2026年産新米、米価下落でどう売る? 農家が新米販売で考えたい「売り時」と「販路選び」
2026年(令和8年)産の早場米が出回り始め、これから本格的な新米シーズンを迎えます。スーパーの米価格は下落基調が続き、一部の早場米産地では前年より低い概算金も報道されています。
一方、2025年(令和7年)産米の相対取引価格は、6月に下落したあと7月には反発しました。さらに、2026年産主食用米の作付意向は前年よりわずかに減っているものの、平均的な単収を当てはめた生産量は、国が示す需要見通しを上回る水準です。
消費者から見れば「やっと手が届きやすい価格に下がってくれた」と思うでしょう。安ければ安いほど助かると思うのは、ほとんどの国民の心情です。
しかし農家からすれば、「せっかく資材価格まで含めて賄える価格に上がったのに、また価格が下がるのか……」と落胆しているというのも本音でしょう。
農家としては、「米価が下がる」という一方向の見方だけで売り急ぐのではなく、小売価格、相対取引価格、概算金、在庫、そして自分の地域の販売条件を分けて見る必要があります。
今回の記事では、2026年8月24日時点の市場環境を整理したうえで、2026年産の新米をどう販売すべきか、そしてそれを2027年の経営へどうつなげるかを考えます。

2026年の米市場を見る際には、異なる段階の数字を混同しないことが大切です。ここでは「店頭価格」「産地と卸の取引価格」「在庫」の3つに分けて見ていきます。(※2026年8月24日現在の情報をもとに分析)
農林水産省が全国約1000店舗のPOSデータを基にまとめた資料によると、2026年8月10~16日の平均販売価格は、税込みで5kg当たり3191円でした。
前週から29円、前年同期から613円下がっています。農林水産省は、平均価格について2026年1月以降は下落基調に転じ、直近では2週ぶりに3200円を下回ったとしています。
内訳を見ると、銘柄米は5kg当たり3211円で前週比44円安、ブレンド米などは3094円で15円高でした。同じ「スーパーの米価格」でも、商品の種類によって動きは異なります。
ただし、店頭価格には精米、袋詰め、輸送、卸・小売段階の費用などが含まれています。スーパーで5kgの商品がいくらで売られているかと、生産者が玄米60kg当たりで受け取る金額は別の指標として見る必要があります。
相対取引価格は、JAなどの出荷業者と卸売業者などの間で契約される価格です。農林水産省の統計では、運賃、包装代、消費税を含む1等米の価格を玄米60kg当たりで示しています。
2025年産米の相対取引価格は、2026年6月には全銘柄平均3万1305円まで下落しましたが、7月は3万2486円となり、前月から1181円、4%上昇しました。前年同月の2万6918円と比べると21%高い水準です。
出回りから2026年7月までの年産平均価格も3万5451円で、前年産の同期間を41%上回っています。さらに、7月に価格が公表された59銘柄のうち、25銘柄が前月から上昇し、23銘柄が下落しました。
つまり、「相対取引価格も一貫して下がっている」という状況ではありません。
また、相対取引価格は生産者が受け取る価格そのものではありませんが、無関係でもありません。JAなどの共同販売では、販売の見通しが立った段階で、販売額から経費や概算金などを差し引いて追加払いを行う仕組みがあります。
2026年産米については、一部の早場米産地で前年より低い概算金が示されたとの報道があります。農林水産大臣も、高知、宮崎、鹿児島などの概算金に関する報道を把握しているとしたうえで、概算金はJAなどが販売見込みや需給動向を踏まえて自主的に設定するものと説明しています。
概算金は全国共通の価格ではなく、産地、品種、等級に加え、追加精算や共同計算の方法も異なるため、自分が出荷する地域の条件を確認することが前提になります。
農林水産省の米穀流通調査では、2026年6月末の出荷・販売段階にある民間在庫は194万トンで、前年同月より72万トン増えています。
出荷業者の集荷数量は268万7000トンで前年より25万9000トン多い一方、販売数量は150万トンで、前年より26万5000トン少なくなっています。
在庫が前年より増え、販売が前年より進んでいない状況は、今後の需給を見るうえで無視できない材料です。
