NTTグループ・北海道大学・岩見沢市、農機の広域自動走行と遠隔監視制御の新技術を開発

NTT(日本電信電話株式会社)、NTT東日本(東日本電信電話株式会社)、NTTドコモ(株式会社NTTドコモ)、国立大学法人北海道大学、岩見沢市(北海道)の5者は、農業機械の広域自動走行と遠隔監視制御を実現する新たな技術の開発に成功した。

日本の農業は、長期にわたる就農人口の減少や高齢化等を背景に深刻な人手不足に悩まされている。これからの日本農業を維持、発展させるためには、農家当たりの耕作面積を拡大して生産性を向上する必要があるといわれているが、農業者個人での取り組みには限界がある。

このような事情を背景に、NTT、NTT東日本、NTTドコモ、北海道大学、岩見沢市の5者は、2019年6月に産官学連携協定を締結。最先端の農業ロボット技術と情報通信技術を活用したスマート農業技術の研究および技術開発を進めてきた。

5社が開発した新技術は、最先端のロボット農業技術をベースに、第5世代移動通信方式(5G)、複数ネットワーク最適活用技術、高精度な測位技術の3つを用いて遠隔からの広域自動走行を実現するものだ。5社は、広域自動走行を実現する新たな技術の提供を通じて、農業の生産性向上に貢献したい考えだ。



農業機械の自動走行と遠隔監視制御を実現する技術の有効性を検証


新技術の開発に先立ち行われた実証実験では、農業機械の広域自動走行と遠隔監視制御を実現するために必要な技術の有効性が検証された。

図1 実証全体概要図

安定的な自動走行を可能にする複数ネットワーク最適活用技術


農業機械の安定的な自動走行を実現するための技術で、AIが通信品質の変動を予測して、通信品質が劣化する前に適切なネットワークに自動で変更することを可能にした。

岩見沢市内の農道で実施された実験では、通信を中断させることなくネットワークの変更に成功。将来の移動固定融合サービスにつながる新技術のひとつに位置付けられる。

複数のネットワークを跨る農機自動走行の実証結果
ネットワークの品質変化に応じた制御指示についての検証では、遠隔通信できないレベルにネットワーク品質が劣化した際にも、農業機械を安全に自動停止できるという結果が得られたという。

さらに、遠隔監視と画像解析など複数の用途でリアルタイム映像を同時利用できる技術等を用いることで、管理者の負担軽減につながる効率的な遠隔監視を確立した。

IOWN(ネットワーク系技術)関連技術を用いた実証内容

農家への負担を減らす「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」


農機が自動走行するためには、高精度な測位が必要だ。衛星信号を受信する固定局を農機の周辺環境に設置し、固定局から位置補正情報を配信することが求められるため、従来は費用面や運用面で農家の負担となることが課題とされていた。

今回の実証実験では、NTTドコモの高精度GNSS位置情報サービスを用いることで課題解決を目指した。「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」は、農家による固定局の設置が不要となる技術で、高精度の測位を実施し、有効性が確認されたという。

また、複数ネットワーク最適活用技術の関連技術であるクラウドGNSS測位技術を活用することで、クラウド上の計算リソースを使用した高精度な測位が実現。さらに農機のみならず、PCやタブレット等の機器でも同時に位置情報の利用が可能となる。

IOWN(クラウドGNSS測位技術)関連技術を用いた実証内容
実証における5者の役割は下記の通り。

NTT
・複数ネットワーク最適活用技術等の研究開発/技術協力
・NTTグループの技術の目利き/連携支援

NTT東日本
自動運転農機を制御するために5Gを活用した通信デバイスおよびオペレーション等の企画/検討
・AI環境の提供およびデータサイエンティストによる技術協力

NTTドコモ
・自動運転農機実証実験における5G通信環境の提供
・最先端のロボティクス・自動運転技術を活用したスマート農業への5G実装に向けた技術協力
・高精度位置情報(GNSS位置補正情報)配信に関する技術協力

北海道大学
・無人ロボットトラクター社会実装に向けた機能性要件/安全性要件に係る知見の提供
・無人ロボットトラクター遠隔制御技術の研究開発/技術協力

岩見沢市
・農業者や住民のICTニーズに係る知見の提供
・地方創生に向けた社会サービスの企画/検討

今後は、農業機械の広域自動走行と遠隔監視制御の安全性をさらに高めるため、衛星信号を用いて路面画像を認識する測位補完技術の実証実験を実施したい考えだ。

路面画像による位置推定概要(北大)
ドローンや草刈・収穫ロボット等農機以外への遠隔監視制御対象の拡大や、さらに高速・大容量・低遅延なIOWN関連技術の導入を図ることで、より多数の農機の遠隔監視制御や、より広域での農業の自動化を目指す。今後も産官学連携のメンバーを主体に農業分野の課題解決、競争力の強化に貢献していきたいとしている。


NTT(日本電信電話株式会社)
https://www.ntt.co.jp/
NTT東日本(東日本電信電話株式会社)
https://www.ntt-east.co.jp/
NTTドコモ(株式会社NTTドコモ)
https://www.nttdocomo.co.jp/
国立大学法人北海道大学
https://www.hokudai.ac.jp/
岩見沢市(北海道)
https://www.city.iwamizawa.hokkaido.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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