農家直販・EC・道の駅、どこが向いている? JA以外の販売方法を手数料・手間・利益・リピーターで比較

農産物を少しでも有利に販売したいと考えたとき、普段卸しているJA以外で新たな候補になるのが農家直販、EC、道の駅などです。

販売価格や手数料だけを見ると、「中間コストが少ないほど利益が残る」と考えたくなります。しかし、販売にも人の手と時間がかかります。接客や袋詰め、ECの受注処理、梱包・発送、道の駅への追加納品まで含めれば、JAが担っている作業の分、利益が少ないとまでは言えない面もあります。「どこで高く売れるか」だけでは、本当に自分の経営に合った販路なのか判断できません。

さらに最近は、販売した後のデータを次の出荷に生かしたり、一度購入した人とSNSなどでつながったりする選択肢も増えています。

農林水産省によると、令和6年度の農産物直売所の年間販売額は1兆1,344億円で、前年度比0.7%増でした。ECが普及した現在でも、リアルな直売所は大きな販売チャネルです。

では、直販、EC、道の駅を「手数料」「手間」「利益」「リピーター」の4つから比べてみましょう。

販路 コストを見るポイント 主な手間 利益を左右するポイント リピーターづくり
農家直販 決済、売り場など 陳列、接客、会計 販売に使う時間 顧客と直接つながりやすい
EC 手数料、決済、梱包、送料 撮影、受注、梱包、発送 1回の注文額と配送費 再購入につなげやすい
道の駅 施設ごとの販売条件 袋詰め、値付け、納品、補充 売れ残りや納品回数 POPや生産者名などで訴求


農家直販|強みは「手数料の低さ」より顧客との接点



自宅や農園などでの直販は、自分で価格や売り方を決めやすい方法です。一方、有人販売なら接客や会計にも時間を取られます。

そこで見落としたくないのが、売上ではなく「販売に使った1時間当たりに、いくら利益を残せたか」です。

もうひとつの強みは、購入者と直接つながれることです。SNSやECサイトにつながるQRコードなどを用意しておけば、「来週から新米を販売」「次の収穫は○月」といった情報を届け、次の購入につなげることもできます。

直販は「その場で売る場所」だけでなく、固定客をつくる入口として考えることもできます。


EC|手数料より「1箱当たりの採算」を見る


ECは地域を越えて販売できますが、商品代金以外のコストも見逃せません。

特に大きいのが配送です。2025年に千葉県が公表した流通調査でも、産直ECは拡大傾向にある一方、配送費が市場拡大の課題として挙げられています。また、定期便やギフト対応といった販売方法も近年の傾向として整理されています。

ここで考えたいのは、「何個売れたか」ではなく「1箱にいくらの商品を載せられたか」です。

単価の低い農産物を1品だけ発送するより、旬の詰め合わせ、ギフトセット、定期便などにできれば、1回の発送に対する商品金額を増やせます。

ECでは、

売価-販売手数料-梱包資材-自分が負担する送料

までを1箱ごとに見た方が、実際の採算をつかみやすくなります。

さらに梱包に10分か20分かかるのかまで記録すれば、「売れているのに忙しいだけ」という状態にも気づきやすくなります。


道の駅|売上データを「次に何を持っていくか」に使う



道の駅や直売所は、自分が店頭に立ち続けなくても販売できます。ただし、袋詰め、値付け、納品、売れ残りの回収などの作業は発生します。

ここで注目したいのが、販売データの活用です。

現在は、POSと連携して売れ行きや在庫をスマートフォンなどで把握し、追加出荷の判断に使える仕組みもあります。九州農政局でも、販売実績の通知や在庫確認などを行う直売所向けシステムが紹介されています。

農研機構の「道の駅なかせん」での実証では、AIカメラとスマートフォンを使って売り場の状況を生産者に伝える仕組みを導入し、実証期間中の農作物売上が導入前の同期間に比べ34%増えました。ただし、この数字だけでシステム単独の効果とは断定できず、実証でも購入者への直接的なアプローチが課題として挙げられています。
出展:農研機構「スマート農業実証プロジェクト 道の駅なかせん 実証成果資料より
つまり、これからの直売所選びでは手数料だけでなく、「何がいつ売れたかを生産者側で確認できるか」も一つの判断材料になります。


「どこで売るか」ではなく、販路をどうつなぐか


ここまで見ると、3つの販路にはそれぞれ違う役割があります。だからこそ、どれかひとつに決める必要もありません。

例えば、
道の駅で初めて買ってもらう
→ 生産者名を覚えてもらう
→ SNSなどでつながる
→ 贈答品や旬の商品をECで再購入してもらう

という流れも考えられます。

大切なのは、「道の駅なら手数料○%」「ECなら○%」という比較だけで販売先を決めないことです。

販路を見直すなら、まず次の4つを書き出してみましょう。

  1. 1回の販売・発送でいくら利益が残るか
  2. そのために自分や家族が何分働いているか
  3. 何が、いつ、どれだけ売れたか把握できているか
  4. 一度買った人に、もう一度商品を届けられるか

特に1と2を組み合わせると、「販売作業1時間当たりにいくら利益を残せているか」という、手数料だけでは見えない数字が出てきます。

収穫の忙しい時期には道の駅を中心にし、贈答需要が高まる時期だけECを強化するなど、季節によって販路を変える方法もあります。

販売先に絶対的な正解はありません。だからこそ、売価だけでなく、自分たちの時間、物流、販売データ、次の購入まで含めて考える。そこまで見えるようになると、「一番高く売れる場所」ではなく、「自分の経営で一番利益を残しやすい売り方」を選びやすくなります。


参考資料

農林水産省「令和6年度 6次産業化総合調査結果」
千葉県「持続可能な千葉県農林水産業に向けた実態調査業務 調査結果」
農研機構「スマート農業実証プロジェクト 道の駅なかせん 実証成果資料」
農林水産省「農産物直売所におけるPOSレジシステムの導入(JA福岡市)」


SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。