東北学院大学、「農地集約プログラム」の実証事業に参加する自治体を募集

東北学院大学の黒阪健吾研究室は、令和8年度(2026年)の農地集約プログラムに参加する市町村の公募を開始する。

農地集約プログラムは、農家の耕作意向をWebアプリケーションで収集し、マッチングアルゴリズムを用いることで効率的な農地の集約案を作成する取り組み。今回の実証事業では、このプログラムの効果をより客観的に検証するため、ランダム化比較実験という実験手法を用いて、プログラム実施地区と非実施地区における農地利用の変化を比較分析する。


科学的根拠に基づく農地政策のモデル構築を目指す


2025年に起きた「令和の米騒動」では、米の小売価格の高騰を憂慮する声と、農家の所得向上のためには妥当であるとする意見の対立が見られた。黒阪健吾研究室では、この問題を解決するためには、農地の点在により作業効率が低下する「分散錯圃(ぶんさんさくほ)」にあると考えている。また同研究室が行った事例研究では、農作業時間の10~15%が圃場間の移動に費やされているという結果も出ている。

農地を集約し移動時間を短縮できれば、同じ作付面積でも生産コストを下げることが可能で、安い米を求める消費者の願いと生産者の所得向上は、農地の効率化によって十分に両立できるとしている。


同研究室では、分散錯圃の実態を把握するため、現地ヒアリングや統計分析を継続して行ってきた。この成果として昨年度は全国1529市町村を対象に、耕作者ごとの農地集約状況を定量化・可視化する「米農地集約度分析ダッシュボード」を公開。

そこで明らかになったのは、大規模農家へ農地が集まる集積が進んでいる地域であっても、個々の農家の耕作地が特定のエリアにまとまったり、圃場どうしが隣接したりする集約には至っていないという実態だ。この「耕作面積が広い農家でも、耕作する場所はバラバラ」という現状こそが、生産性向上を阻む大きな壁となっていると考える。

このような分散作圃の解決を目的として、同研究室は一般社団法人Tannboと共同で、農家の耕作意向情報を専用Webアプリを通じて収集し、「耕作したい農地」と「耕作したくない農地」をマッチングさせる農地集約システムの開発を進めてきた。

農地集約システムが作成する集約案は、農家の耕作意向情報に基づいて計算されるため、参加者の納得が得やすいことが特徴だ。

そのため、この集約案をたたき台とすることで、市町村が地域計画を作成・ブラッシュアップする際の手間を大幅に短縮することが可能となる。また、対面による話し合いだけでは気付くことが難しい、潜在的な農地の交換可能性を発見できる。


今回行われる実証事業では、農地集約プログラムが分散錯圃の解決にどの程度有効であるのか、農家の生産活動にどのような影響を与えるのかについて、全国の市町村を対象とした大規模な検証を行う。

市町村単位で行い、ランダム化比較実験(Randomized Controlled Trial:RCT)と呼ばれる実験手法を用いる。これは、参加市町村にプログラムを実施する候補を2地区挙げてもらい、同研究室においてそのうち1つを実施地区、残り1地区を非実施地区としてランダムに選定するもの。そのうえで、実施地区と非実施地区の事業実施前後における農地利用の変化を比較する。


参加を希望する市町村は、農地集約プログラムのWebサイトに掲載された公募要項を確認のうえ、同サイトの電子申請フォームより申し込みが行える。また、質問や詳細を知りたい場合は個別でオンライン相談会を行うことも可能だという。

対象は米を生産している農地。市町村は2つの地区を候補として応募し、同研究室がランダムに選ぶ一方の地区で事業を実施する。事業にかかる費用は大学が負担するため、参加者の負担は不要だ。応募の〆切は2026年5月29(金)17:00までとなっている。

公募スケジュール
申請受付:2026年4月3日(金)~5月29日(金)
Web相談会:随時
審査期間:2026年6月中
採択通知:2026年7月上旬
契約締結:2026年7月下旬
事業開始:2026年8月以降


農地集約プログラム
https://www.nouchimatching.com/
RCT公募に関する特設ページ
https://www.nouchimatching.com/recruitment
米農地集約度分析ダッシュボード
https://naoki349.github.io/wagri_data_dashboard/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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