農研機構、土壌の砕土率をリアルタイムで計測するシステムを開発
農研機構は、耕うん時の土壌の砕土率をリアルタイムで計測するシステムを開発した。これにより、作業効率の向上や作物の出芽率改善が期待されている。

近年、食料安全保障の観点から大豆や麦などの国内生産の重要性が高まっており、水田転換畑での作付けが進んでいる。これらの作物の生産性向上にはさまざまな要因が影響するが、収量の確保には、まず確実な苗立ちが重要で、出芽率の向上が必要となる。水田転換畑では砕土率が低くなる傾向があり、そのことが大豆の出芽率に影響するという。
砕土率とは、土壌中の土塊で長径が20mm未満の土塊が占める割合を重量ベースで表した数値のこと。砕土率が低い、つまり大きい土塊が多い状況だと、種子と土壌との密着が悪くなるため出芽率が下がり、収量にも影響する。過去のデータでは、砕土率70%程度で、最も高い出芽率が得られると報告されている。
従来、砕土率の計測は、人の手によりふるいを使って土塊を分離した後、重量を測る必要があり、農業現場で行われることはほとんどなく、作業者の経験と勘に頼っていた。そこで農研機構は、カメラ画像から簡易・迅速に砕土率を計測する技術の開発に取り組んできたという。
今回、その技術を自動化・高速化したことで、農業機械への搭載が可能となり、耕うん作業中にリアルタイムで砕土率を確認できるようになった。
図2 運転席のモニター表示例
このシステムは、カメラ、PC、GNSSおよびモニターから構成されている。カメラとGNSSアンテナをロータリーの後方に設置し、ロータリーで耕うん直後の土壌表面を高さ50cmから撮影。カメラが取得した画像をPCで画像処理することにより、砕土率を計測する。
計測された砕土率は、運転席に設置したモニターにリアルタイムで表示されるため、作業者は作業速度の目安を数値で確認することができる。低い砕土率を向上させるために作業速度を下げる、あるいは、砕土率が十分高い場合には作業速度を上げ、作業時間の短縮化を図ることが可能になるとしている。
図3 農研機構圃場(黒ボク土)における砕土率の計測結果
農研機構内の黒ボク土ほ場で、人手による実測値とリアルタイム砕土率計測システムの計測値を比較したところ、計測誤差(RMSE)は10.1%となった。
図4 3カ所の生産者圃場における計測結果

図1 リアルタイム砕土率計測システムの構成
作業能率の向上と出芽率改善効果に期待
近年、食料安全保障の観点から大豆や麦などの国内生産の重要性が高まっており、水田転換畑での作付けが進んでいる。これらの作物の生産性向上にはさまざまな要因が影響するが、収量の確保には、まず確実な苗立ちが重要で、出芽率の向上が必要となる。水田転換畑では砕土率が低くなる傾向があり、そのことが大豆の出芽率に影響するという。
砕土率とは、土壌中の土塊で長径が20mm未満の土塊が占める割合を重量ベースで表した数値のこと。砕土率が低い、つまり大きい土塊が多い状況だと、種子と土壌との密着が悪くなるため出芽率が下がり、収量にも影響する。過去のデータでは、砕土率70%程度で、最も高い出芽率が得られると報告されている。
従来、砕土率の計測は、人の手によりふるいを使って土塊を分離した後、重量を測る必要があり、農業現場で行われることはほとんどなく、作業者の経験と勘に頼っていた。そこで農研機構は、カメラ画像から簡易・迅速に砕土率を計測する技術の開発に取り組んできたという。
今回、その技術を自動化・高速化したことで、農業機械への搭載が可能となり、耕うん作業中にリアルタイムで砕土率を確認できるようになった。

計測された砕土率は、運転席に設置したモニターにリアルタイムで表示されるため、作業者は作業速度の目安を数値で確認することができる。低い砕土率を向上させるために作業速度を下げる、あるいは、砕土率が十分高い場合には作業速度を上げ、作業時間の短縮化を図ることが可能になるとしている。

農研機構内の黒ボク土ほ場で、人手による実測値とリアルタイム砕土率計測システムの計測値を比較したところ、計測誤差(RMSE)は10.1%となった。

また、土壌の異なる秋田県、茨城県、佐賀県の生産者ほ場で開発したシステムの実証を行ったところ、計測誤差は15.2%から18.6%となった。稲わら、落葉といった夾雑物が混入したことが計測誤差の主な原因と考えられているが、土壌の特性が異なる複数の生産者ほ場においても開発した計測システムの有効性が確認されている。
試験に協力した生産者からは、砕土率が数値で確認できることで、初心者でも砕土率をコントロールできるようになることが期待されている。
図5 砕土率マップの作成例
このシステムでは、砕土率と同時に位置情報をGNSSから取得しているため、オフラインで砕土率のマップ化が可能だ。ほ場の状態を可視化することで、砕土の悪い箇所を把握し、耕うんしたり、排水対策を行うなど営農計画の参考にもできる。

このシステムでは、砕土率と同時に位置情報をGNSSから取得しているため、オフラインで砕土率のマップ化が可能だ。ほ場の状態を可視化することで、砕土の悪い箇所を把握し、耕うんしたり、排水対策を行うなど営農計画の参考にもできる。
農研機構は、早期の社会実装を目指した取り組みを進めるため、夾雑物の混入による誤差を低減するアルゴリズムの改良や機械学習の利用を進める。同時に、農業生産法人などを中心とした土壌の特性が異なる現地での実証試験を行い、導入効果を検証していくという。さらに、縦軸回転ハローなど他の作業機への搭載や乾田直播栽培への応用も期待されている。
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