なお、ここでいう「194万トン」と、国の需給見通しで使われている「243万トン」は対象範囲が違います。
194万トンは出荷・販売段階の在庫です。一方、国の基本指針で使う2026年6月末民間在庫243万トンには、年間500トン以上を扱う届出事業者の在庫に加え、生産者が保有している在庫の推計値も含まれています。
この2つは単純に比較せず、それぞれ何を数えている数字なのかを確認して読む必要があります。

農林水産省が2026年7月28日に策定した「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」では、2026年7月から2027年6月までの主食用米等の需要量を、693万~711万トン(玄米ベース)と見込んでいます。
一方、2026年産主食用米等の生産量について、基本となる見通しは711万トンです。この場合、2027年6月末の民間在庫は242万~260万トンと見込まれます。
さらに、2026年6月末時点の主食用米の作付意向は136万haでした。前年の136万7000haからは7000ha減っているため、「2026年に作付面積がさらに増えた」わけではありません。
ただし、この136万haに直近5年中3年平均の単収538kg/10aを当てはめると、生産量は732万トン相当になります。
※農水省の資料等をもとに編集部で作成
需要見通しの上限711万トンに対して、生産量が732万トンとなれば、その差だけ在庫が積み上がる計算です。このため、2027年に向けて需給が緩む可能性は、販売計画を考えるうえで一つのリスクとして見ておく必要があります。
ただし、これは米価がいくらになるかを予測した数字ではありません。
実際の生産量は天候や作柄、品質などで変わります。需要量も家庭消費、外食、インバウンドなどによって動きます。国の需給見通しにはSBS方式や枠外の民間輸入による輸入米も含まれていません。
また、政府備蓄米の売渡し分に係る買戻しや買入れについても、2026年産米の作柄や今後の需給を見ながら時期と数量を判断するとされています。
そのため、生産者側では一つの価格予想に賭けるよりも、複数のケースを想定しておく方が現実的です。

全国の在庫量だけで、自分の米の販売価格が決まるわけではありません。地域の集荷量、品種別の需要、品質、契約数量なども合わせて見ていきましょう。
2027年への備えといっても、作付け面積を決めるところから始まるわけではありません。2026年産米を「誰に」「いくらで」「いつ売り」「いつ入金されたか」を整理しておくことが、次年度の販売計画や作付けを考える材料になります。
売り先を比較するときは、最初に示された単価だけでなく、経費を差し引いたあとにいくら残るのかを考えます。

JAへ出荷する場合は、概算金だけで判断せず、追加払い、手数料、共同計算、最終精算の時期まで確認します。収穫期の集荷や販売を任せられること自体も、作業負担を考えれば価値の一つです。
民間業者へ販売する場合は、単価だけでなく、運賃や検査費を誰が負担するのか、どの等級でいくらになるのか、いつ入金されるのかまで確認します。価格、数量、品種、等級、引取条件などは、契約書やメールなどで残しておく方が安心です。
直販では販売価格を高く設定できる場合がありますが、精米、袋詰め、発送、注文対応、在庫管理などの費用と作業時間も発生します。売価ではなく、自分の労働時間まで含めて手元にどれだけ残ったかで比較しましょう。
もう一つ分けて考えたいのが、「出荷する時期」「入金される時期」「価格が確定する時期」です。
例えばJAの共同販売では、秋に出荷して概算金を受け取っても、最終的な販売結果や精算額が決まるのは後になる場合があります。資金繰りを考える際には、この3つを同じものとして扱わないことが大切です。
「今売れば損か、待てば高くなるか」を正確に当てるのは難しいものです。ですが、秋から次の作付けまでに必要となる資金から逆算する方法なら、運頼みではなくある程度正確な予想ができます。
まず、肥料・農薬・種苗代、機械の返済、地代、人件費、借入返済など、一定期間に必要となる資金を整理します。そしてその資金を確保するために必要な数量は、早めに販売したり、価格・入金条件を固めたりする、という考え方です。
これならば、残りについては市況価格を見ながら販売する、一部を保管するなど、別の判断を取ることができます。
