「コンバインが入れない」を防ぐ! 8〜10月の水稲収穫期に確認したい7つの準備

水稲のコンバイン収穫作業は、刈る当日の操作だけでは決まりません。落水のタイミングや田面の乾き具合、倒伏の有無、害獣の侵入跡、進入路や籾の排出場所など、収穫前の準備によって作業のしやすさは大きく変わります。

特に水稲の収穫期は、天候や乾燥調製の受け入れ予定、ほかの圃場の作業順とも重なりやすい時期です。予定どおりに刈り取りたい一方で、倒伏やぬかるみ、食害・踏み荒らしといったイレギュラーな変化があると、収穫作業に時間がかかったり、品質低下につながったりすることがあります。

この記事では、水稲収穫を大きなトラブルなく進めるために、収穫前に確認しておきたい圃場準備を、倒伏、水管理、害獣対策、作業動線、当日の最終確認に分けて整理します。



(1)収穫適期を見極める|早刈り・遅刈り、どちらも要注意


大前提ですが、収穫前にまず確認したいのが、刈り取りのタイミングです。

収穫が早すぎると、青米や未熟粒が増える傾向があります。一方で、刈り遅れると、胴割れ米、倒伏、穂発芽などのリスクが高まる場合があります。

収穫適期は、出穂後日数や帯緑色籾歩合を目安に判断することが重要とされていますが、品種や地域、気温、圃場条件によって登熟の進み方は変わります。

また、圃場の端や水口、低い場所など目視できる場所だけで見ると、全体の状態とずれることもあります。平均的な生育をしている株を確認し、圃場全体として収穫に入れる状態かを見ることが大切です。


(2)倒伏を確認する|作業時間と収穫損失のリスクを見ておく


収穫前の圃場で特に注意したいのが、風や雨などで稲が倒れたままの状態、倒伏(とうふく)です。

倒伏があると、コンバインでの刈り取り方向の調整が必要になったり、刈取部や脱穀部に稲が詰まったり、作業速度を落とさざるを得なかったりします。倒れている範囲が広いほど、収穫作業全体の段取りにも影響します。

北海道農産協会の資料では、倒伏した稲はわらが弱く切れやすいため、扱ぎ室でわら屑が発生し、脱穀部が詰まりやすいとされています。また、引き起こし装置にかかる負荷が増え、搬送部で稲が乱れることで、穀粒損失が増えることも示されています。

自脱コンバインの場合、倒伏角が60度以内で、作業速度が0.5〜0.8m/sであれば、どの方向からでも刈り取りが可能とされています。一方で、倒伏角がさらに大きくなると収穫損失が増えるため、作業速度も遅くする必要があります。

倒伏状態でも収穫しなければならない場合は、倒れた向き、範囲、濡れ具合を確認します。倒伏の向きによっては、刈り取り方向を調整した方がよい場合もありますが、対応はコンバインの種類や仕様、オペレーターの経験によって変わります。無理な進入や急な旋回は避け、必要に応じて作業者や委託先と相談しましょう。

また、圃場内で倒伏している箇所や登熟が遅れている箇所の稲は、ほかの稲と一緒にすると品質低下を招くおそれがあるため、分けて刈り取ることも示されています。一手間かかりますが、倒伏が一部に限られる場合は、別刈りや収穫順の変更も含めて検討しましょう。



(3)落水と田面の乾きをチェックする|「乾かせばよい」だけではない


収穫前の水管理は、米の仕上がりと、収穫作業のしやすさを両立させるための調整です。

田面があまりにぬかるんでいると、コンバインが沈み込むおそれがあり、旋回しにくかったり、作業速度を上げられなかったりします。場合によっては、機械を抜け出させるために余計な時間がかかることもあります。

一方で、あまり早く落水しすぎると今度は登熟や品質に影響する可能性があるため、適期を見極めることが大切です。

千葉県が発表した資料では、早期の落水で圃場が乾燥状態になると、不完全米、くず米、胴割れ米などが増加する場合があり、落水が遅れると倒伏や青米の増加、収穫作業の困難につながるとされています。

そのため、収穫前には、水口、排水口、低い場所、毎年ぬかるみやすい区画を重点的に確認しておきましょう。例えば、排水路に草や泥が詰まっていないか、畦畔際に水が残っていないか、進入路付近だけ極端に軟らかくなっていないかといったところに少し気を配るだけでも、収穫予定日のトラブルを未然に防げます。

乾田、湿田、粘土質の圃場、排水のよい圃場では、同じ落水時期でも乾き方が異なります。複数の圃場を持っている場合は、乾きやすい圃場から収穫に入る、ぬかるみやすい圃場は天候を見て順番を後ろに回すなど、作業順も合わせて考えておくとよいでしょう。


(4)害獣の侵入跡を確認する|収穫直前の食害・踏み荒らしを防ぐ


収穫直前の実りの多い圃場は、イノシシやシカといった動物たちの食料が豊富な時期とも言えます。そのため、害獣による食害、踏み荒らしにも注意が必要です。

これらの被害は圃場全体に一気に出る場合もあれば、山際や林縁、畦畔沿いなど、侵入しやすい場所から広がる場合もあります。

水稲のイノシシ被害について、農研機構によると、電気柵を正しく設置し、水田周囲の草刈りなどを行っている水田では被害が少ないとされています。

収穫前には、電気柵等の設置や草刈りに加えて、草が電線に触れていないか、支柱が傾いていないか、地面とのすき間が大きくなっていないか、畦畔沿いに獣道や足跡がないかといった部分も見ておきます。

