稲刈り後の今が好機! 来年の作業効率を改善する「小規模区画整備」のすすめ

令和8年産米の稲刈りも全国で本格化していますが、コンバインでの収穫作業をしながら、「この田んぼは何度も切り返さないと刈れない」「隣の田んぼまでの移動が面倒」などと感じた場所はなかったでしょうか。

収穫最盛期は目の前の作業を進めるだけで手いっぱいですが、収穫が終わって少し時間ができる9月〜11月の時期こそ、圃場の使いにくさを見直す絶好のタイミングです。

今年の作業で感じた不便さを覚えているうちに、畦畔(あぜ)や圃場の形、排水、進入路などの見直しを検討してみると、来年以降の作業を変えられるかもしれません。

今回の記事では、来年に向けて稲作の作業効率アップ、時間短縮を実現するための「小規模区画整備」を進めるための方法をご紹介します。



小さな田んぼほど「旋回」と「移動」が積み重なる


小さな田んぼが何枚もあると、コンバインで旋回する、圃場から出て次の田んぼへ移る、畦畔を草刈りする──といった作業の合間の無駄な時間が積み重なります。

秋田県農業試験場が25ha以上の水稲経営体を対象に行った調査では、圃場面積が大きくなるにつれて10a当たりの田植え・稲刈り時間が短縮し、50a程度までは旋回回数が減少するなど、作業能率向上に寄与したとされています。

一方、50a以上の経営体では、田植えが10aあたり0.19時間、稲刈りが0.20時間となり、研究では50a区画でも1ha区画と同等の能率向上効果が見込めるとしています。

圃場間の移動時間にも差がありました。

田植えでは、調査圃場の平均面積が23.8aの経営体では、圃場間移動が作業時間の16.8%を占めたのに対し、平均170aの経営体では3.0%。稲刈りでは平均22.4aの経営体が10.1%、平均170aでは3.4%でした。

経営体や使用機械など条件が異なるため、区画を広げればそのまま同じ数字になるわけではありませんが、圃場の中での作業だけでなく、田んぼから田んぼへ移る時間も見直す余地があることが分かります。

また、水稲の効率化というとすぐに「大規模化」というイメージがありますが、何haもの大区画にすることだけが選択肢ではありません。

例えば、隣接する30a程度の田んぼをつなぎ、50~60a程度にするだけでも、今使っている田植機やコンバインが格段に動かしやすくなります。むしろ、小さな圃場を少しずつ広げていくことの方が、今の時代と生産者の規模に合っているとも言えるかもしれません。


隣の田んぼとつなぐ「あぜ抜き」という方法


そんな、最もシンプルに隣り合った田んぼを一枚にする方法の一つが、間にある畦畔を撤去する「あぜ抜き」です。

農林水産省が示している「土地改良事業設計指針『ほ場整備』」でも、30a区画などに整形されている圃場では、畦畔の撤去と均平化を組み合わせた大区画化が有効な方法として示されています。

「あぜ抜き」の作業手順を大まかに整理すると、次のようになります。

作業 内容
①圃場を調べる 隣り合う田んぼの高低差、取水・排水、水路、進入路などを見る
②畦畔を撤去する 2枚の田んぼを隔てている畦畔を取り除く
③高低差を直す 必要に応じて高い場所から低い場所へ土を移動する
④均平にする 水深に大きなムラが出ないよう田面を整える
⑤用排水などを整える 必要に応じて水口、排水口、水路、暗渠、進入路などを見直す
⑥圃場を仕上げる 耕起や雑物除去などを行い、再び作付けできる状態にする

畦を取り除けば2つの田んぼが1枚にはなります。ですが、「畦を取っただけで一枚の田んぼになる」というわけではありません。

例えば、これまで別の農家が管理してきた圃場を引き受けて1枚にする場合、「土や栄養の状態なども違うのに、同じように稲が育つのだろうか。かえってやりにくくなるかもしれない」と不安に感じるかもしれません。

実際、これまでの施肥や管理方法が違えば、地力や作土の厚さ、水持ち・排水性などにも差がある可能性があります。だからといって、すべての圃場で大がかりな追加工事が必要になるわけではありません。

まずは、元の田んぼごとに土壌の状態や高低差、作土の厚さ、用排水を確認しておくことが重要です。差が小さければ、均平化と用排水の調整だけで済む場合もあります。

一方で高低差が大きい場合は、できるだけ作土を大きく動かさない方法で均平化したり、地力の低い部分だけ施肥量や土壌改良資材を調整したりする方法もあります。

「1枚にした後で何年か様子を見る」ことを前提とせず、工事前に違いを把握し、必要な場所だけ最初から補正しておくという考え方の方が現実的です。施工前のひと手間は増えますが、その後の生育ムラや追加作業を減らすことにつながります。