持ち越した分は、後の価格を見ながら販売できる余地があります。ただし、倉庫の空き、保管料、温湿度管理、害虫対策、品質低下、資金が米のまま固定される期間も考えなければなりません。
比較する際の目安は、
です。
将来の米価が上がったとしても、その上昇分より持ち越しにかかる費用の方が大きければ、早く売った場合より手取りが減ることもあります。
全量を最も高いところへ売れるのが理想ですが、どこが最高値で買ってくれるかを事前に知ることはできません。
そのため、経営条件によっては全量を一つの販路、一つの販売時期に寄せず、分けておくという方法があります。
例えば、秋から冬に必要な資金分は早めに現金化し、残りはJAの共同販売、民間業者との契約、一部保管などに振り分ける。主力の販売先との関係を維持しながら、少量だけ別の販路を試し、実際の手取りや作業時間と比較するというのも賢い選択です。
販路の分散は、必ず高値で売る=損をしないための方法というよりも、価格変動、販売先の需要減少、契約条件の変更など、一つの出来事で全量が影響を受けることを避けるための経営上の備えと考えましょう。
大切なのは、2026年の米価の乱高下に左右された経験を教訓とすることです。
そのためには、2027年産の作付けを考える前に、2026年産米の販売結果を販路ごとに整理しておきましょう。
2025年産主食用米等の生産量は747万トンとなり、2026年6月末の民間在庫も前年を上回っています。一方で、2026年産米については、一部の早場米産地で前年より低い概算金が報道されています。
だからといって、「2027年は主食用米を減らせばいい」と単純に決められるものでもありません。
まずは品種・販路ごとに、
を整理します。
そのうえで、品種ごとの生産費と販売先を対応させてみます。こうすることで、
といった準備ができます。
次年度以降、主食用米から加工用米、米粉用米、飼料用米などへの転換を選択肢に入れる場合も、主食用米との価格差だけで決めず、地域の需要、契約先、収量、作業体系、支援制度などを含めて比較する必要があります。
「作ってから売り先を探す」のではなく、可能な範囲で作付け前からJA、実需者、民間業者などと必要数量や品質条件を話し合っておけば、市場価格が動いたときにも柔軟に対応しやすくなります。

2026年8月24日時点では、スーパーの米価格は下落基調が続く一方、2025年産米の相対取引価格は6月の下落後、7月には反発しています。2026年産の概算金も地域ごとに出始めていますが、その多くは2025年よりも大幅に安くなっています。
一方、在庫は前年より多く、6月末の作付意向を平均的な単収で計算した場合、2027年6月末の在庫が263万~281万トンとなる見通しも示されています。需給が緩むケースは、経営上のリスクとして考えておく必要があります。
ただし、これからの作柄や品質、需要によって状況は変わります。
「今すぐ全量を売る」「値上がりを期待して全量を残す」という二択ではなく、最終手取り、必要な資金、価格が決まる時期、保管費、販路の分散を確認しながら、2026年産米の販売と2027年の作付けをつなげて考えていきましょう。
参考資料
農林水産省「スーパーでの販売数量・価格の推移(POSデータに基づき作成、全国・週次)」2026年8月21日公表
農林水産省「令和7年産米の相対取引価格・数量について(令和8年7月)」
農林水産省「令和8年6月の米穀流通の動向(集荷、販売、民間在庫)」
農林水産省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針(令和8年7月28日)」
農林水産省「水田における作付意向について(令和8年産第3回中間的取組状況(6月末時点))」
農林水産省「鈴木農林水産大臣記者会見概要」2026年7月24日
農林水産省「米の概算金と追加払いについて」
一方、2025年(令和7年)産米の相対取引価格は、6月に下落したあと7月には反発しました。さらに、2026年産主食用米の作付意向は前年よりわずかに減っているものの、平均的な単収を当てはめた生産量は、国が示す需要見通しを上回る水準です。
消費者から見れば「やっと手が届きやすい価格に下がってくれた」と思うでしょう。安ければ安いほど助かると思うのは、ほとんどの国民の心情です。