害獣対策は、収穫直前に対応することが難しい作業です。被害が出やすい圃場がわかっていれば、必要に応じて収穫順を早める、草刈りや柵の点検を優先する、地域の鳥獣被害対策担当や自治体の情報を確認する、といった対応も現実的です。


(5)雑草・畦畔・進入路を確認する|当日の詰まりや手戻りを減らす


雑草や畦畔、進入路の状態も確認しておきたいポイントです。

畦畔際や水口まわり、圃場のすみで雑草が繁茂していると、刈取部や脱穀部にも負荷がかかります。収穫前にすべてをきれいにするのは難しくても、コンバインの進入路や旋回場所、排出場所の周辺だけでも整えておくと、当日の詰まりや手戻りを減らせます。

畦畔や出入口の状態も見落とせません。段差が大きい場所や水路に近い場所、石や資材が置かれている場所は、作業当日に危険箇所となる可能性があります。特に収穫作業を任せている農家やオペレーターは、圃場の細かい癖まで把握していないこともあるため、事前にしっかり確認の上、危険箇所を共有しておきましょう。


(6)作業動線を決める|運搬・乾燥調製とつなげて考える


収穫作業は、コンバインで刈って終わり、とはいきません。乾燥調製へどうつなげるかまで含めて、当日の流れが決まります。

そのため、作業前にどこから刈り始めるか、どこで籾を排出するか、運搬車をどこに停めるか、旋回場所をどこに確保するかといった流れも考えておく必要があります。圃場内でコンバインが止まる時間が長くなれば、全体の作業効率にも影響してしまいます。

特に大区画の圃場では、排出場所までの距離が長くなりがちです。逆に、小区画や変形田では、旋回や進入のしやすさが課題になりがちです。

自分で刈る場合も、委託する場合も、「どの圃場を、どの順番で、どの状態なら入るか」を事前にシミュレーションすることが大切です。委託する場合は、圃場ごとの特徴を簡単なメモや地図で渡しておくと、作業者が判断しやすくなります。

共有しておきたいのは、進入路、排出場所、ぬかるみやすい場所、倒伏箇所、排水路、障害物、害獣の侵入跡の有無です。初めて作業を依頼する圃場では、現地で一緒に確認しておくと、当日の認識違いを減らせます。



(7)収穫当日の最終チェック|無理に入らない判断も


収穫当日は、朝露、前日の雨、田面の乾き、倒伏稲の濡れ具合、害獣による新たな踏み荒らしがないかを確認しましょう。

収穫期は、乾燥調製の段取りや天気予報を見ながら動くことになるため、どうしても「今日刈ってしまいたい」という気持ちが強くなります。しかし無理に入ることで、結果的にほかの圃場の予定にも影響したり、コンバインに不具合が起きないとも限りません。

当日は、作業開始時刻を少し遅らせる、乾きやすい圃場から入る、倒伏やぬかるみが大きい場所は後回しにするなど、その日の状態に合わせて最終調整をすることも準備のひとつです。

安全面の確認も欠かせません。農研機構の農作業安全情報センターでは、収穫期に農業機械を安全に使うためのポイントとして、急ぎたくなる場面ほど、エンジン停止、周囲確認、無理な旋回を避けるといった基本を確認することを推奨しています。

これらの作業は、どれもコンバインを使う方なら当たり前のことばかりですが、当日の状況よりも気持ちの方が焦ってしまいがちです。だからこそ、事前にこうしたチェックをしておくことで、収穫作業をスムーズに行えるように最善の準備をしていきましょう。


「米の状態」と「コンバインが入れる条件」を見極める


水稲収穫をスムーズに進めるには、収穫適期だけでなく、倒伏、水管理、害獣対策、雑草、進入路、排出場所などを合わせて確認することが大切です。

すべての圃場を同じ基準で判断するのではなく、乾きやすさや倒伏の有無、害獣被害の出やすさ、天気予報、乾燥調製の受け入れ予定を見ながら、作業順を組み立てていきます。

とはいえ、収穫期は人手も時間も限られます。すべて対応しきれない場合は、どの作業を自分たちで行い、どこを外部に相談するかを分けて考えることも、収穫期の手戻りを減らす判断材料になります。

自分で刈る場合も、作業委託する場合も、収穫前に圃場の状態を整理しておくことが大切です。

準備に手が回らない……収穫作業の外部委託も選択肢に
「準備した方がよいのはわかっているが、収穫作業まで手が回らない」
「刈り遅れや人手不足が心配」
という場合は、外部に委託する方法もあります
スポットでの依頼や、コンバイン故障時の対応なども含め、
自分の圃場条件や作業時期に合わせて確認してみてはいかがでしょうか
▶「アグリポン」水稲の収穫作業委託について相談する 相談・問い合わせ(フォーム)

参考資料
農林水産省「農作業安全の啓発資料」
千葉県「落水のタイミングと収穫のタイミング」

北海道農産協会「良質・良食味米安定生産・出荷のための栽培技術」
京都府農林水産技術センター「大雨による浸水・冠水後の技術対策」
農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和6年度)」
農研機構「イノシシ水稲被害発生の度合いには、林縁からの距離や電気柵の正しい設置、草刈り状況などが影響する」


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。