4〜5月に行う「初夏の柑橘防除」ガイド|病害虫対策・薬剤選び・ドローン防除のコツ
毎年4〜5月は、柑橘類にとって新芽が伸び始め、開花し、小さな実がつき始める時期へと進む重要な季節です。この時期の防除は、単に目先の病害虫を抑えるだけでなく、夏以降の被害発生量や防除回数を大きく左右する分岐点となります。
一方で、気温の上昇、降雨の増加、樹木の成長リズムの変化が同時に進む季節でもあるため、冬季や真夏の防除と同じ感覚では失敗しやすいのも初夏防除の特徴です。
今年の柑橘を実りあるものとするために、4〜5月の初夏柑橘防除の現場で役立つ知識と実践ポイントを整理してみましょう。

初夏(4〜5月)の柑橘防除は、「病害虫の立ち上がり期」と「薬剤が作物に悪影響を与えやすい時期」が重なる点が最大の特徴です。この時期の判断が遅れると、夏場に被害が一気に拡大し、防除回数やコストが増える原因になります。
気温が15℃を超え始める4月以降、越冬していた病原菌や害虫が本格的に活動を開始します。発生初期は被害が目立ちにくいものの、この初動対応が遅れると爆発的に被害が増える可能性があります。
この時期に見られる春芽や花、幼果は非常にデリケートで、薬剤の影響を受けやすい器官です。防除効果だけを優先すると、落花・落果や葉焼けなど、生育に悪影響を及ぼす可能性があります。薬剤の選択や希釈倍率の厳守は必須ですが、それだけでなく、高温時や強日射下での散布は避けるなどの運用上の配慮も必要です。
(1)も(2)も、農家としてはできるだけ迅速に対応しなければならない状況です。しかし、地域にもよりますが、4〜5月は降雨間隔が不規則で、せっかく散布してもすぐに雨によって流されてしまうケースも少なくありません。そのため、散布後も効果が続くような薬剤を意識した防除計画が重要になります。
こうした条件のもとで行う4〜5月は、天候などに気をつけつつ、しっかり効果を発揮できるよう、事前の準備と臨機応変な対応が求められる時期といえます。

では、4〜5月の防除ではどんな病害虫が出やすいのでしょうか。これらを事前に把握しておくことが、初夏防除の効果を最大限発揮するための判断材料になります。
発生を確認してから動くのではなく、発生しやすい病害虫を想定した予防的防除が基本です。
この時期に問題になりやすいのは、雨と新梢の多さを好む病害虫です。特に以下は、多くの産地で共通して注意が必要です。
初夏の病害虫は、被害が目で見える頃にはすでに密度が高まっているケースが多くあります。定期的な園内巡回と、地域の病害虫の発生見込み情報・予報を組み合わせることで、防除タイミングの精度が上がります。

地上散布(動力噴霧器やホースを使った散布)は、初夏防除の基本であり、今も多くの園地で中心的な役割を担っています。ただし、新梢が増えるこの時期は、散布方法次第で効果に大きな差が出ます。
その場しのぎの薬剤選択ではなく、年間を通した体系防除(年間を通じた計画的な防除)を意識することが重要です。
また、同一系統薬剤の連用は、薬剤抵抗性の発達を招く恐れがあります。薬が効く仕組み・作用の種類(作用機作)の異なる薬剤をローテーションして使用することもポイントです。殺虫剤と殺菌剤を混ぜて使う場合についても、事前確認を徹底する必要があります。
新梢が多い時期は、どうしても樹冠の外側だけに薬液が付着しがちです。内側や下部の葉までしっかり行き届くよう、散布方法を工夫する必要があります。
例えば、ノズルの角度・噴口圧の調整を行う、樹の内側・下部を意識した散布を行うといったことは、現場では当たり前に行われていますが、わずかな被害が周辺にも拡大しないように慎重に行う必要があります。
さらに、防除効果を高めるために、園内環境の整備も欠かせません。風通しや日当たりを改善することで、病害虫の発生環境そのものを抑制できます。勢いよく伸びすぎた不要な枝(徒長枝)の整理や、木の内部の風通しをよくするための対策なども同時に行うことで効果が高まります。
ただ、こうした地上散布の効果を最大限に発揮しようとするほど、作業の手間と時間も増えていくのが現実です。近年では、そうした負担を補う選択肢として、ドローン防除の導入が柑橘産地でも広がりつつあります。

