【話題のニュース】 相次ぐ農作物の盗難を防ぐには? 圃場・果樹園で実践したい4つの対策
8月に入り、収穫を目前にした果実や露地野菜などが増える時期になってきました。その裏で、農作物の盗難、それもまとまって大量に盗まれる被害が各地で発生しています。
2026年(令和8年)7月には、福岡県うきは市のナシ園で、収穫直前の「幸水」約5000個、約200万円相当が盗まれたと報じられました。同じ農園では前年にも被害があり、見回りを強化していたなか、人目につきにくい園地の奥側が狙われています。
農作物の盗難は、販売予定だった作物・売上を失うだけでなく、それまでにかけた資材費や作業時間、その後の営農、なにより生産者が精魂込めて育ててきた思いにも影響します。ただし、すべての圃場へ高額な設備を設置するのは現実的に難しい面もあります。
本記事では、大切な農作物を守るために農林水産省や警察が公開しているノウハウや対策を、現場レベルで実践できるものとしてまとめてみました。他山の石として、自分の圃場を見直すきっかけにしていきましょう。

盗難対策の方法はいろいろありますが、まずは自分ができることから始めることが、防犯の第一歩です。予算をかけるよりも先に、意識改革から始めていきましょう。
まず確認したいのは、圃場への入りやすさ、見えにくさです。道路から車を乗り入れやすい出入口、木や資材で周囲から見えにくい場所、収穫物の一時的な集積場所などを確認します。
農林水産省が2018年度(平成30年度)に被害認知件数が多い23道府県の市町村やJAなど218機関へ聞き取りを行った調査では、102の事案のうち、盗難場所が圃場だった事案は48%でした。「被害額が不明」な事案は60%に上っています。
園地の入口だけでなく、それ以外に入れそうな場所、例えば人目につきにくい奥や目が届きにくい外周も見ておくことが大切です。複数の圃場を管理している場合は、収穫量や販売額が大きい場所、夜間に車両が接近しやすい場所などから優先順位を付けてチェックしましょう。
果樹園を例にした警戒すべき場所。自分の圃場・園地に当てはめてみるだけでも防犯意識は高まる(イラスト:SMART AGRI編集部、生成:ChatGTP)
収穫した果実や野菜は、できるだけその日のうちに圃場から移動させましょう。ハウスや保管庫へ収める場合は、窓や出入口の施錠を徹底し、鍵の管理方法も作業者間で決めておきます。
また、収穫用コンテナ、脚立、はさみなどの道具を盗む人などいないように思われがちですが、これらは農作物の持ち出しに利用されるという意味で、盗まれる可能性もあります。きちんと管理されているということを示すことにもつながります。もし毎回の撤収が難しい場合は、鍵のかかる倉庫や収納設備を用意するなど、日々の作業に組み込みやすい方法を検討しましょう。
圃場の外周や出入口には、ネットや柵を設けるほか、「立入禁止」「盗難警戒中」「防犯カメラ作動中」などの看板を掲示しましょう。設備があることを見える形で示し、管理されている圃場だと伝えることで予防策になります。
予算が許すなら、暗い場所や夜間に人がいない場所には人感センサーライトなどを設置すると、周囲の誰かの目に止まる可能性が高くなります。侵入を検知すると警告音や音声が流れる装置を組み合わせるといった方法もあります。
これらは、不審者を直接追い払う目的もありますが、光や音で侵入をためらわせるのに効果的です。農林水産省や茨城県警察も、カメラ、ライト、音声警報器などを組み合わせた対策を挙げています。
なお、センサーライトを配置する際には、農道や近隣住宅へ強い光が向かないように配慮して設置しましょう。また、枝葉や動物に反応し続けないよう、検知精度や範囲の調整も必要です。
最近の防犯カメラは、AI検知機能などを用いて、画面内に人や動物が侵入したとき、特定の枠やラインを何かが通った時に、自動的に映像をクラウドサーバーなどに保存したり、メールなどで通知できる製品があります。リアルタイムでの警戒はもちろん、後から侵入者を特定できる可能性も出てきます。
こうしたカメラの設置は、まずは圃場の出入口や車両の進入経路、人目につきにくく出入りしやすそうな場所を優先するのがいいでしょう。すべての道をカバーすることは難しくても、確実に抑止力になります。