しかし農家からすれば、「せっかく資材価格まで含めて賄える価格に上がったのに、また価格が下がるのか……」と落胆しているというのも本音でしょう。
農家としては、「米価が下がる」という一方向の見方だけで売り急ぐのではなく、小売価格、相対取引価格、概算金、在庫、そして自分の地域の販売条件を分けて見る必要があります。
今回の記事では、2026年8月24日時点の市場環境を整理したうえで、2026年産の新米をどう販売すべきか、そしてそれを2027年の経営へどうつなげるかを考えます。
2026年の米市場で起きている3つの変化
2026年の米市場を見る際には、異なる段階の数字を混同しないことが大切です。ここでは「店頭価格」「産地と卸の取引価格」「在庫」の3つに分けて見ていきます。(※2026年8月24日現在の情報をもとに分析)
(1)店頭価格:スーパーの米価格は下落基調
農林水産省が全国約1000店舗のPOSデータを基にまとめた資料によると、2026年8月10~16日の平均販売価格は、税込みで5kg当たり3191円でした。
前週から29円、前年同期から613円下がっています。農林水産省は、平均価格について2026年1月以降は下落基調に転じ、直近では2週ぶりに3200円を下回ったとしています。
内訳を見ると、銘柄米は5kg当たり3211円で前週比44円安、ブレンド米などは3094円で15円高でした。同じ「スーパーの米価格」でも、商品の種類によって動きは異なります。
ただし、店頭価格には精米、袋詰め、輸送、卸・小売段階の費用などが含まれています。スーパーで5kgの商品がいくらで売られているかと、生産者が玄米60kg当たりで受け取る金額は別の指標として見る必要があります。
(2)相対取引価格:6月に下落したが、7月は4%反発
相対取引価格は、JAなどの出荷業者と卸売業者などの間で契約される価格です。農林水産省の統計では、運賃、包装代、消費税を含む1等米の価格を玄米60kg当たりで示しています。
2025年産米の相対取引価格は、2026年6月には全銘柄平均3万1305円まで下落しましたが、7月は3万2486円となり、前月から1181円、4%上昇しました。前年同月の2万6918円と比べると21%高い水準です。
出回りから2026年7月までの年産平均価格も3万5451円で、前年産の同期間を41%上回っています。さらに、7月に価格が公表された59銘柄のうち、25銘柄が前月から上昇し、23銘柄が下落しました。
つまり、「相対取引価格も一貫して下がっている」という状況ではありません。
また、相対取引価格は生産者が受け取る価格そのものではありませんが、無関係でもありません。JAなどの共同販売では、販売の見通しが立った段階で、販売額から経費や概算金などを差し引いて追加払いを行う仕組みがあります。
2026年産米については、一部の早場米産地で前年より低い概算金が示されたとの報道があります。農林水産大臣も、高知、宮崎、鹿児島などの概算金に関する報道を把握しているとしたうえで、概算金はJAなどが販売見込みや需給動向を踏まえて自主的に設定するものと説明しています。
概算金は全国共通の価格ではなく、産地、品種、等級に加え、追加精算や共同計算の方法も異なるため、自分が出荷する地域の条件を確認することが前提になります。
(3)在庫:前年より増え、販売の進みは鈍い
農林水産省の米穀流通調査では、2026年6月末の出荷・販売段階にある民間在庫は194万トンで、前年同月より72万トン増えています。
出荷業者の集荷数量は268万7000トンで前年より25万9000トン多い一方、販売数量は150万トンで、前年より26万5000トン少なくなっています。
在庫が前年より増え、販売が前年より進んでいない状況は、今後の需給を見るうえで無視できない材料です。
なお、ここでいう「194万トン」と、国の需給見通しで使われている「243万トン」は対象範囲が違います。
194万トンは出荷・販売段階の在庫です。一方、国の基本指針で使う2026年6月末民間在庫243万トンには、年間500トン以上を扱う届出事業者の在庫に加え、生産者が保有している在庫の推計値も含まれています。
この2つは単純に比較せず、それぞれ何を数えている数字なのかを確認して読む必要があります。
2027年の需給はどうなる? 国が示す2つの見通し
