農研機構、大豆の灌水適期を通知する「大豆灌水支援システム」の一般利用を開始

農研機構は、大豆が乾燥ストレスを被る時期を推定して灌水適期をアラートで通知する「大豆灌水支援システム」の一般利用が開始されたことを発表した。

国産大豆の収量向上に貢献

大豆の収量を高めるためには湿害を防ぐだけでなく、乾燥ストレスを軽減させることが重要とされている。しかし、日本の大豆生産の現場で使用されている圃場は水はけの悪い水田転換畑が大部分を占めるため、湿害が発生する可能性が高く灌水に消極的な生産者も多いという。

農研機構が開発した「大豆灌水支援システム」は、日本全国の土壌情報を提供するWEBサイト「日本土壌インベントリー」、全国の日別気象データを1kmメッシュ単位で提供する「1kmメッシュ農業気象情報」、農業データ連携基盤「WAGRI」の3つを活用した大豆栽培専用の灌水支援システム。


大豆灌水支援システムの概要図
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/154332.html

「水分の蒸発散」・「降水」・「下方への排水」の3つの情報を参考に、大豆の成長に必要な水分量を予測するのが特長で、平均約10%の収量増加が見込めることが報告されている。

農研機構が採用している土壌水分推定原理
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/154332.html

開発に至る研究では、灌水を行っていない4つの圃場を対象に、土壌に含まれる水分量の予測値と実測値の比較を実施。その結果、実用上問題ない精度で運用できるデータが確認できたという。

大仙(水田転換畑)、盛岡(水田転換畑)、刈和野(畑地)、つくば(水田転換畑)の体積含水率の予測値と実測値を比較したグラフ
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/154332.html

現在、Web APIを取得しているのは株式会社ビジョンテックと株式会社オプティムの2社で、ビジョンテックが運営する栽培管理支援情報サービス「SAKUMO」に登録すれば一般の生産者でもすぐに利用できる。


日本土壌インベントリー
https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/
1kmメッシュ農業気象情報
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/naro/sop/134540.html
農業データ連携基盤WAGRI
https://wagri.net/ja-jp/
栽培管理支援情報サービスSAKUMO
https://sakumo.info/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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