JA全農と農研機構、業務用米の多収新品種「ZR1」を開発

JA全農農研機構は共同で、いもち病に強く縞葉枯病抵抗性を持つ業務用の水稲早生多収品種「ZR1」を育成した。

10a当たり最大823kgの収量を確認


現在、JA全農では拡大する業務用需要に対応するため、実需者からのニーズに応えた契約栽培など生産提案型の事業を進めている。

しかし、水稲米を使用する実需者や米生産者からは、「良食味で加工適性の高い米を使用したい」、「作期分散が可能で栽培しやすい早生品種を提案してほしい」などの要望が多く寄せられていた。これを受け、JA全農は農研機構と共同で、耐倒伏性に優れ、病害に強く、多収で食味の良い早生品種の育成を進めてきたという。

「ZR1」の株標本
(左)ZR1(中央)あきたこまち(右)ゆみあずさ(撮影:農研機構)
https://www.zennoh.or.jp/press/release/2023/98309.html

水稲新品種「ZR1」は、いもち病と縞葉枯病に高い抵抗性を持つ東北以南向けの早生多収品種だ。

「あきたこまち」と「ゆみあずさ」と同程度の熟期で、標肥移植栽培(※1)の収量が10a当たり663kg、多肥移植栽培(※2)の収量が10a当たり767kgと、東北地域で広く栽培されている「あきたこまち」よりも約2割多く収穫できるのが特長。現地試験では、10a当たり最大823kgの収量と最大26g程度の玄米千粒重が確認されたという。

また、食味は「あきたこまち」と同程度の良食味となっている。

「ZR1」の籾および玄米(秋田県大仙市・令和4年産)
(左)ZR1(中央)あきたこまち(右)ゆみあずさ(撮影:農研機構)
https://www.zennoh.or.jp/press/release/2023/98309.html

品種名は、「今後の日本を担う若い世代(Z世代)をはじめとした生産者・消費者に広く浸透して欲しいJA全農(ZEN-NOH)が開発した究極のお米(Rice)の第1号」という想いに由来したもの。

葉いもちと穂いもちの両方に対して強い抵抗性を持つことから、関東以西を含む幅広い地域での栽培が見込まれている。

JA全農は、「中食や外食を中心とした業務用実需者に対して本品種の提案を進め、令和8年産までに東北・北陸・関東地域を中心に250ha、令和10年産までに1000ha以上の作付けを目指す」としている。

※1 窒素施肥量が基肥5kg/10a・追肥2kg/10aでの移植栽培
※2 窒素施肥量が基肥7kg/10a、追肥3kg/10a+2kg/10aでの移植栽培

JA全農
https://www.zennoh.or.jp/
農研機構
https://www.naro.go.jp/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
パックごはん定期便