農業用ドローンへのアート装飾で農福連携に挑む「ハートフルドローン・プロジェクト」

山形県、宮城県を中心に農業用ドローンでの散布作業サービスを展開する企業組合「ジパング(山形県天童市:ドローンプラスと株式会社チック(XD仙台)が共同設立)」は、「就労支援事業所あるあーる」との農福連携のプロジェクト「ハートフルドローン・プロジェクト」をスタートさせた。


障がい者が描いたアートが農業用ドローンを彩る

農福連携とは、農業と福祉の両分野が抱えているさまざまな問題や課題の解決と、社会参画を促す取り組みのことを指す。
農林水産省では、厚生労働省と連携し「農業・農村における課題」や「福祉(障害者等)における課題」、双方の課題解決と利益(メリット)があるWin-Winの関係づくりを推進している。

農業の課題として担い手不足による農業従事者の高齢化、福祉分野の課題として作業工賃の向上が謳われている。
農福連携は今後、認知度と作業性能を見込んだスマート農業の推進が求められているのだ。

今回のプロジェクトでは、これまでの農福連携にはなかった農業用ドローンを活用した連携を中心に取り組んでいく。



すべての障がい者が農業に参加できる“アート”

「障がい者が直接農業に従事し、食材を確保する」という農業活動は、これまでも多く実践されてきたが、障がい者はすべてイコールのコンディションではない。
施設や利用者によって重軽の開きがあり、外に出られる人のみで農業を行うにしても、それには職員の介助が必要不可欠だ。
職員の人数が限られている中で、屋外でのサポートに職員を振り分けてしまうと、外に出ることができない入居者への支援のクオリティーが下がってしまうというデメリットも生じる。

同プロジェクトでは、利用者ひとりひとりに、思い思いの文字や絵(アート)をドローンのボディー部分に描いてもらい、その想いを乗せたアートドローンで水田圃場への追肥や防除を行う。

障がいの重軽に関係することなく、「すべての利用者が農業に参加できる」形を目指している。


さらに、同プロジェクトでは文字やアートを画いてくれた施設に、稲防除で得た収益の5%を寄付。利用者の作業工賃の取得にもつなげていく考えだ。

プロジェクトを運営するジパング側にも、農業用ドローンを活用することでスマート農業の推進と新規散布圃場の確保につながるというメリットがある。

アートドローンを依頼することで、生産者も障がい者への間接的支援ができる

アートドローンによる防除がそのまま障がい者支援に

「ハートフルドローン・プロジェクト」では、『五つのWin』で、Winが~ファイブ!として以下の標語を掲げている。

  1. 外に出ることができない入居者でも農業に参加でき工賃を得る又アップすることができてWin
  2. 行政も模索していた農福連携を新しいカタチとしてすすめられてWin
  3. 農業生産者も、これまでの水稲防除をジパングのアートドローンに切り替えることで、今までと同じ料金で間接的に障がい者へ支援ができてWin
  4. 散布圃場が増えることで、施設へお渡しする工賃が上がり、ジパングとしてはドローンとスマート農業の推進が進みWin
  5. 山形県産米「つや姫」に追肥することで、新しい農福連携のカタチを促進させた品種としてブランド力が向上しWin

今後もこの活動を継続し、山形県と宮城県だけではなく、東北、そして日本全国にも広げていく考えだ。

文字やアートを描く利用者の様子

プロジェクトにより行われた「つや姫ヴィラージュ」での防除(2019年7月6日)

今後の予定
8月中旬 アートドローンで水稲へ適期防除。(予定)
10月中旬頃 「つや姫ヴィラージュ」の収穫祭。そこにアートドローンを展示。施設へ作業工賃寄与(予定)

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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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