4〜5月の水稲は畦畔で差がつく|雑草の初期管理で押さえたい3つのポイント

田植え前後のこの時期、代かきや移植準備に意識が向きがちですが、同時に気になり始めるのが畦畔(けいはん)の草です。特に5月は気温の上昇とともに草の伸びが急加速し、「気づいたときには一気に繁っていた」という場面も少なくありません 。

畦畔は一度管理が遅れると、その後の作業負担に影響しやすい場所とも言えます。今回は、多忙な繁忙期だからこそ実践したい、「あとの自分を楽にする」ための畦畔管理について解説します。


なぜ「5月の初動」が重要なのか



畦畔は単なる田んぼの仕切りではありません。漏水や越水を防ぐ「水管理」、日々の見回りや防除を行う「作業動線」、そして害虫の発生を抑える「圃場環境の維持」など、水稲栽培において重要な役割を担っています 。

草が伸び放題になると足元が見えず、小さな崩れや水漏れに気づきにくくなります。足場が悪ければ毎日の見回り自体が億劫になってしまいます。

雑草が稲の害虫の生息場所となる場合もあります。特に注意したいのが斑点米カメムシ類への影響です。カメムシ類は出穂前の時期、畦畔に生育するイネ科雑草で増殖。その後、水田へ侵入し、穂を吸汁することで斑点米を発生させ、検査等級の低下につながることが知られています。

出穂の10〜15日前までに畦畔の草刈りを終えておくことが、カメムシ類の密度抑制に有効とされています。このため、5月の初動管理で早めに一度整えておくことが、後々の防除体系とも連動してきます。

参考:宮城県「斑点米カメムシ類の発生状況と防除対策」

さらには、5月に入り日照時間と気温が上昇すると、雑草の生育スピードが上がります。このタイミングを見誤って放置してしまうと、以下のような負担につながりやすくなります。

  • 草が伸びることで作業時間が長くなる
  • 硬くなった草で作業負担が増える
  • 再生が早まり、除草回数が増える場合がある

草が伸びきる前の初動が、その後の作業全体に影響しやすい時期ともいえます。

繁忙期と重なる中でどこまで手を入れるかは悩ましいところですが、今のうちに一度処理しておくことで、後々の管理が楽になり、余裕につながるでしょう。

続いて雑草の初期管理で押さえたい3つのポイントを具体的に紹介します。


ポイント① 草が伸びきる前の「リセット」と「見える化」


初動の草刈りは、単なる作業ではなく点検しやすい環境づくりとしての意味合いがあります。「見やすく、歩きやすい」状態にすることを一つの目安にするとよいでしょう。

草が低いうちに一度整えておくことで、作業時間を短縮できるだけでなく、畦の状態が「見える化」されます。草を刈った直後は、畦の状態確認を行うのに適したタイミングです。以下のポイントを重点的にチェックしましょう。

  • モグラの穴や小さな亀裂
  • 畦の沈み込みや崩れ
  • 水がにじみやすい箇所

こうしたポイントは、草が繁る前の方が把握しやすくなります。初期段階で一度確認しておくことで、その後の対応がしやすくなる場合があります。


ポイント② 「優先順位」を決める


雑草の成長スピードが早い時期ですが、すべての畦を一度に対応するのが難しいときは、優先順位を決める方法もあります。

一つは、圃場に生えている草の種類で決める考え方です。

【最優先】斑点米カメムシ対策としてのイネ科雑草

水稲栽培で特に注意したいのが、お米の等級を下げてしまうカメムシです。前述したように、カメムシは出穂前の時期、畦畔のイネ科雑草で増殖し、その後田んぼへ侵入します。出穂の10〜15日前までに刈り取りを終えるのが基本ですが、早めに一度処理しておき、土台を整えておきましょう。

ただし、出穂期以降の草刈りはカメムシを水田に追い込む逆効果となるため、時期の見極めが重要です。

【その他】背丈が出やすい草(ススキ、カヤなど)や匍匐性の雑草など

他の雑草は、現場では草丈・繁茂状況・作業効率などを総合的に判断して対応することが現実的です。

特徴としては、背丈が出やすい草は成長が比較的早く、放置すると機械が入りにくい状態になる場合があります。このような雑草が多い場所は、太く硬くなる前に刈り取りましょう。早いうちに処理しておくことで、その後の再生を穏やかに抑えられる場合があります。

匍匐性の雑草は、背は低くても、横に広がって地面を覆います。畦の形状が見えにくくなることで、状態の把握が遅れる場合もあるため、状況に応じて早めに対応するケースもあります。


もう一つの考え方は、作業効率を重視して、場所によってメリハリをつける方法です。まずは以下の場所を優先して手を入れてみてください。

・水管理の要所(水漏れが心配な圃場)

水漏れリスクのある場所は、手遅れになると修復に大きな労力を要します。早めに草を刈って「見える化」し、補修が必要かどうかを見極めましょう。

・面積の広い場所(後回しにすると手に負えなくなる圃場)

広大な圃場の畦畔は、草が伸びきってからでは作業時間がふくらみます。

・よく通る道(見回りや防除で頻繁に使う畦)

日常的な見回りや今後の防除作業で使う動線は、常に「歩きやすい状態」にしておきましょう。



ポイント③ 「畦塗り・補修」とセットで土台を固める


4〜5月は草刈りだけでなく、「畦塗り」や「補修」の時期でもあります。草刈りを「単体」の作業と考えず、これらとセットで行うと効率的です。

漏水リスクの把握:弱い部分をこの時期に特定し、補修しておくことで、水管理が本格化する時期の不安を解消できます。

作業基盤としての畦畔:足場を整えることは、今後の防除や追肥作業の効率、そして安全性にもつながります。

この段階で対応しておくことで、その後の水管理が進めやすくなる場合も。また、足場を整えることは、防除や追肥作業の効率や安全性にもつながります。畦畔を作業の基盤として捉える視点も重要です。


今のひと手間が「差」をつくる


4〜5月の畦畔管理で大切なのは、「あとの管理を楽にするための下準備」という意識です。

  1. 畔を点検可能な状態にする
  2. 優先順位をつけて作業を進める
  3. 畦の補修とセットで行い、水漏れのない「強い土台」を作る

また、外部のプロに任せるのも一つの手です。初回の刈り払いのみ依頼する、手が足りない圃場だけ対応するなど、部分的に依頼することもできます。

どの程度手をかけるかは、圃場条件や作業体制によって異なります。忙しい5月ですが、ぜひ自分の圃場に合った戦略的な管理を取り入れてみてください。

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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