8月の水稲防除はいつが正解? 穂いもち・カメムシ対策とドローン散布・委託のポイント

8月の水田では、穂肥後の管理や水管理、畦畔の草刈り、収穫準備など、複数の作業が重なります。その中で防除をいつ実施するかは、玄米の品質を守るうえで重要な判断の一つです。

特に注意したいのが、穂いもちと斑点米カメムシ類。ただし、一等米になるかどうかは、防除だけで決まるものではありません。高温登熟や水管理、品種、刈り取り時期なども品質に影響します。

また、限られた防除適期に作業を行うには、従来の散布方法に加えて、ドローン散布や作業委託を組み合わせることも選択肢になります。

この記事では、病害虫による品質低下のリスクを抑えるという視点から、8月防除の考え方と、ドローン散布の効果やタイミングを考えていきます。



穂いもち・カメムシ類が玄米の品質に与える影響


穂いもちは、いもち病菌が穂首や枝梗、もみに感染して発生する稲の病気のひとつです。発生程度によっては、登熟不良や収量低下につながるため、葉いもちの発生履歴や品種の抵抗性、出穂前後の天候を確認することが大切です。

いもち病は、降雨や結露によって葉が長時間濡れるなど、感染に適した条件が続くと広がる場合があります。葉いもちが確認された圃場では、都道府県の発生予察情報や地域の防除指針を確認し、穂への感染リスクを見ながら対応します。

斑点米カメムシ類は、出穂後の水田へ侵入して穂を吸汁し、玄米に黒色や褐色の斑点を生じさせます。農産物検査における水稲うるち玄米1等の着色粒の最高限度は0.1%であるため、発生量によっては等級に影響する可能性があります。

斑点米カメムシ類には複数の種類があり、侵入時期や加害の仕方は同じではありません。近年発生地域が広がっているイネカメムシは、斑点米に加えて不稔を引き起こすことがあり、出穂期の防除が重要とされています。地域で確認されている種類を把握したうえで、防除時期を判断する必要があります。


8月防除のタイミングは出穂期がポイント


「8月上旬に散布する」「お盆前に終わらせる」と決めていても、実際の防除適期と合うとは限りません。

同じ地域でも、品種、移植日、直播か移植か、圃場の水温や生育状況によって出穂日は異なります。まずは圃場ごとの出穂予測を確認し、対象となる病害虫と薬剤の使用時期を照らし合わせます。

穂いもちについては、葉いもちの有無や気象条件、地域で示される感染好適条件などが判断材料になります。斑点米カメムシ類については、畦畔や休耕田の雑草、周辺圃場との出穂時期の差、すくい取り調査や発生予察情報を確認します。

農林水産省は、斑点米カメムシ類の水田への侵入を抑えるため、出穂10日前までに畦畔や休耕田の雑草管理を行うよう案内しています。一方、出穂直前や出穂後の草刈りは、雑草にいたカメムシ類を水田へ移動させる可能性もあるため、地域の指導内容に沿って時期を決めることが重要です。

なお、2026年7月8日に公表された「病害虫発生予報第4号」では、斑点米カメムシ類の発生が東北、南関東、北陸、四国、九州の一部で「多い」、北海道、東海、近畿の一部で「やや多い」と予想されています。葉いもちについても、東海、四国、北九州の一部で「やや多い」とされました。

実際の発生状況は、都道府県の発生予察情報や、JA、普及指導センターからの最新情報を確認しましょう。



ドローン散布のメリットは適期作業のしやすさ


ドローンを使ったからといって、農薬そのものの効果が高くなるわけではありません。期待できるのは、限られた防除適期に作業を組み込みやすくなることです。

8月は高温下での作業が続き、水管理や草刈り、収穫機械の準備なども重なります。ドローン散布では、作業者が水田内へ立ち入らずに散布できるため、ぬかるみが残る圃場や、株を踏み倒したくない時期にも作業できるようになります。