人が手作業で行う地上散布に対して、労力や作業時間が大幅に改善できる可能性があるドローン防除の導入が、近年柑橘栽培の現場でも進んでいます。
特に4〜5月は、ドローンの特性が活きやすい時期とも言われています。
まず、短時間で広範囲を処理できるドローンは、天候に左右されやすい初夏防除と相性が良い技術です。降雨前後のわずかな晴れ間でも素早く対応できます。
また、花や実がデリケートな開花期でも、動力噴霧器やホース、作業者の体が樹体に触れるような心配がないため、後々収量への影響も抑えられます。そもそも急傾斜の園地、高密植園の場合は、人が散布するよりも圧倒的な省力化が可能です。
一方で、注意すべき点もあります。葉量が急増する初夏は、樹冠内部への薬液の付着量が不足しやすいため、飛行高度やスピード、散布量の設定はドローン専用の基準を必ず守ることが大前提です。また、風の影響を受けやすいドローン散布は、風で薬液が流されることを防ぐためにも、風が穏やかな早朝や夕方に作業するのが基本です。
さらに、樹高が高い成木や、複雑に枝が入り組んだ樹形の園地では、ドローンだけでは樹冠内部まで薬液が届きにくいケースもあります。こうした園地では、地上散布との組み合わせを前提に計画を立てるのが現実的です。
タイトル:導入前に確認しておきたいポイント
本文:飛行条件や散布基準、地上散布との併用方法など、園地条件に応じた活用事例をまとめています。自園に当てはまるか確認してみてください。
ボタン:ドローン防除の活用事例を確認する
地上散布とドローン散布はどちらかひとつだけに限定せずに、状況に応じて併用することで防除効率と効果を高めることができます。
例えば、黒点病などのような広域・予防的な防除にはドローンを使い、ハダニ・アザミウマなどの局所防除は地上散布を行うといったかたちで、それぞれが得意とする場所への散布を組み合わせるといいでしょう。

