【関西農業ワールドレポート】高齢化問題を解決するスマート農業ソリューション

5月9日からインテックス大阪で開幕した関西農業ワールド2018のレポート。2回目は、日本の農業が直面している高齢の農業従事者の方々のサポートや、そういった方々から若手への技術や知識の継承を助けるスマート農業スマートアグリ)ソリューションに注目してみた。

運搬ロボットの枠を超えた多彩な機能 ──中西金属工業株式会社×慶応義塾大学

中西金属工業株式会社と慶応義塾大学が共同開発した「agbee(アグビー)」は、農家が行っている様々な作業を助けてくれるロボットだ。


センサーにより人を追いかけながら重量物を運んでくれるほか、ルートを設定しての自律走行や農薬散布などの機能も持ち合わせている。また、土壌センサーも付属しており、土の状態を把握して畑を見える化してくれるという別のソリューションも利用できる。これは開発にあたって実際の農家にも協力を仰ぎ、必要とされるものをそろえてほしい、という声を受けてのものだという。

なにより、一目見てレトロな雰囲気をもつ可愛らしいデザインがとても目を引く。ブースのデザインも含めて、単に業務を行うだけのロボットというよりは、親しみやすい相棒というイメージが、農業という言葉が持つ負のイメージを払拭してくれそうだ。


経験と勘による土作りから土壌分析へ ──株式会社ファーミングテクノロジージャパン

株式会社ファーミングテクノロジージャパンが展示しているのは、一般の農家に向けた土壌分析サービスだ。


土の栄養状態は野菜の発育や味を決める上で重要な要素。ベテランの農家であれば経験や勘、これまでの生育の履歴から最適な肥料を与えることもできるが、新規就農者や後継者など、そういった情報がなく、肥料の与え方を間違ったり、多すぎて逆効果だったりすることもある。

そんな人たちでも、この土壌分析サービスにより、畑の土の健康状態を分析し、作りたい作物にとって最適な栄養素のアドバイスも受けられる。費用も1回あたり7000〜8000円ほどと、想像しているような分析サービスよりはお手頃だろう。

経験や勘に頼らず、科学的に最適な状態を知ることで、よりおいしく発育のいい作物が収穫できるようになることは、作物の付加価値の向上にもつながる。新規就農者はもちろん、離農による圃場の拡大などの際にも、ぜひ最初に実施してみてはいかがだろうか。


AIと農家の知見の両方を活用 ──株式会社オプティム

ビニールハウス内にカメラ付きのロボットを走行させ、作物の収穫時期を画像からAIで解析・判断する技術「Agri House Manager」を展示していたのがオプティムだ。


展示ではひとつのカメラで撮影したトマトの色味などをAIで解析し、収穫に最適かどうかの判断を行っている。360度カメラ+ロボットを走らせることで、一方向からでは見えない葉の裏側にあるトマトも含めて、すべてのトマトをチェックできるのが、このロボットの利点だ。

一方、ベテラン農家の判断基準を、後進に伝えるためにスマートグラスを使ったソリューション「Optimal Second Sight」もある。


2眼カメラを搭載したスマートグラスを収穫する人間がかけ、その映像を遠隔地で見ているベテランが、PCなどを通じて収穫する人間に伝える(画面の赤丸部分)。音声通話も行うことで、収穫しながらベテランの判断基準を学ぶことができる。

単にAIのみ、人力のみ、ということではなく、それぞれの作物や農家の環境に応じて最適なソリューションを、オプティムは展開している。


圃場、作業の見える化と水やりの自動化 ──データプロセス株式会社

「アグリーフ」は、センサーを使用することで圃場の状況をクラウド上で確認して見える化し、定期的・定量的な水やりの自動化を実現するソリューションだ。圃場に設置したセンサーからの情報をクラウド上で管理し、スマートフォンで確認・指示を行うことができる。


積算温度をグラフ化することで収穫時期を予測したり病害虫の対策を施したり、気温情報などから異常の検知なども可能。季節や天候を問わず圃場に行かなくてもそれらの情報をチェックできるため、体力的にも時間的にも余裕が生まれる。

センサーやコントローラーの導入にはイニシャルコストはかかるものの、すでに敷設されたホースなどの設備を利用できるケースもあり、大規模な工事などが必須というわけではないとのこと。売り上げアップというよりは業務の効率化の部分ではあるので、ある程度従業員を雇っているような農業法人などにとって魅力的なソリューションと言えるだろう。


<参考URL>
agbee(アグビー)|NKCイノベーションプロジェクト
https://nkc-innovation.com/
株式会社ファーミングテクノロジージャパン
http://farmtec-j.com/
株式会社オプティム|Agri House Manager
https://www.optim.co.jp/agriculture/agri-house.php
株式会社オプティム|Optimal Second Sight
https://www.optim.co.jp/remote/secondsight/
データプロセス株式会社|アグリーフ
http://www.odp.co.jp/solution/agrleaf/index.html
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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