屋外で使用する場合は、国際規格「IP66相当」を一つの目安に、防塵・防水性能がある屋外用の機種を選びましょう。また、撮影範囲、夜間の映像の鮮明さ、動体への反応などもしっかり試しておくことが重要です。
山間部などでWiFiが置けなかったり、携帯電話会社の通信が不安定な圃場では、スマートフォンへの通知だけに頼らず、本体や記録装置にも映像を残せる機材構成を検討しましょう。
また、圃場には「防犯カメラ作動中」などと表示しつつ、隣接する住宅や道路などは必要以上に撮影しないなど、プライバシーにも配慮しましょう。

盗難対策を一つの農園だけで続けると、設備や見回りの負担が大きくなり、気持ちも疲弊してしまいます。時間や場所を問わずに警戒しておくためには、日頃から近隣農家、JA、市町村、警察などと、不審者や不審車両の目撃情報を共有しておくことも大切です。
小学校や中学校の保護者会などでは、普段から移動に使う自転車に「〜〜地域の見回り中」といった張り紙をして買い物などに行くことで、常に警戒されている街だと認識させる方法もあります。似たようなかたちで、作業者には常に腕章を付けたり、農作業車両に農園名を表示することで、近隣で関係者を見分けやすくするといった方法も有効です。
農園ごとのユニフォームを常に着用するといったことも、農園のブランドや仲間意識を醸成するだけでなく、常に監視者がいるということを示す意味でも効果があります。
もし普段あまり見かけないような不審な人物や車両を見つけた場合は、安易に近づかず、安全な場所から警察へ通報しましょう。日時、場所、人数、服装、車種、ナンバーなどは無理のない範囲で確認して伝えます。警察への通報後に近隣農家やJAへ情報共有することで、地域コミュニティの警戒心も高まります。
地域ぐるみで対応できるかどうかはコミュニティによりますが、大切なのは複数の目があると盗難を考えている人に示すこと。複数人で巡回する場合も、事前に連絡方法や担当範囲を決めておきましょう。
深夜などに農作物を盗まれてしまい、被害に後から気付くこともあるかもしれません。気づいた時のショックや今後の不安もありますが、まずは一度落ち着いて、現場を必要以上に触らず、最寄りの警察署へできるだけ早く連絡しましょう。
被害品目や数量、最後に確認した日時、発見時の状況を整理し、防犯カメラの映像があれば何かが映っているかどうかにかかわらず、上書きされる前に保全しておきます。その上で、近隣農家やJAにも情報を共有すれば、周辺での追加被害も防ぎやすくなります。
また、不審者が園地内にいる状況に出くわした場合などは、自分で追跡したり、車両の前に立って進路をふさいだりすることは危険が伴います。安全の確保を最優先とし、撮影や追跡のために無理に不審者に近づかず、安全な場所から確認できた不審者や車両の特徴を警察へ伝えることを最優先にしましょう。

残念ながら、これをすれば農作物の盗難を完全に防げる、という対策があるとは言えません。盗難被害を防ぐための設備やグッズなどを活用しても、犯罪者たちはさらに巧妙に、時には強硬な手段を用いてくるでしょう。
ただし、日頃から「ちょっと盗んでもバレないだろう」という「隙」を見せないこと、十分な対策を施していることを示し、「時間をかけるだけ無駄だ」と思わせることで、被害を抑えられる可能性は高くなります。被害リスクの高い圃場から優先順位を付け、日々の作業に無理なく組み込むことから始めましょう。
大切に育ててきた農作物が奪われることは、生活に大きな打撃になるだけでなく、長い期間の努力を無にされてしまう出来事です。収益がなくなることで離農につながってしまうこともあり得ます。
悲しい思いをする前に、まずはできる範囲で無理なく続けられる防犯意識を持っておくことが肝心です。
参考資料
・農林水産省「農作物の盗難防止対策を実施しましょう」
・茨城県警察「農作物の盗難に注意」
・福岡TNCニュース「去年盗難被害の農園で、今年もナシ5000個盗まれる」
2026年(令和8年)7月には、福岡県うきは市のナシ園で、収穫直前の「幸水」約5000個、約200万円相当が盗まれたと報じられました。同じ農園では前年にも被害があり、見回りを強化していたなか、人目につきにくい園地の奥側が狙われています。
