農林水産省、2022年の「農業技術10大ニュース」を発表 脱農薬や環境配慮の取り組みが注目

農林水産省より、2022年の「農業技術10大ニュース」が発表された。


「農業技術10大ニュース」は、2022年の1年間に新聞記事となった民間企業、大学、公立試験研究機関および国立研究開発法人の農林水産研究成果のうち、内容が優れるとともに社会的関心が高いと考えられる成果10課題を、農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など30社加盟)の加盟会員による投票を得て選定したもの。

2022年は、化学農薬の使用を削減したり、プラスチックの影響を抑制したり、メタンガスの排出を抑えたりといった環境に配慮できる技術、検査や調査などをより簡単・確実にするための技術が高く評価されている。急激に広がるSDGsの取り組みや食料安全保障などの観点に応える新たな技術に着目しながら、それぞれをご紹介しよう。



【TOPIC1】メタンの産生が少ない牛に特徴的な新種の細菌を発見
-げっぷ由来メタンの排出削減に期待-


国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が、メタン産生量の少ない乳用牛の第一胃から、牛の栄養となるプロピオン酸を多く産生し、メタン産生の抑制につながる新種の細菌の分離に成功。今後、本菌を生菌剤として活用することで、牛のげっぷ由来メタンの排出削減と飼料利用性の改善に貢献することが期待される。

目的:メタンガスの排出削減
対象:酪農(乳用牛)
技術:バイオテクノロジー
特徴:細菌を活用
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-7.pdf


【TOPIC2】植物性プラスチックのリサイクルで肥料を製造
-再利用工程で発生する尿素を肥料として有効活用-


東京工業大学、東京大学、京都大学が、植物性プラスチックをアンモニア水で処理することにより、植物由来原料と尿素に分解するリサイクルシステムを開発。プラスチックのリサイクルと同時に、副生する肥料成分を植物に供給する資源循環システムの実現が期待される。

目的:植物性プラスチックの活用と資源循環
対象:農業全般
技術:アンモニア水による資源循環システム
特徴:植物性プラスチックのリサイクル
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-10.pdf

【TOPIC3】豚熱とアフリカ豚熱を迅速・同時に判別
-検査効率の大幅な向上で防疫に貢献-


農研機構とタカラバイオ株式会社が開発した、豚熱ウイルスとアフリカ豚熱ウイルスを1回の検査で迅速(2時間以内)に検出・判別可能なリアルタイムPCR法。都道府県が実施する豚熱の迅速な診断・防疫措置や、日本への侵入が警戒されるアフリカ豚熱の監視強化への貢献が期待されている。

目的:豚熱ウイルス、アフリカ豚熱ウイルスを同時検査
対象:酪農(畜産)
技術:リアルタイムPCR法
特徴:豚熱の迅速な診断とアフリカ豚熱の監視強化
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-8.pdf

【TOPIC4】土壌病害診断AIアプリを開発
-圃場ごとの発生しやすさに応じた対策法を提示-


農研機構、株式会社システム計画研究所/ISP等の土壌病害AI診断コンソーシアムが、土壌分析や栽培状況等を基に、圃場の土壌病害の発生しやすさを診断し、診断結果に応じた対策法を提示するウェブアプリ「HeSo+(ヘソプラス)」を開発。必要な圃場にのみ土壌消毒剤を使用することにより、消毒剤の使用量が削減され、生産者の収益性向上と環境負荷低減が期待される。

目的:土壌病害の診断
対象:農業全般
技術:AI
特徴:AI土壌診断による消毒剤使用量の削減、環境負荷低減
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-3.pdf

【TOPIC5】新たな道を切り開く「みちしずく」
-基腐病に強く、多収の焼酎・でん粉原料用かんしょ新品種を育成-


農研機構が、基腐病に強く多収の焼酎・でん粉原料用かんしょの新品種「みちしずく」を育成。焼酎原料用品種の「コガネセンガン」に、焼酎にした時の酒質(香りと味)が似ているという。2022年12月現在は種芋の供給は限られているが、南九州のかんしょ産地への普及に向けて種芋を増殖中とのこと。

目的:基腐病に強い焼酎・でんぷん原料用かんしょの新品種
対象:かんしょ
技術:品種改良
特徴:基腐病に強いかんしょの供給
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-2.pdf

【TOPIC6】振動でトマト害虫を防除
-コナジラミ類の発生抑制・トマトの授粉促進による安定生産へ-


電気通信大学等の振動農業技術コンソーシアムが、トマトの株に振動を与えて害虫のコナジラミ類を防除する技術を開発。振動には害虫の発生抑制に加えて、トマトの授粉を促進する効果もある。トマトの化学農薬の低減とともに、安定生産への貢献が期待されている。

目的:トマト栽培時の化学農薬の削減
対象:トマト
技術:振動農業技術
特徴:農薬を使わない害虫抑制、受粉促進
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-9.pdf

【TOPIC7】ウンカ発生調査 AIで大幅時短
-目視では1時間以上の調査時間を3~4分に短縮-


農研機構が、水稲の主要害虫であるイネウンカ類の発生調査にかかる時間を大幅に短縮できる技術を開発。AIを活用し、目視では1時間以上かかることもある害虫の判別・計数作業を3~4分に短縮。害虫の的確な防除や被害発生の予測に貢献することが期待される。

目的:ウンカの発生調査の短縮
対象:イネ
技術:AI
特徴:害虫防除と被害発生予測の大幅な時間短縮
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-4.pdf

【TOPIC8】超音波を活用したヤガ類の防除技術を確立
-開発した装置で農薬散布回数9割減-


農研機構、株式会社メムス・コア、京都府農林水産技術センターが、害虫のヤガ類を超音波で追い払う装置を開発し、防除技術として確立。天敵であるコウモリの出す超音波を聞くとヤガ類が逃げ出す性質を利用した技術であり、減農薬栽培の推進に貢献することが期待される。

目的:ハスモンヨトウ等のヤガ類の害虫防除
対象:ネギ、イチゴ
技術:超音波
特徴:コウモリの超音波を模した防除
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-1.pdf

【TOPIC9】リンゴ黒星病の発生低減に貢献
-リンゴの落葉収集機で効率よく9割除去-


農研機構、株式会社オーレック、地方独立行政法人青森県産業技術センターが、リンゴ黒星病の発生源となる落葉の収集機を開発。手作業の約30倍の作業能率で落葉を収集し、雪解け後の地面に張り付いた落葉に対し8~9割の除去率を達成。2022年3月に市販開始予定だ。

目的:リンゴ黒星病の防止
対象:リンゴ
技術:車両けん引式の落葉専用収集機
特徴:効率的な落ち葉収集機による病気の除去
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-5.pdf

【TOPIC10】急傾斜45度対応のリモコン草刈機
-強く、早く、小さい!中山間でも安全作業-


株式会社IHIアグリテック、農研機構、福島県農業総合センターは、リモコン操作で45度の傾斜地でも作業でき、国産の小型機種として初めてハンマーナイフ式を採用した草刈機を開発。茎が太く1mを超える雑草等にも対応可能で、平地、傾斜地ともに既存の小型草刈機の50%程度に作業時間を短縮。2022年6月に市販開始。

目的:傾斜地の無人草刈り
対象:農業全般
技術:ハンマーナイフ式の草刈機
特徴:45度の傾斜地でも作業可能
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/221226-6.pdf


農業技術10大ニュース|農林水産技術会議
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/10topics.htm
2022年農業技術10大ニュースの選定について|農林水産技術会議
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/221226.html

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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  3. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。