NTTドコモとソフトバンクがZETAアライアンス加盟「第4回ZETA Alliance DAY」レポート

2019年6月14日、 LPWA通信規格ZETAの普及を推進し、超スマート社会への実現を目指すZETAアライアンスは、都内のレンタルスペースで「定期会員総会」ならびに「第4回ZETA Alliance DAY」を開催した。同会合には、過去最大規模となる約260名が参加し、2大キャリアの新規参入やワーキンググループ発足などについての報告があった。



NTTドコモとソフトバンクが新規加盟

同会合は、午前の部に「定期会員総会」、午後の部に「第4回ZETA Alliance DAY」を二部構成で開催した。ZETA Alliance DAYは、次世代LPWA通信規格ZETAの特性を活用し、新たなビジネスの創出や既存事業の改善、省力化や利便性の向上など、IoT社会全体の発展と推進に寄与するための取り組みだ。

そもそもLPWA(LPWAN)とはLow Power Wide Areaの略で、消費電力を抑えて遠距離通信を可能にする通信方式だ。IoTの構成要素のひとつで、次世代の規格としてZETAが注目を集めている。農業分野でも、IoTをはじめとするスマート農業を推し進めていく上で、欠かせない技術となる。

第一部の定期会員総会では、ZETAアライアンスの正会員であるPromoter会員とAdopter会員の紹介ならびに、株式会社NTTドコモとソフトバンク株式会社によるPromoter会員への新規加盟を報告。これを受けて、ソフトバンクは「自社の取り組んできたLPWANサービスとともにIoTの更なる拡大促進をZETAに期待する」との考えを示し、一方の新任理事企業に選出されたNTTドコモは「ZETAアライアンスに積極的な協力を図る」と意思表明した。

2018年6月にZETA開発元のZiFiSense Info Tech Co. Ltdと国内企業4社のわずか5社で設立したZETAアライアンスは、2019年にはドコモ、ソフトバンクの加入を含め計61組織となり、IoTに適したLPWA通信規格を巡る動きがますます熱を帯びてきている。

総会の決議事項としては、新任理事の容認のほか、会員規約の改正や事業計画、予算計画にまで及び、参加メンバーがZETAアライアンスへの期待と抱負を披露する中、満場一致で各事項を承認した。


loT事業を推進するワーキンググループ発足

ZETAアライアンスでは、ZETAを利活用した新しいビジネスの創出を目的に、導入分野やアプリケーションの調査・研究、IoT実証実験などを行うワーキンググループを設立している。総会ではZETAの全容に関する説明として、2019年にワーキンググループを3グループ新たに発足し、計6グループとなったことも発表した。

第1のグループは「エネルギービジネスWG(ワーキンググループ)」で、メガソーラーやバイオガス事業などを展開するプロスペックAZ株式会社が主査を務める。続く第2グループは、NTTドコモを主査とする「次世代スマート農業WG」で、同社が持つ農業分野へのICT導入ノウハウとZETAの強みを生かし、次世代型農業にフィットする技術の実証を行うことが目的だ。

また第3の「ZETag WG」は、最新の超薄型通信デバイスであるZETagを活用し、物流分野への応用を目指すグループで、凸版印刷株式会社を中心に据えている。

これらワーキンググループの発足後に、ソフトバンクが同グループへの参加を表明。NTTドコモ、ソフトバンクといった2大キャリアの参入により、今後はZETAの活用へ向けた研究活動やZETAアライアンスのビジネス展開がより活性化し、ZETAの普及にいっそう弾みがつきそうだ。

「第4回ZETA Alliance DAY」開催レポート

第二部の「第4回ZETA Alliance DAY」では、ZETAの将来性をメインテーマに、以下3件の特別講演を実施した。

「第4回ZETA Alliance DAY」特別講演
【講演1:4つのIoTについて】
東京大学大学院工学系研究科 IoTメディアラボラトリーディレクター 西和彦氏
【講演2:次世代のスマート農業におけるNTTドコモの取り組み】
株式会社NTTドコモ ライフサポートビジネス推進部 フードテックビジネス担当課長 大関優氏
【講演3:Zetag–what next?】
ZiFiSense Info Tech Co. Ltd 李卓群氏

ZETAの優位性とIoTビジネスの共創を熱弁

一番手は2019年に、ZETAアライアンスの正式アドバイザーに就任した西和彦氏が登壇。同氏は24歳でマイクロソフトの副社長に就任し、かつてはアスキーの元創業者として史上最年少で上場を果たすなど、日本IT業界の先駆者として知られる人物だ。

講演では「4つのIoTと普及への課題」をテーマに、情報通信ネットワーク業界に対する見解や成敗についてわかりやすく解説した上で、IoTビジネスにおけるZETAやLoRaの優位性についても言及。

さらに、2大キャリアによるZETAアライアンスへの加盟を重くとらえ、今後はLPWAを取り巻く環境が加速する中、技術やビジネスを共創していくことが重要になるとも語った。

「儲かる」スマート農業へ

続く2件目は「次世代のスマート農業におけるNTTドコモの取り組み」と題し、NTTドコモの大関優氏が弁舌を振るった。

同氏は、茨城県つくば市で行った実証実験を事例として、長距離通信、低消費電力、中継器によるメッシュアクセスの実現、コストという4つの側面からZETAの優位性を解説した上で、今後は水産業や養殖事業などへのソリューションが期待できることも示唆した。「農業向けのICT(情報伝達技術)、とりわけLPWA技術については、比較検証した結果ZETAが最有力との結論に至った」と明言。

ZETAアライアンスへの参加、新任理事企業の就任、次世代農業ワーキンググループの発足といったスピード感のある取り組みに加え、今後は加盟企業との連携をいっそう深めながら、「儲かる」スマート農業への実現を図る構えを強調した。

ZiFiSense社の李CEOが第二世代のZETAを披露

最後に、ZiFiSenseの李卓群氏が「ZETag-What next?」と題し、最新のZETAデバイスであるZETagの開発経緯や、実証実験に関する詳細なレポートを披露。今後の幅広い利活用が予想されるアプリケーションに関しても詳細な報告を行い、ZETAならびにZETagを活用したloTの本格的普及への見通しを述べた。

この日、最大で250人を収容するフクラシア品川クリスタルスクエアのセミナー会場は満席となり、企業陣によるZETAへの熱意と期待の高さを証明する結果となった。

同会合の成功を踏まえ、ZETAアライアンスは今後も組織の強化拡大とグループ全体の研究、実験、ビジネスへの展開を図り、さらなる挑戦を進めていく構えだ。


<参考URL>
ZETA
ZETAアライアンス
エネルギービジネスWG
ZETag WG
次世代スマート農業WG
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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