農機の冬季メンテナンス|春の故障を減らす5つの整備ポイント

収穫や秋作業が終わり、農機をきれいに洗って倉庫へ。「今年も問題なく動いたから、これで冬支度は終わり」としている農家も多いでしょう。

しかし、農機の冬季メンテナンスでは、単にきれいな状態で保管するだけではなく、春の繁忙期に「エンジンがかからない」「動きがおかしい」「部品交換が必要」とならないよう、冬のうちに故障の芽を潰しておくことが大事です。

さらに、トラクター、コンバイン、田植機では長期保管の方法も同じではありません。いざ使おうとした時に故障が発覚すると、その後の作業全体に遅れが生じたり、作業が止まってしまっては死活問題です。

そこで今回の記事では、次のシーズンにトラブルなく動かせるように、水稲向け農機の冬季メンテナンスで農家自身が行うべきポイントを5つご紹介します。農閑期に入る前の今だからこそ、必須項目をしっかりおさらいしておきましょう。



1.「春に止まると困る農機」を優先的に整備する


農機が1〜2台なら、一台ずつ整備していけば済みます。しかし、規模拡大でトラクターや田植機、コンバイン、作業機が増えてくると、「どれも一応見た」という管理だけでは点検漏れが起こりやすくなります。

管理の目が行き届かなくなってきた場合は、この冬に一度、保有農機を一覧にしましょう。このとき、「止まったら次の作業も止まる順」=優先度をつけるのがコツです。

例えば、田植え初日に必要になる田植機、今年異音が出ていたトラクターは早めに整備へ回します。一方、次回使用まで余裕があるコンバインなどの農機は後まわしでも構いません。

冬季整備を「全機を順番に点検する仕事」から、「繁忙期の停止リスクを未然に防ぐ仕事」へ変えるという考え方です。

あわせて、もし故障修理が発生した場合には、請求書の金額、故障で作業が止まってしまった時間も残しておくと、翌年の整備費と突発修理の負担を比べて、どれくらいの予算を確保しておけばいいかもわかるでしょう。

その際、いざという時に頼れる委託先の目処を今の時期に確保しておくと安心です。稲刈りの際にコンバインが使えない、といったことのないように、セーフティネットも準備しておきましょう。

記録する項目 見る内容
型式・機体名 どの機械か
アワーメーター 使用時間はどの程度か
今季の違和感 異音、始動性、油漏れ、動作など
修理・交換履歴 前回何を直したか
次回使用時期 春のいつ必要になるか
冬の処置 自分で整備/販売店へ依頼
整備費・修理費 過去の点検・修理にいくらかかったか
作業停止時間 故障で何時間作業が止まったか


2.機種によって違う燃料・保管方法に注意


冬季保管で思い込みが出やすいのが燃料です。

クボタによる長期格納に関する資料でも、最近のトラクターについては燃料タンクを満タンにして保管し、タンク内の水滴やサビを防ぐ方法を案内しています。一方、少し古い田植機などに多いキャブレター式エンジン車については、燃料タンクや気化器内のガソリンを抜くよう案内しています。

このように、エンジンの燃料噴射式によって、冬季保管時の扱いが異なるのです。機種ごとにメンテナンス方法が変わってくるため、取扱説明書まで見ておくのが冬季整備の基本です。

さらに、トラクター特有の保管方法として、作業機(トラクターの後部に取り付けるさまざまな作業のための機械のこと。ハローやプラウといった装置)は下ろして格納する、田植機では植付部を下ろすなど、機種ごとに保管方法の指定があります。

点検や整備を行う前に、それぞれの作業機取扱説明書を確認しましょう。


3.清掃時に故障や劣化のサインを探す


年に1度の使用ながら、短期間に過酷に使われるコンバインは、わらくずや泥だけでなく、機体内部に残った穀粒まで取り除くことが大切です。クボタによると、残留穀粒の除去はネズミ害防止のための長期格納時の点検項目として挙げられており、配線の被覆についても点検を勧めています。

