【令和8年版】 ネギ農業を取り巻く環境(前編)|周年出荷から新品種まで、知っておきたい栽培と経営のこと

初回掲載日:2026年2月6日
最終更新日:2026年7月13日


薬味から鍋物、焼き物まで、ネギは年間を通じて幅広く使われる野菜です。全国の産地がそれぞれの気候や作型を生かし、春・夏・秋冬の出荷をつないでいます。

ネギは全国で栽培され、地域の気候や出荷時期に合わせて多様な作型が組まれてきました。一方、栽培現場では、高温や大雨への対応、防除、収穫・調製作業など、負担の大きい工程も少なくありません。面積の拡大や安定出荷を考える際には、栽培技術だけでなく、人員配置や機械化、販路まで含めた検討が必要になります。

そこでこの記事では、ネギ栽培の現状、品種選び、栽培や出荷の工夫、最近話題のスマート農業まで、幅広くご紹介していきます。負担の大きい日々の農作業を客観的に見つめ直し、品種や作型、作業体制を、自分の圃場や販路に照らして見直すための参考にしてみてください。



全国で作られるネギ、それぞれの産地の特色


作付け面積


農林水産省の「野菜生産出荷統計」によると、全国のネギの作付面積は、2014年(平成26年)産の2万2900haから、2024年(令和6年)産には2万1200haとなり、10年間で約7%減少しました。収穫量も48万3900tから39万9200tへ減少しています。作付面積が大きく崩れているわけではありませんが、生産量を維持するためには、収量の安定と作業負担の両面を考える必要があります。

また、「2020年農林業センサス」の販売目的のネギ作付面積と経営体数から編集部が算出したところ、1経営体当たりの平均作付面積は約0.26haでした。「販売目的の野菜類の作物別作付面積」では、茨城県のネギ作付面積が1363haと最も大きくなっています。

主要産地


関東地方には、茨城県、千葉県、埼玉県など、ネギの主要産地が集まっています。また、北海道では比較的冷涼な夏を生かした出荷、九州では温暖な条件を生かした秋冬期の出荷など、地域ごとに異なる作型が組まれています。こうした産地間の出荷時期の違いが、年間を通じた供給を支えています。

たとえば、北海道では夏の冷涼な気候を生かして本州の端境期に出荷し、九州では温暖な気候で冬でも太く甘いネギが育ちます。こうした産地ごとの特色が、年間を通してネギが安定供給される理由になっています。

経営状況


経営の状況を見ると、家族経営を中心としながら、パートや臨時雇用を組み合わせて栽培している産地が多く見られます。経営体によっては、機械化による作業負担の軽減や、直売所、オンライン販売、契約出荷など、地域の条件に合った生産・販売方法を取り入れています。それぞれの地域や経営体の状況に合わせた工夫が重ねられているのが、ネギ栽培の特徴といえるでしょう。

リタイアする生産者が増え、1戸あたりの面積は拡大傾向にあります。つまり、今後のネギ経営では、作業面積だけでなく、収穫・調製に必要な人員や設備、出荷時期の重なりまで見据えて作型を組むことが重要になります。

ネギには、求められる太さ、軟白部の長さ、葉の状態、荷姿は、産地や出荷先によって異なります。加工・業務用でも原料規格が指定される場合があるため、品種を決める前に、出荷時期と規格を確認しておくことが大切です。

一方、収穫や皮むき、選別、結束などに労力がかかるため、参入や規模拡大を考える際には、栽培面積だけでなく、調製設備や作業人員、出荷先まで確認する必要があります。

既存の生産者にとっても、経験に基づく栽培技術や流通ルートを強みに、省力化・機械化を進めることで持続可能な経営につなげられる余地はあります。


品種との向き合い方と作型の工夫──周年出荷で安定経営を目指す


ネギ栽培の面白いところは、品種と作型の組み合わせ次第で、ほぼ一年中出荷できることです。春ネギ、夏ネギ、秋冬ネギなど複数の作型を組み合わせることで、出荷期間を広げられる可能性があります。ただし、育苗、定植、土寄せ、収穫が同時に進む時期もあるため、必ずしも作業のピークが分散されるとは限りません。作型を増やす際は、年間の作業予定と人員体制を確認する必要があります。