農林水産省が2026年7月28日に策定した「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」では、2026年7月から2027年6月までの主食用米等の需要量を、693万~711万トン(玄米ベース)と見込んでいます。
一方、2026年産主食用米等の生産量について、基本となる見通しは711万トンです。この場合、2027年6月末の民間在庫は242万~260万トンと見込まれます。
さらに、2026年6月末時点の主食用米の作付意向は136万haでした。前年の136万7000haからは7000ha減っているため、「2026年に作付面積がさらに増えた」わけではありません。
ただし、この136万haに直近5年中3年平均の単収538kg/10aを当てはめると、生産量は732万トン相当になります。
需要見通しの上限711万トンに対して、生産量が732万トンとなれば、その差だけ在庫が積み上がる計算です。このため、2027年に向けて需給が緩む可能性は、販売計画を考えるうえで一つのリスクとして見ておく必要があります。
ただし、これは米価がいくらになるかを予測した数字ではありません。
実際の生産量は天候や作柄、品質などで変わります。需要量も家庭消費、外食、インバウンドなどによって動きます。国の需給見通しにはSBS方式や枠外の民間輸入による輸入米も含まれていません。
また、政府備蓄米の売渡し分に係る買戻しや買入れについても、2026年産米の作柄や今後の需給を見ながら時期と数量を判断するとされています。
そのため、生産者側では一つの価格予想に賭けるよりも、複数のケースを想定しておく方が現実的です。
全国の在庫量だけで、自分の米の販売価格が決まるわけではありません。地域の集荷量、品種別の需要、品質、契約数量なども合わせて見ていきましょう。
2027年を見据えた、2026年産米の売り方
2027年への備えといっても、作付け面積を決めるところから始まるわけではありません。2026年産米を「誰に」「いくらで」「いつ売り」「いつ入金されたか」を整理しておくことが、次年度の販売計画や作付けを考える材料になります。
(1)JA・民間業者・直販を「最終手取り」で比べる
売り先を比較するときは、最初に示された単価だけでなく、経費を差し引いたあとにいくら残るのかを考えます。
JAへ出荷する場合は、概算金だけで判断せず、追加払い、手数料、共同計算、最終精算の時期まで確認します。収穫期の集荷や販売を任せられること自体も、作業負担を考えれば価値の一つです。
民間業者へ販売する場合は、単価だけでなく、運賃や検査費を誰が負担するのか、どの等級でいくらになるのか、いつ入金されるのかまで確認します。価格、数量、品種、等級、引取条件などは、契約書やメールなどで残しておく方が安心です。
直販では販売価格を高く設定できる場合がありますが、精米、袋詰め、発送、注文対応、在庫管理などの費用と作業時間も発生します。売価ではなく、自分の労働時間まで含めて手元にどれだけ残ったかで比較しましょう。
もう一つ分けて考えたいのが、「出荷する時期」「入金される時期」「価格が確定する時期」です。
例えばJAの共同販売では、秋に出荷して概算金を受け取っても、最終的な販売結果や精算額が決まるのは後になる場合があります。資金繰りを考える際には、この3つを同じものとして扱わないことが大切です。
(2)必要資金を基準に「早く売る分」を決める
「今売れば損か、待てば高くなるか」を正確に当てるのは難しいものです。ですが、秋から次の作付けまでに必要となる資金から逆算する方法なら、運頼みではなくある程度正確な予想ができます。
まず、肥料・農薬・種苗代、機械の返済、地代、人件費、借入返済など、一定期間に必要となる資金を整理します。そしてその資金を確保するために必要な数量は、早めに販売したり、価格・入金条件を固めたりする、という考え方です。
これならば、残りについては市況価格を見ながら販売する、一部を保管するなど、別の判断を取ることができます。
持ち越した分は、後の価格を見ながら販売できる余地があります。ただし、倉庫の空き、保管料、温湿度管理、害虫対策、品質低下、資金が米のまま固定される期間も考えなければなりません。
比較する際の目安は、
持ち越し後の想定手取り