4〜5月に行う柑橘の初夏防除は、その年の病害虫管理の成否を左右する重要なタイミングです。発生初期を逃さない観察力、薬害を防ぐ知識、そして地上散布とドローンを組み合わせた柔軟な防除体系が、高品質・安定生産につながります。
そのため、単なる定期的な作業としてとらえるのではなく、年間を通した柑橘栽培・管理を見据えた戦略的な取り組みとして初夏防除を位置づけることが、猛暑や病害虫の流行が続くこれからの時代にはますます重要になるでしょう。
とはいえ、ドローンの導入には初期費用や操作習得の時間がかかるのも事実です。まずは、初夏の予防防除など特定の作業だけを専門パイロットに委託するところから始めるのも、現実的な一歩です。地上散布で培ったノウハウを生かしながら、ドローンをうまく組み合わせることで、防除の精度と効率を着実に高めていただければと思います。
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一方で、気温の上昇、降雨の増加、樹木の成長リズムの変化が同時に進む季節でもあるため、冬季や真夏の防除と同じ感覚では失敗しやすいのも初夏防除の特徴です。
今年の柑橘を実りあるものとするために、4〜5月の初夏柑橘防除の現場で役立つ知識と実践ポイントを整理してみましょう。
4〜5月に行う柑橘防除の特徴とは
初夏(4〜5月)の柑橘防除は、「病害虫の立ち上がり期」と「薬剤が作物に悪影響を与えやすい時期」が重なる点が最大の特徴です。この時期の判断が遅れると、夏場に被害が一気に拡大し、防除回数やコストが増える原因になります。
(1)病害虫がいっせいに活動を始める
気温が15℃を超え始める4月以降、越冬していた病原菌や害虫が本格的に活動を開始します。発生初期は被害が目立ちにくいものの、この初動対応が遅れると爆発的に被害が増える可能性があります。
(2)春芽・花・幼果が多く、薬害の影響を受けやすい
この時期に見られる春芽や花、幼果は非常にデリケートで、薬剤の影響を受けやすい器官です。防除効果だけを優先すると、落花・落果や葉焼けなど、生育に悪影響を及ぼす可能性があります。薬剤の選択や希釈倍率の厳守は必須ですが、それだけでなく、高温時や強日射下での散布は避けるなどの運用上の配慮も必要です。
(3)天候が不安定で散布適期が短い
(1)も(2)も、農家としてはできるだけ迅速に対応しなければならない状況です。しかし、地域にもよりますが、4〜5月は降雨間隔が不規則で、せっかく散布してもすぐに雨によって流されてしまうケースも少なくありません。そのため、散布後も効果が続くような薬剤を意識した防除計画が重要になります。
こうした条件のもとで行う4〜5月は、天候などに気をつけつつ、しっかり効果を発揮できるよう、事前の準備と臨機応変な対応が求められる時期といえます。
初夏防除で必ず押さえておきたい病害虫と基礎知識
では、4〜5月の防除ではどんな病害虫が出やすいのでしょうか。これらを事前に把握しておくことが、初夏防除の効果を最大限発揮するための判断材料になります。
発生を確認してから動くのではなく、発生しやすい病害虫を想定した予防的防除が基本です。
初夏に特に注意したい主な病害虫
この時期に問題になりやすいのは、雨と新梢の多さを好む病害虫です。特に以下は、多くの産地で共通して注意が必要です。
- 黒点病:降雨とともに感染が広がりやすく、症状が出る前の予防散布が重要
- そうか病:春芽・幼果期の防除を逃すと被害が残りやすい
- ミカンハダニ:気温上昇とともに急増し、初期対応が遅れがち
- アブラムシ類:新梢に集中し、ウイルス病媒介にも注意
- チャノキイロアザミウマ:開花期〜幼果期に果実被害が集中
防除判断は「発生初期」がカギ
初夏の病害虫は、被害が目で見える頃にはすでに密度が高まっているケースが多くあります。定期的な園内巡回と、地域の病害虫の発生見込み情報・予報を組み合わせることで、防除タイミングの精度が上がります。
地上散布で行う初夏防除の効果的な進め方
地上散布(動力噴霧器やホースを使った散布)は、初夏防除の基本であり、今も多くの園地で中心的な役割を担っています。ただし、新梢が増えるこの時期は、散布方法次第で効果に大きな差が出ます。
体系防除を意識した薬剤選択
その場しのぎの薬剤選択ではなく、年間を通した体系防除(年間を通じた計画的な防除)を意識することが重要です。
また、同一系統薬剤の連用は、薬剤抵抗性の発達を招く恐れがあります。薬が効く仕組み・作用の種類(作用機作)の異なる薬剤をローテーションして使用することもポイントです。殺虫剤と殺菌剤を混ぜて使う場合についても、事前確認を徹底する必要があります。
散布ムラをなくす
新梢が多い時期は、どうしても樹冠の外側だけに薬液が付着しがちです。内側や下部の葉までしっかり行き届くよう、散布方法を工夫する必要があります。
例えば、ノズルの角度・噴口圧の調整を行う、樹の内側・下部を意識した散布を行うといったことは、現場では当たり前に行われていますが、わずかな被害が周辺にも拡大しないように慎重に行う必要があります。
防除と同時に行いたい園内環境の改善
さらに、防除効果を高めるために、園内環境の整備も欠かせません。風通しや日当たりを改善することで、病害虫の発生環境そのものを抑制できます。勢いよく伸びすぎた不要な枝(徒長枝)の整理や、木の内部の風通しをよくするための対策なども同時に行うことで効果が高まります。
ただ、こうした地上散布の効果を最大限に発揮しようとするほど、作業の手間と時間も増えていくのが現実です。近年では、そうした負担を補う選択肢として、ドローン防除の導入が柑橘産地でも広がりつつあります。
ドローンを活用した柑橘の初夏防除|メリットと注意点
人が手作業で行う地上散布に対して、労力や作業時間が大幅に改善できる可能性があるドローン防除の導入が、近年柑橘栽培の現場でも進んでいます。
特に4〜5月は、ドローンの特性が活きやすい時期とも言われています。
まず、短時間で広範囲を処理できるドローンは、天候に左右されやすい初夏防除と相性が良い技術です。降雨前後のわずかな晴れ間でも素早く対応できます。
また、花や実がデリケートな開花期でも、動力噴霧器やホース、作業者の体が樹体に触れるような心配がないため、後々収量への影響も抑えられます。そもそも急傾斜の園地、高密植園の場合は、人が散布するよりも圧倒的な省力化が可能です。
ドローン防除で注意すべきポイント
一方で、注意すべき点もあります。葉量が急増する初夏は、樹冠内部への薬液の付着量が不足しやすいため、飛行高度やスピード、散布量の設定はドローン専用の基準を必ず守ることが大前提です。また、風の影響を受けやすいドローン散布は、風で薬液が流されることを防ぐためにも、風が穏やかな早朝や夕方に作業するのが基本です。
さらに、樹高が高い成木や、複雑に枝が入り組んだ樹形の園地では、ドローンだけでは樹冠内部まで薬液が届きにくいケースもあります。こうした園地では、地上散布との組み合わせを前提に計画を立てるのが現実的です。
タイトル:導入前に確認しておきたいポイント
本文:飛行条件や散布基準、地上散布との併用方法など、園地条件に応じた活用事例をまとめています。自園に当てはまるか確認してみてください。
ボタン:ドローン防除の活用事例を確認する
地上散布との上手な使い分け
地上散布とドローン散布はどちらかひとつだけに限定せずに、状況に応じて併用することで防除効率と効果を高めることができます。
例えば、黒点病などのような広域・予防的な防除にはドローンを使い、ハダニ・アザミウマなどの局所防除は地上散布を行うといったかたちで、それぞれが得意とする場所への散布を組み合わせるといいでしょう。
初夏防除を「戦略的な作業」に
4〜5月に行う柑橘の初夏防除は、その年の病害虫管理の成否を左右する重要なタイミングです。発生初期を逃さない観察力、薬害を防ぐ知識、そして地上散布とドローンを組み合わせた柔軟な防除体系が、高品質・安定生産につながります。
そのため、単なる定期的な作業としてとらえるのではなく、年間を通した柑橘栽培・管理を見据えた戦略的な取り組みとして初夏防除を位置づけることが、猛暑や病害虫の流行が続くこれからの時代にはますます重要になるでしょう。
とはいえ、ドローンの導入には初期費用や操作習得の時間がかかるのも事実です。まずは、初夏の予防防除など特定の作業だけを専門パイロットに委託するところから始めるのも、現実的な一歩です。地上散布で培ったノウハウを生かしながら、ドローンをうまく組み合わせることで、防除の精度と効率を着実に高めていただければと思います。
初夏防除を、無理のない体制で進めるために
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