農作物の盗難は、販売予定だった作物・売上を失うだけでなく、それまでにかけた資材費や作業時間、その後の営農、なにより生産者が精魂込めて育ててきた思いにも影響します。ただし、すべての圃場へ高額な設備を設置するのは現実的に難しい面もあります。
本記事では、大切な農作物を守るために農林水産省や警察が公開しているノウハウや対策を、現場レベルで実践できるものとしてまとめてみました。他山の石として、自分の圃場を見直すきっかけにしていきましょう。
大切な農作物を盗難から守るために
盗難対策の方法はいろいろありますが、まずは自分ができることから始めることが、防犯の第一歩です。予算をかけるよりも先に、意識改革から始めていきましょう。
農作物の盗難を防ぐためにいますぐ実施したい4つの対策
- 出入口と人目につきにくい場所から見直す
- 収穫物や道具を圃場に残さない(収納する)
- 光・音・表示などで侵入しにくい環境をつくる
- 防犯カメラを導入する
対策(1) 出入口と人目につきにくい場所から見直す
まず確認したいのは、圃場への入りやすさ、見えにくさです。道路から車を乗り入れやすい出入口、木や資材で周囲から見えにくい場所、収穫物の一時的な集積場所などを確認します。
農林水産省が2018年度(平成30年度)に被害認知件数が多い23道府県の市町村やJAなど218機関へ聞き取りを行った調査では、102の事案のうち、盗難場所が圃場だった事案は48%でした。「被害額が不明」な事案は60%に上っています。
園地の入口だけでなく、それ以外に入れそうな場所、例えば人目につきにくい奥や目が届きにくい外周も見ておくことが大切です。複数の圃場を管理している場合は、収穫量や販売額が大きい場所、夜間に車両が接近しやすい場所などから優先順位を付けてチェックしましょう。
対策(2)収穫物や道具を圃場に残さない
収穫した果実や野菜は、できるだけその日のうちに圃場から移動させましょう。ハウスや保管庫へ収める場合は、窓や出入口の施錠を徹底し、鍵の管理方法も作業者間で決めておきます。
また、収穫用コンテナ、脚立、はさみなどの道具を盗む人などいないように思われがちですが、これらは農作物の持ち出しに利用されるという意味で、盗まれる可能性もあります。きちんと管理されているということを示すことにもつながります。もし毎回の撤収が難しい場合は、鍵のかかる倉庫や収納設備を用意するなど、日々の作業に組み込みやすい方法を検討しましょう。
対策(3)光・音・表示などで侵入しにくい環境をつくる
圃場の外周や出入口には、ネットや柵を設けるほか、「立入禁止」「盗難警戒中」「防犯カメラ作動中」などの看板を掲示しましょう。設備があることを見える形で示し、管理されている圃場だと伝えることで予防策になります。
予算が許すなら、暗い場所や夜間に人がいない場所には人感センサーライトなどを設置すると、周囲の誰かの目に止まる可能性が高くなります。侵入を検知すると警告音や音声が流れる装置を組み合わせるといった方法もあります。
これらは、不審者を直接追い払う目的もありますが、光や音で侵入をためらわせるのに効果的です。農林水産省や茨城県警察も、カメラ、ライト、音声警報器などを組み合わせた対策を挙げています。
なお、センサーライトを配置する際には、農道や近隣住宅へ強い光が向かないように配慮して設置しましょう。また、枝葉や動物に反応し続けないよう、検知精度や範囲の調整も必要です。
対策(4)防犯カメラを導入する
最近の防犯カメラは、AI検知機能などを用いて、画面内に人や動物が侵入したとき、特定の枠やラインを何かが通った時に、自動的に映像をクラウドサーバーなどに保存したり、メールなどで通知できる製品があります。リアルタイムでの警戒はもちろん、後から侵入者を特定できる可能性も出てきます。
こうしたカメラの設置は、まずは圃場の出入口や車両の進入経路、人目につきにくく出入りしやすそうな場所を優先するのがいいでしょう。すべての道をカバーすることは難しくても、確実に抑止力になります。