= 将来の売価 - 保管費 - 追加の運賃・荷役費 - 資金コスト - 品質低下などによる損失
将来の米価が上がったとしても、その上昇分より持ち越しにかかる費用の方が大きければ、早く売った場合より手取りが減ることもあります。
(3)販売先と販売時期を分けておく
全量を最も高いところへ売れるのが理想ですが、どこが最高値で買ってくれるかを事前に知ることはできません。
そのため、経営条件によっては全量を一つの販路、一つの販売時期に寄せず、分けておくという方法があります。
例えば、秋から冬に必要な資金分は早めに現金化し、残りはJAの共同販売、民間業者との契約、一部保管などに振り分ける。主力の販売先との関係を維持しながら、少量だけ別の販路を試し、実際の手取りや作業時間と比較するというのも賢い選択です。
販路の分散は、必ず高値で売る=損をしないための方法というよりも、価格変動、販売先の需要減少、契約条件の変更など、一つの出来事で全量が影響を受けることを避けるための経営上の備えと考えましょう。
(4)2026年の販売結果を2027年の作付けにつなげる
大切なのは、2026年の米価の乱高下に左右された経験を教訓とすることです。
そのためには、2027年産の作付けを考える前に、2026年産米の販売結果を販路ごとに整理しておきましょう。
2025年産主食用米等の生産量は747万トンとなり、2026年6月末の民間在庫も前年を上回っています。一方で、2026年産米については、一部の早場米産地で前年より低い概算金が報道されています。
だからといって、「2027年は主食用米を減らせばいい」と単純に決められるものでもありません。
まずは品種・販路ごとに、
- 最終的な手取り
- 入金までにかかった期間
- 販売や出荷に必要だった作業時間
- 運賃、保管料、販売手数料
- 品質や等級による価格差
- 翌年も継続して販売できるか
を整理します。
そのうえで、品種ごとの生産費と販売先を対応させてみます。こうすることで、
- 需要が見えている品種は、2027年の契約数量を早めに相談する
- 販売先が決まっていない品種は、面積や販売方法を見直す
といった準備ができます。
次年度以降、主食用米から加工用米、米粉用米、飼料用米などへの転換を選択肢に入れる場合も、主食用米との価格差だけで決めず、地域の需要、契約先、収量、作業体系、支援制度などを含めて比較する必要があります。
「作ってから売り先を探す」のではなく、可能な範囲で作付け前からJA、実需者、民間業者などと必要数量や品質条件を話し合っておけば、市場価格が動いたときにも柔軟に対応しやすくなります。
米価に左右されず「どちらに動いても困りにくい経営」へ
2026年8月24日時点では、スーパーの米価格は下落基調が続く一方、2025年産米の相対取引価格は6月の下落後、7月には反発しています。2026年産の概算金も地域ごとに出始めていますが、その多くは2025年よりも大幅に安くなっています。
一方、在庫は前年より多く、6月末の作付意向を平均的な単収で計算した場合、2027年6月末の在庫が263万~281万トンとなる見通しも示されています。需給が緩むケースは、経営上のリスクとして考えておく必要があります。
ただし、これからの作柄や品質、需要によって状況は変わります。
「今すぐ全量を売る」「値上がりを期待して全量を残す」という二択ではなく、最終手取り、必要な資金、価格が決まる時期、保管費、販路の分散を確認しながら、2026年産米の販売と2027年の作付けをつなげて考えていきましょう。
参考資料
農林水産省「スーパーでの販売数量・価格の推移(POSデータに基づき作成、全国・週次)」2026年8月21日公表
農林水産省「令和7年産米の相対取引価格・数量について(令和8年7月)」
農林水産省「令和8年6月の米穀流通の動向(集荷、販売、民間在庫)」
農林水産省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針(令和8年7月28日)」
農林水産省「水田における作付意向について(令和8年産第3回中間的取組状況(6月末時点))」
農林水産省「鈴木農林水産大臣記者会見概要」2026年7月24日
農林水産省「米の概算金と追加払いについて」
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