一例として、夏期の栽培では、高温条件での生育、葉の傷み、病害への強さなどが品種選びの確認項目になります。秋冬どりでは、太り方や軟白部の長さ、在圃性、出荷規格への適合などを確認します。

さらに、ネギには、地域で受け継がれてきた品種・系統と、産地全体の名称として知られる地域ブランドがあります。たとえば、「下仁田ねぎ」は地域性の強いネギとして知られ、「深谷ねぎ」は深谷地域で生産されるネギの産地ブランドとして展開されています。



圃場条件と出荷先から考える品種選び


どの品種で栽培するか考えるときは、自分の圃場の特性や出荷先のニーズをじっくり見極めることが大切です。ネギは一見どれも同じように見えても、暑さへの強さや太り方、軟白部の伸び、病気への耐性など、品種によって性格が大きく異なります。

たとえば、夏場の暑さが厳しい地域では耐暑性の高い品種を選ぶことで、葉が傷みにくくなり、収量や品質が安定しやすくなります。品種資料に葉先の傷みにくさや高温期の生育特性が示されている場合は、自分の作型や地域での適応性を確認します。こうした品種選びは、単なる収量だけでなく、作業時間の短縮にもつながります。

また、出荷先によって求められるネギの姿も変わります。市場出荷では「太くて白い部分が長いネギ」が評価されやすい一方、加工・業務用では多少の曲がりやサイズ違いが許容される場合もあります。契約栽培の場合は、品種以上に「規格(太さ・長さ・出荷時期)」が重視されることもあるため、事前に出荷先と条件をすり合わせておくことが重要です。


軟白部が長く育つ品種、太く育つ品種、成長が早い品種など、それぞれの特徴を理解したうえで、自分の圃場と販路に合った品種を選ぶことが、結果的に経営の安定につながります。とはいえ、いきなり多くの品種に手を広げると管理が難しくなるため、新しい品種を導入するときは、既存品種をすべて置き換えるのではなく、管理できる範囲で試験栽培し、生育、収量、調製のしやすさ、出荷規格との相性を比較するといいでしょう。

畑の一角を使って少量ずつ試しながら、自分の地域と経営に合うネギを探していくプロセスも、ネギ栽培の楽しさの一つと言えるでしょう。


ネギ農業を支えるのは「産地×作型×品種」の組み合わせ


全国のネギ供給は、産地ごとの気候、春・夏・秋冬の作型、品種選びの組み合わせによって支えられています。ただし、個々の経営では、出荷期間を広げるほど管理や作業予定が複雑になることもあります。品種や作型を増やす際は、販路だけでなく、育苗から調製までの作業体制を確認することが重要です。

後編では、ベテラン農家ほど見落としがちな“見えにくい工夫”や、経営を安定させるための具体策、そしてスマート農業の具体的な活用方法について、より踏み込んで見ていきます。

ネギ栽培の作業負担を見直してみませんか?
ネギ栽培では、防除や収穫、調製などの作業が重なる時期もあります。
すべての工程を自社で担うだけでなく、農作業の外部委託や
スマート農業を組み合わせることも選択肢の一つです。

圃場条件や現在の作業体制に合った方法を検討したい方は、
農作業支援サービスの内容をご確認ください。
▶ 農作業支援サービスについて詳しく見る相談・問い合わせ(フォーム)
※対応エリア・料金・作業条件は、地域や圃場状況等により異なる場合があります。

参考資料
農林水産省 「令和6年産野菜生産出荷統計」
農林水産省「2020年農林業センサス 確報 第2巻(総括編)」|表21「販売目的の野菜類の作物別作付(栽培)経営体数と作付(栽培)面積」

【特集】野菜栽培のノウハウ集
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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。