なぜねぎの定植がボトルネックに? ねぎ栽培の人手確保の現実【4〜5月期・ネギの事例】

ねぎ栽培において、5月前後の作業は一年の中でも特に負荷が高い時期のひとつとされています。

中でも定植は、作業量が集中するうえ、その後の生育や品質にも影響しやすい工程です。

一見単純な作業に見えるかもしれませんが、実際には植え付けの深さ、間隔といった細かな精度が求められ、誰でも同じようにこなせるわけではありません。どうしても人手の「数」だけでなく「質」も重要になってきます。

今回は、ねぎ栽培において「定植」がボトルネックになりやすい背景を整理しながら、人手確保や作業設計の考え方について紹介します。



ねぎの定植作業の実態とは? “量と精度”を同時に求められる工程


ねぎの定植は単に苗を植えるというだけにとどまりません。畝立てや溝切りといった事前準備から始まり、苗の運搬、植え付け、覆土といった工程で進みます。大規模に栽培している場合には、1日に大量の苗を扱うこともあり、作業量としては非常に大きなものになります。

こうした中で特徴的なのが、「スピード」と「精度」の両方が求められる点です。

例えば、植え付けが浅すぎたり深すぎたりすると、その後の生育にばらつきが出ます。また、株間が不揃いになると、収穫時の規格(市場出荷基準など)にも影響することがあります。

機械化も進んでおり、ねぎ用の移植機が活用される場面も増えていますが、多くの場合は人が補助しながら作業を進める半自動的な形が一般的です。そのため、機械を導入していても人手が不要になるわけではなく、一定の作業負担は残ります。


なぜ人手不足が起きるのか “ピーク集中”という構造


定植期の人手不足は、単純に人が足りないというよりも、「作業が短期間に集中する」ことが主な要因のひとつと考えられます。

苗の生育状況や天候の影響を受けるため、適期に一気に作業を進める必要があり、結果として数日から数週間に負荷が集中します。

さらに、複合経営が多い地域では、同時期に他の作物でも作業が重なることが多く、地域全体で労働力の取り合いになるケースも見られます。スポットで人材を確保しようとしても、作業に慣れるまでに時間がかかるため、即戦力として機能しにくい側面も。

同じ作業でも、経験者と未経験者では作業スピードや仕上がりに差が出ることがあり、結果として人員配置の難しさにつながっています。


面積拡大を阻む“労力の壁”


ねぎ栽培において規模拡大を考える際も、課題のひとつとして挙げられるのが定植期の労力です。栽培面積が増えると、それに比例して定植作業の量も増えていきますが、人手の確保が追いつかない場合、作業が滞るリスクがあります。

そのため、実際の現場では「栽培できる面積」ではなく「無理なく定植できる面積」を基準に作付けを調整するケースも見られます。また、作期をずらすことで負荷を分散しようとする取り組みもありますが、品種や地域条件によっては調整が難しい場合もあります。

このように、定植期の労力は経営判断にも影響する要素のひとつといえます。



定植後まで見据えた工程設計の考え方


定植は単独の作業ではなく、その後の初期管理と一体で考える必要があります。例えば、活着を促すための水管理や、欠株が出た場合の補植、初期の雑草対策などが続きます。これらを含めて工程を設計しないと、結果的に作業が後手に回ることもあります。

作業設計のひとつの考え方としては、「作業の分解」と「標準化」が挙げられます。どの工程を誰が担当するのか、どの程度の精度で作業を行うのかをあらかじめ整理しておくことで、未経験者でも一定の作業ができるようになる可能性があります。

近年は作業計画の見える化や進捗管理にデジタルツールを活用する事例も報告されています(参考:いわてアグリベンチャーネット「岩手県スマート農業事例集」)。


定植に使われる農機とスマート農業の現状


ねぎの定植に関連する機械としては、移植機や管理機が代表的です。移植機は作業の効率化に寄与する一方で、苗の供給や姿勢の調整などに人手が必要な場面も多く見られ、完全自動化はまだ実現していません。

また、スマート農業の分野では、GPSを活用した直進アシスト機能や、作業記録のデジタル化といった技術が導入されつつあります。これにより、畝の精度向上や作業の再現性向上が期待されます(参考:埼玉県スマート農業導入ナビぷらっと・さいたま「直進アシスト機能付きトラクタの導入によるねぎの生産安定に向けた省力化・軽労化への取組」)。

ただし、こうした技術はすべての農家に広く普及しているというよりは、導入が進んでいる段階といえるかもしれません。また、移植機などと同じく、機械化やデジタル化と人手による作業を組み合わせた運用が前提となっている事例が多く見られます(参考:農林水産技術会議「スマート農業実証プロジェクト」)。


人材確保が難しいなら「外注」という選択肢も


定植期の人手確保については、パートやアルバイトの活用、地域内での応援といった方法が取られることがありますが、短期間で必要な人数を確保することは容易ではありません。また、教育や段取りにかかる負担も無視できない要素です。

そのため、近年では一部の作業を外部に委託するという考え方も選択肢として挙げられます。例えば、機械作業のみを委託したり、定植作業全体を外部に任せたりするケースです。

メリットとしては、繁忙期の過度な労働負荷を分散できること。さらに、機械の購入費や人件費などの「固定費」を、状況に応じた「変動費」に変えられる点が挙げられます。

しかし、コスト面に加え、地域全体が繁忙期となるため、希望する時期に作業を確保するためのスケジュール調整が重要になります。

このように、外注には課題もありますが、繁忙期の負荷を分散する手段として検討する農家も増えているようです。

ねぎ栽培における定植は、作業量と精度の両立が求められる工程であり、短期間に負荷が集中しやすい特徴があります。そのため、人手不足は構造的に発生しやすく、単純な人員確保だけでは対応が難しい場合もあります。

工程設計の見直しや人材確保の工夫に加え、機械化や外注といった選択肢を組み合わせながら、自身の経営に合った形を検討していくことが重要になりそうです。

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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