屋外で使用する場合は、国際規格「IP66相当」を一つの目安に、防塵・防水性能がある屋外用の機種を選びましょう。また、撮影範囲、夜間の映像の鮮明さ、動体への反応などもしっかり試しておくことが重要です。
山間部などでWiFiが置けなかったり、携帯電話会社の通信が不安定な圃場では、スマートフォンへの通知だけに頼らず、本体や記録装置にも映像を残せる機材構成を検討しましょう。
また、圃場には「防犯カメラ作動中」などと表示しつつ、隣接する住宅や道路などは必要以上に撮影しないなど、プライバシーにも配慮しましょう。
盗難被害を未然に防ぐために
地域で情報を共有し、互いに警戒し合う
盗難対策を一つの農園だけで続けると、設備や見回りの負担が大きくなり、気持ちも疲弊してしまいます。時間や場所を問わずに警戒しておくためには、日頃から近隣農家、JA、市町村、警察などと、不審者や不審車両の目撃情報を共有しておくことも大切です。
小学校や中学校の保護者会などでは、普段から移動に使う自転車に「〜〜地域の見回り中」といった張り紙をして買い物などに行くことで、常に警戒されている街だと認識させる方法もあります。似たようなかたちで、作業者には常に腕章を付けたり、農作業車両に農園名を表示することで、近隣で関係者を見分けやすくするといった方法も有効です。
農園ごとのユニフォームを常に着用するといったことも、農園のブランドや仲間意識を醸成するだけでなく、常に監視者がいるということを示す意味でも効果があります。
もし普段あまり見かけないような不審な人物や車両を見つけた場合は、安易に近づかず、安全な場所から警察へ通報しましょう。日時、場所、人数、服装、車種、ナンバーなどは無理のない範囲で確認して伝えます。警察への通報後に近隣農家やJAへ情報共有することで、地域コミュニティの警戒心も高まります。
地域ぐるみで対応できるかどうかはコミュニティによりますが、大切なのは複数の目があると盗難を考えている人に示すこと。複数人で巡回する場合も、事前に連絡方法や担当範囲を決めておきましょう。
被害に気付いたら現場を保ち、警察へ連絡する
深夜などに農作物を盗まれてしまい、被害に後から気付くこともあるかもしれません。気づいた時のショックや今後の不安もありますが、まずは一度落ち着いて、現場を必要以上に触らず、最寄りの警察署へできるだけ早く連絡しましょう。
被害品目や数量、最後に確認した日時、発見時の状況を整理し、防犯カメラの映像があれば何かが映っているかどうかにかかわらず、上書きされる前に保全しておきます。その上で、近隣農家やJAにも情報を共有すれば、周辺での追加被害も防ぎやすくなります。
また、不審者が園地内にいる状況に出くわした場合などは、自分で追跡したり、車両の前に立って進路をふさいだりすることは危険が伴います。安全の確保を最優先とし、撮影や追跡のために無理に不審者に近づかず、安全な場所から確認できた不審者や車両の特徴を警察へ伝えることを最優先にしましょう。
設備だけに頼らず、続けられる防犯体制を
残念ながら、これをすれば農作物の盗難を完全に防げる、という対策があるとは言えません。盗難被害を防ぐための設備やグッズなどを活用しても、犯罪者たちはさらに巧妙に、時には強硬な手段を用いてくるでしょう。
ただし、日頃から「ちょっと盗んでもバレないだろう」という「隙」を見せないこと、十分な対策を施していることを示し、「時間をかけるだけ無駄だ」と思わせることで、被害を抑えられる可能性は高くなります。被害リスクの高い圃場から優先順位を付け、日々の作業に無理なく組み込むことから始めましょう。
大切に育ててきた農作物が奪われることは、生活に大きな打撃になるだけでなく、長い期間の努力を無にされてしまう出来事です。収益がなくなることで離農につながってしまうこともあり得ます。
悲しい思いをする前に、まずはできる範囲で無理なく続けられる防犯意識を持っておくことが肝心です。
参考資料
・農林水産省「農作物の盗難防止対策を実施しましょう」
・茨城県警察「農作物の盗難に注意」
・福岡TNCニュース「去年盗難被害の農園で、今年もナシ5000個盗まれる」
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