シーズンオフに入る前の洗車直後は、農機の異常を見つける好機とも言えます。

泥を落としたら油のにじみが出ていないか。わらくずを取り除いたらベルトやチェーンに傷みがないか。配線の被覆は傷んでいないか。塗装がはがれてサビが出始めていないかといったことをついでにチェックしておくと安心です。

ヤンマーでは、トラクターやコンバインの点検項目として、ボルトのゆるみ、燃料漏れ、配線被覆、ベルト・チェーン、クローラなども挙げています。

洗車して格納するだけではなく、洗った状態で機体をもう一周見る。 これだけでも、春までに直す箇所を拾いやすくなります。


4.格納後も放置せず、春前まで定期的に管理する


きちんと確認・整備も終えた後、「格納したら春まで触らない」という管理方法の方も多いでしょう。ただ、それでいざ動かそうとするとトラブルが起きた、というケースもよく聞かれます。

特にどんな農機でも必須のバッテリーは、使わなくても自然放電します。長期保管時にバッテリーを外して一度充電し、その後も定期的な充電管理を案内している農機もあります。

春にトラブルなく動かせるようにするために、冬季メンテナンスの時期は次の3回に分けてみましょう。

  • 格納時(10月〜12月頃):清掃、注油、燃料・冷却水、バッテリー処置、不具合の記録を済ませる
  • 保管中(1月〜3月頃):バッテリーなど長期保管中にも管理が必要な部分をチェック
  • 春前(4月〜5月頃):本番より前に始動・作動させ、修理や部品手配が必要なら対応する

春の作業初日に初めてエンジンをかけるのでは、こうしたトラブルに気づくのが遅い場合があります。冬にしまって終わりではなく、「春前に一度動かす日」までを予定表に入れておくのがおすすめです。


5.自分で整備する範囲と外部に任せる範囲を決める


冬季メンテナンスといっても、メカに強い方もいれば整備の知識や経験がない方もいるでしょう。すべてを自分で分解・整備する必要はありませんし、安全に関わる部分や専門的な整備は、取扱説明書に従い、販売店やJAなどへ依頼した方がいい場合もあります。

冬のうちに、

  • 自分で手入れする機械
  • 整備を依頼する機械
  • 春前にもう一度見る機械

を把握しておきましょう。

自分でできる範囲とプロに任せるべき範囲を分けておけば、時期に応じた点検を行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。



春に慌てないために、冬に整備→春に点検がコツ


農機の冬季メンテナンスは、地域による農閑期の期間によってできることも変わってきます。最低限やっておきたいのは、今季の違和感を記録し、機種ごとの最適な保管方法を押さえ、春までに直す農機を決めておくことです。

春に動かない機械の多くは、メンテナンス・点検・修理等によって防ぐことができます。たとえ機械自体の不具合であったとしても、事前にその兆候を見つけられれば、春の作業に間に合わせることは可能です。

一番大事なのは、春からの新しい農作業を予定通りに進められること。トラブルを防ぐために、まずは今年使った農機を並べ、「春に止まると困る順」に整備の予定を決めるところから始めてみましょう。そして本格的な春の農作業が始まる前、修理などが間に合うタイミングで、一度点検しましょう。

整備費と故障対応に使った費用・時間も一緒に残せば、次の冬には整備の成果を自分の農場の数字で振り返れます。

冬の数カ月をうまく使うことが、田起こしや代かき、田植えを予定どおり進めるための準備になります。


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参考資料
クボタ「農業機械 長期格納時のポイント」
クボタ「長期格納時に必要なトラクタのメンテナンス」
クボタ「取扱説明書検索」
ヤンマー「トラクターの作業前後の点検・お手入れ」
ヤンマー「コンバインの作業前後の点検・お手入れ」
ヤンマー「田植機の作業前後の点検・お手入れ」
クボタ「“止まらない”収穫を支える、プロの点検整備」(2025年9月30日)

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。