【穀粒判別機とは何か・前編】世界初の米穀の格付け、始まる

目視で格付けするのが当たり前だった米穀の業界ががらりと変わろうとしている。

撮影した穀粒の画像を解析して、品質をデータにする専用の機械が実用化されたのだ。この穀粒判別機は旧態依然とした業界に何をもたらすのか。

初回は、いち早く導入した特定米穀の取引会の様子を伝えたい。


加工原料の取引会


全国米穀工業協同組合(全米工)が6月11日に名古屋で開いた定例の取引会はいつもと違うことが二つあった。

一つは新型コロナの影響を受けてオンライン上でも参加できるようにしたこと。


もう一つは、会場に行けず現物を確認できない会員向けに、事前に出品者からもらい受けた米粒を穀粒判別機で撮影して画像を解析し、その品質を評価したデータの提供を始めたこと。

全米工は「特定米穀」と呼ばれるコメの集荷や供給をする企業(加盟111社)の集まりである。特定米穀とは、粒が小さかったり砕けていたりして、選別時の篩で落とされたコメを指す。

ふるいに残ったのは家庭などでの炊飯に使われる主食用となり、包装されてスーパーで陳列されているものを我々は日常的に目にしている。一方、特定米穀は米菓や味噌、醤油、焼酎、ビールなどの原料となる。


経験と勘からデータ活用へ


特定米穀の取引会の席上では、1000粒ほどの米粒が載ったトレイが出品されるごとに回される。


会員はこれまで、経験と勘をもって米粒の外観から品質を判断し、価格を交渉してきた。つまり特定米穀には規格が存在しない。

その代わりを果たすことになったのが、「穀粒判別機」だ。この機械で穀粒の画像を解析し、正常な米粒の割合のほか、砕けたり着色していたりするといった障害の項目別にそれぞれの米粒の割合をはじき出すことができる。

今回の取引会からは穀粒判別機が打ち出したデータに加え、出品者が事前に米粒を撮影した画像が提示される。遠隔地から取引会に参加する会員にとってはこれら2点が品質を判断する材料となる。

全米工がオンライン上での取引会を開催するに至ったのは、新型コロナの影響で2カ月以上にわたって一堂に会しての取引会が開催できなくなったから。

第二波、第三波が懸念されることから、6月11日以降も継続していく。ケツト科学は「パソコンやスマートフォンがあれば取引に臨めるので、以前よりも参加率が高まって、取引量が増えて取引会が活性化するはず」とみている。


主食用でも穀粒判別機を一部で認可


特定米穀と異なり、主食用のコメには国が定める農産物規格が存在して、格付けされている。

その検査でも2020年産から穀粒判別機の導入が一部で始まる。これまでは有資格者が米粒の外観を目で見ながら等級を決めるため、結果にはおのずと個人差が生じるのが問題だった。

もとより1951年の農産物検査法の成立とともに誕生してから時代に合わせた変化をしていない農産物規格は、コメの消費の仕方が多様化している現在の需要を反映しているとは言い難い。それゆえに規格や検査の見直しや廃止の議論が白熱すると同時に、中食や外食の企業は以前より独自の規格を設けるようになった。

しかも、それらの企業は集荷業者や仲卸業者を通さず、農業法人から直接買い入れる動きを強めている。


データが品質の担保となる時代へ


彼らが買い入れるかどうかを判断する際に気にするのは、独自の規格に見合った品質を確保できているかどうか、である。

担当者が全国各地の農業法人に定期的に出向き、品質を確認する余裕はとてもない。代わってそれを担保できるのが、穀粒判別機が提示するデータなのだ。


自社でコメを生産する以外に周囲の農家を相手に集荷業もこなす、とある農業法人は、さっそくこの機械を購入し、中食や外食の企業との取引を広げようとしている。

それらの企業が気にするのは、コメが国の検査を受けているかどうかではなく、自社で設けた独自の規格に合致しているかどうか。大手ほどそうしたデータを欲しがる傾向にあるという。

この農業法人は既製品の販売管理システムを400万円以上かけて改良し、農家から集荷するたびにコメの品質を検査してデータを蓄積して、いつでも入出力ができるようにしている。

全国で水田農業の経営規模が拡大する中、この農業法人のように集荷業に手を出すところは増えているように感じる。経営を発展させる一つの方向はバリュー・チェーンの構築にある。

そこに向かう際に大事になるのは、品質を保証できるデータであることはいうまでもない。


全国米穀工業協同組合
https://zenbeikou.jp/
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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  2. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  3. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  4. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  5. 藤本一志
    ふじもとかずし。大学・大学院の6年間を通して地域づくりと農業の活動に関わる。1年間のサラリーマン生活の後、学生時代から活動していた地域に移住し、2拠点居住を開始する。移住支援を通じた地域づくり活動に取り組む傍ら、兼業農家として稲作に取り組む。