農水省の2026年度(令和8年度)「大区画化等加速化支援事業」の実施要領でも、30aの田んぼ2枚を60aにする例について、条件によって畦畔除去だけの場合から、ブルドーザーやバックホウによる整地、水路の変更などを伴う場合まで分けて示されています。

田んぼ同士を切り分ける意味では大切な畦。除去するだけでなく、水の流れや高低差、土壌診断など、最初からベストな状態を作るためにスマート農業を活用したい

区画整備に使える国の支援制度や委託サービスも登場


このように区画を広げる際は、利用できる支援制度がないかも確認しておきたいところです。

2026年度の「大区画化等加速化支援事業」では、法人等の農業者が行う区画拡大や排水性向上などが対象となっています。

通常の助成単価を見ると、畦畔除去だけの場合は4万円/100m。高低差10cm以下で表土を扱わない区画拡大では7万円/10aが示されています。

さらに、表土を扱う場合は25.5万円/10a、高低差が10cmを超える場合は27.5万円/10aなど、施工条件によって助成単価も変わります。

これらの金額は工事費そのものを示す「相場」ではなく、国が設定している助成単価であり、「うちの田んぼならいくらで一枚にできるのか」は、面積だけでは判断できません。高低差がどの程度あるか、表土を動かすか、水路や排水設備の変更などの必要な工事は、圃場次第で変わるためです。

もし機械や作業のノウハウがなく、自身で工事ができない場合には、助成金も活用して持ち出しを少なく外注する方法もあります。制度にも対象者や地域、事業要件があります。実際に利用できるかは、自治体や土地改良区などへの確認が必要です。

参考記事:「うちの田んぼだけでもできる?」 農家単位で始める区画拡大と補助事業の活用法

「自分の圃場でも区画を広げられる?」「どんな工事が必要?」と気になったら
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国が考える標準的な水田規模は1ha


区画を整えることの意味は、今年や来年の作業時間短縮だけにとどまりません。農地を集積して経営面積を増やす場合はもちろん、将来経営規模を見直したり、別の担い手へ農地を引き継いだりするときにも、農機が入りやすく、水管理をしやすい圃場であることはスムーズな委託や譲渡をする上で、担い手側にとっても好材料になります。

日本では、整備された平野部の水田は「その時代の農機具や政策に合わせた標準サイズ」で作られてきた歴史があります。明治時代の「耕地整理法」の頃は、牛馬による手作業の適正規模として1反(約10a)に、昭和時代は「圃場整備事業」によりトラクターなどが扱いやすい長方形の30a規格に整備されてきました。

しかし令和の現代は、ひとりあたりの作業効率の改善や、ドローンロボットトラクターなどを活用しやすいように、30aをつなげた1haの圃場とすることを、農水省も推奨しています。

もちろん、大きければ大きいほどよいというわけでもありません。秋田県農業試験場の研究でも、あまり大区画すぎると均平の確保が難しくなることや、機械装備との組み合わせを考える必要性が指摘されています。

大切なのは、自分の経営規模や農機、地域の水管理に合った形を考えること。そして、「大区画化等加速化支援事業」が始まった今年は、区画整備をする上で最適なタイミングと言えます。

(イラスト原案:SMART AGRI編集部、作成:ChatGPT)

今年感じた「やりにくさ」を見直したいなら今


稲刈りを終えたら、今年の作業を思い返しながら圃場を一度見てみましょう。

「ここでは何度も切り返した」「この畦の草刈りに時間がかかった」「ここだけ水が抜けにくかった」「この進入路はコンバインで入りにくかった」といった場所を、スマートフォンで撮影しておくだけでも構いません。

そのうえで、隣接する田んぼとの高低差や畦、水路、排水口などを確認し、「ここを一枚にできないか」「排水まで直した方がいいか」を考えてみましょう。

きっと圃場ごとに、区画拡大や均平化といった作業によって、今までよりも格段に作業効率や作業時間が改善できる余地があると思います。

もちろん、雨で圃場が軟らかい場合や、所有者・水利関係者との調整が必要な場合など、すぐに施工できないこともあります。だからこそ、収穫後にすぐ工事をするのではなく、収穫が終わった今から調査や相談を始めることにこそ、大きな意味があります。

今持っている農機が動きやすい田んぼに変える、余計な作業を減らして効率よく育てられるようにするなど、今年の稲刈りで感じた不便さを来年の作業改善につなげるために、まずは自分の圃場を見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。

今年の稲刈りで感じた「使いにくさ」を、来年までに改善してみませんか?
畦畔の撤去や均平化など、圃場の区画整備について
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[要編集]※注釈があれば記載

参考資料
鵜沼秀樹(秋田県農業試験場)「ほ場区画と水稲作業時間の関係」『東北農業研究 第71号』(2018年)
農林水産省「土地改良事業設計指針『ほ場整備』」
農林水産省「大区画化等加速化支援事業の概要」
農林水産省「大区画化等加速化支援事業実施要領」
農林水産省「農地の整備」


【特集】水稲栽培のノウハウ集
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。