営事業として進められます。複数の農家や地権者がまとまって取り組む形です。

また、「大区画化等加速化支援事業」のように、個人の農家と地権者の合意をもとに進められるケースもあります。地域全体の動きを待たず、比較的小さな単位から取り組むことも可能です。


区画整理に利用できる主な補助制度


水田の区画整理は地域全体の基盤づくりに関わる事業であるため、国や自治体の補助制度を活用できます。主な制度は次の通りです。

制度名内容実施主体補助金の出所
農業競争力強化農地整備事業 区画拡大・農道・水路など農業基盤の改良 主に都道府県 農林水産省+地方負担
農地中間管理機構関連農地整備事業 農地集約と圃場改善を一体実施 都道府県・市町村 農林水産省補助
農地耕作条件改善事業 暗渠排水や畦畔除去など小規模改良 市町村・土地改良区 国補助+地方負担
大区画化等加速化支援事業 畦畔除去等による大区画化を担い手が実施 農業法人 国補助

 大規模な圃場再編では、「農業競争力強化農地整備事業」が中心となります。農道整備や排水路改修などを含めた総合的な基盤整備が行われ、担い手への農地集積や生産効率の向上につながる仕組みです。いわゆる県営圃場整備の多くは、この制度に基づいて進められています。

農地中間管理機構(農地バンク)と連動した事業では、農地集約と圃場改善を同時に進めることが可能です。農地バンクが借り入れている農地を対象に整備が行われるため、個別の負担や調整を抑えながら基盤を整えやすい点が特徴です。

また、暗渠排水や畦畔除去といった比較的小規模な改良には、「農地耕作条件改善事業」が活用されます。地域の実情に合わせて機動的に取り組めるため、段階的に圃場条件を見直す際の入り口として利用されるケースも多く見られます。

こうした従来の制度に加えて、近年注目されているのが「大区画化等加速化支援事業」です。この制度は、地域全体での大規模な整備を待たず、担い手が主体となって圃場の大区画化を進める取り組みを後押しするものです。

対象となるのは、畦畔の除去や簡易な整地などにより、複数の区画を一体的に利用できるようにする取り組みです。従来の圃場整備に比べて工事規模が比較的小さく、調整範囲も限定されるため、条件が整えば短期間での実施も可能とされています。

この制度の大きなポイントは、担い手が主体的に関われる点です。地域全体での合意形成を前提とした整備とは異なり、関係する地権者との合意が得られれば、柔軟に取り組みを進めることができます。

そのため、「一部の圃場から改善したい」「作業効率に影響している場所だけ見直したい」といった現場の課題にも対応しやすく、実態に即した進め方が可能です。

目安としては1ha以上の大区画化を目指すケースが多く、作業効率の向上や機械利用の最適化につながる手段として位置づけられています。従来の制度では時間や調整の面でハードルが高かった場合でも、こうした手法を組み合わせることで、段階的に圃場環境を整えていく動きが広がりつつあります。

制度の選択は、地域の条件や経営規模、目指す営農スタイルによって異なります。大規模な再編を行うのか、小規模な改善を積み重ねるのか、あるいは機動的に進めるのか。それぞれの特徴を踏まえながら、自分の地域に合った進め方を検討することが重要です。

参考URL
農林水産省「農地整備」
農林水産省「農業競争力強化農地整備事業」
農林水産省「農地中間管理機構(農地バンク)」
農林水産省「農地耕作条件改善事業」
農林水産省「大区画化等加速化支援事業(要綱)」


地域によって異なる水田基盤づくり



農地の基盤づくりは地域によって進め方が異なります。地形や気候、営農規模などの条件によって適した方法が変わるためです。

北海道では、平坦な地形を生かした1ha以上の大区画圃場が広がり、大型農業機械による効率的な営農が進んでいます。

東北や北陸では、30a〜1ha程度の圃場が多く、排水対策を重視した圃場改良が行われてきました。

関東や東海の平野部では、農道整備や水路改修を中心とした基盤改善が見られます。一方、中山間地域では大区画化が難しいケースも多く、農道整備や排水改善など管理のしやすさを重視した取り組みが進められています。

参考:北海道庁


将来の営農を見据えた圃場環境づくりを、今から


水田の区画整理は、圃場の形や水路を見直すことで営農環境の改善につながる取り組みです。補助制度を活用しながら地域単位で進められ、地域条件に応じた農地基盤づくりが各地で検討されています。

まずは地域の圃場整備の状況や利用できる制度を確認し、土地改良区や自治体へ相談することが出発点になります。地域の営農条件に合った方法を知ることが、将来の農業経営を考える第一歩となります。


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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