圃場が比較的まとまっている、複数の水田で出穂期がそろっている、散布対象と薬剤が事前に決まっているといった状況であれば、作業計画を立てやすいでしょう。

一方、小区画の水田が分散している地域や、住宅、道路、電線、樹木、隣接作物が多い圃場では、移動時間や安全確認、飛散防止への対応が必要です。ドローンが向くかどうかは、面積だけでなく、周辺環境を含めて判断する必要があります。


委託する場合は出穂予測を早めに共有


ドローンを所有していなくても、散布だけを委託することはできます。しかしこの場合、防除適期が来てから依頼しても、希望日に作業できるとは限りません。複数の圃場から依頼が集中したり、風や雨によって日程変更が必要になったりするためです。

出穂期の見込みが立った段階で、圃場の場所、面積、品種、対象病害虫、使用を検討している薬剤を委託先へ共有しておくと、散布計画を調整しやすくなります。

ただし、防除が必要かどうかの判断まで、すべて委託先任せにできるわけではありません。地域の発生予察情報、JAや普及指導センターからの情報、実際の圃場観察をもとに、防除の要否を確認しましょう。

農研機構では、水田一筆ごとの生育予測や気象データを利用し、斑点米カメムシ類といもち病の薬剤散布適期を通知するシステムも開発されています。今後は、こうした予測情報と散布サービスを組み合わせることも、適期を逃さないための方法です。

<ドローン散布前に確認したいポイント>

  • 農薬の登録内容
農林水産省の「農薬登録情報提供システム」で、作物名や対象病害虫、使用時期、使用量、希釈倍数、使用回数、収穫前日数、使用方法を確認します。

  • 散布条件
風が強い日や、散布直後に降雨が予想される日は、作業日の変更も検討します。住宅や水路、道路、周辺の作物などへの飛散にも注意が必要です。

  • 周辺への連絡と立入管理
圃場周辺の状況によっては、近隣住民や隣接圃場の管理者への事前連絡、作業中の立入管理が必要になります。
委託する場合は、どこまでを委託先が行い、どこからを生産者側が担当するのか確認しておきます。

  • 散布記録
散布日、圃場、薬剤名、使用量、対象病害虫、作業者、天候などを記録します。
作業委託の場合も、散布内容を確認できる形で残しておくと、その後の防除判断や栽培履歴の整理に役立ちます。

  • 飛行ルール
屋外で使用する100g以上の無人航空機には機体登録が必要です。また、飛行場所や飛行方法によっては、飛行許可・承認や飛行計画の通報なども必要になります。

委託時には、必要な手続きや安全管理を誰が担当するのかも確認しましょう。



一等米に向けた防除後の管理


8月の防除は、玄米品質を守るための重要な作業です。ただし、防除を終えれば収穫まで安心というわけではありません。

登熟期の高温による白未熟粒、急な落水や水不足、刈り遅れによる胴割れなど、品質に影響する要因はほかにもあります。防除後も、圃場ごとの登熟状況や気象情報を確認しながら、水管理と収穫時期までの確認作業は続きます。

ドローン散布は、従来の動力噴霧機や無人ヘリに代わる唯一の方法ではありません。圃場条件や作業体制に合わせて既存の方法と使い分けながら、適期防除を実行するための選択肢として検討することが大切です。


8月の防除を計画的に進めるために
忙しい時期には作業委託も選択肢の一つです。
農作業代行サービス「アグリポン」では、
ドローン散布や水稲栽培に関する相談を受け付けています。
対応できる作業や地域、時期は圃場条件によって異なるため、
早めに相談しておくと、作業計画を検討しやすくなります。
▶アグリポンでドローン作業・水稲作業について相談する相談・問い合わせ(フォーム)


参考資料
農林水産省「病害虫発生予察情報」
農林水産省「令和8年度病害虫発生予報第4号」
農林水産省「玄米の検査規格」
農林水産省「ドローンで使用可能な農薬」
農林水産省「無人航空機による農薬等の空中散布に関する情報」
農研機構「斑点米カメムシ類とイネいもち病の薬剤散布適期連絡システムの開発」
国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。